おはようございます。栗毛馬です。
6月30日といえば夏越しの大祓、そして水無月です。
今年は巌邑堂のと決めていました。
6月末限定販売の和菓子店が多いようですが、巌邑堂は初旬から店頭に並べてくださる。買いやすくて、ありがたい…!
ご覧ください、この美しさ。
なんでしょうね、この浮遊感は。
素朴で、和菓子にしてはやや武骨な見た目なのに、得も言われぬ気品があります。
光を取り込み、留めて、密やかに息づいているかのよう。
つややかな明るいあずきと、半透明のういろう。梅雨の中休み、曇り空を背負って咲く、赤い紫陽花みたい。
かなり柔らかめのういろうは、もちっとしていい感じの粘りがあります。
お米の味はしますが、えぐさや苦み、粉っぽさ、もち米特有のむおっとした匂いもなくとても食べやすい。
粘りながらも、とろけるよう。
そして、この小豆!
大納言でしょうか、大ぶりの小豆はふっくらとしていながらしっかりと豆の形を保ち、崩れず濁らず、美しい。
皮が薄くて柔らかく、口に残らない。
「わたくし、小豆ですよ…」
ごく控えめに主張をして、ういろうと混然一体となり、
ふっ…
と、喉の奥に消えていく。
ひとつぶひとつぶが粒選りの小豆に違いない…!
巌邑堂さんにしてはやや甘めだと感じましたが、それはもしかしたらほぼ常温で食べたからかもしれません。
3時間ほど持ち歩き、冷蔵庫で10分ほど冷やしてからいただきましたが、もしかしたら30分ほど冷やしてもおいしいかもしれないな、と思いました。
ちなみに、うちの老婦人こと母は、
「これくらい甘い方がおいしいわ!『食べた』って気がして」
と、喜んでおりました。
もちろん、甘いといっても甘すぎるわけでは決してなく、また、とても上品で後口のいい甘さです。
べたっとせず、すっと引いていく。
水無月は、シンプルなだけに素材の良しあしと職人さんの技が出るお菓子だと思います。
巌邑堂の水無月は、素晴らしい。
「もういっこ食べたいわ」
早々に自分の分を食べ終えてしまった老婦人が、空っぽのお皿を見ながらつぶやきました。
大ぶりでボリュームがあるように見えますが、もたれず軽やか。極上の水無月。
今年はもったいぶって月末まで我慢したけれど、来年は月初にひとつ、月末にひとついただこう、と決意しました。
今日もよい一日を。