ごきげんよう。栗毛馬です。
先日、嚴邑堂の栗蒸し羊かんを、買いました!
これは少し前、『マツコの知らない世界』にて紹介されたお品です。
嚴邑堂は日本橋高島屋の地下にある、浜松の和菓子屋さん。
薄紫と白のしつらえがモダンで高貴で美しく、整然と並ぶ上生菓子の繊細さは、ため息が出るほど。
清く、美しく、みやびやか…。
高島屋に行くと、ついふらふらと近寄ってしまいます(高いから見るだけ。ごめんなさい)。
嚴邑堂を知ったのは昨年6月。
ふと買ってみた『水無月』が素晴らしくおいしかった(『水無月』は手が届く価格だったのです)。
そして、もっと知りたいとホームページを訪れたら、志の高さにすっかり参ってしまったというわけです。
知る人ぞ知る…だと(私が勝手に)思っていた嚴邑堂さんが、なんとマツコの知らない世界に登場!
驚きましたが、マツコさんも興味津津の『栗蒸し羊かん』、これを食べずにいられようか。
売り切れを心配し早めに訪れたところ、土曜日でしたが、列もなくスムーズに購入できました。
いちばん外側の包装は、無地の白。
箱に印刷されている文字がうっすらと透けて見えるのが、なんとも素敵。
長谷川等伯の『松林図屏風』を思い出して、あれが『栗林図屏風』だったら…なんてつまんないことを考えながら開封。
わ、大きな栗がたくさん!なんておいしそうな…。
期待がさらに高まります。
親切にプラスチックのナイフが添付されていますが、切りにくかったのでナイフで切り分けました。
口に運ぶと…。
まず来たのは、栗の味。栗の香り。
わあっ、栗だ!栗そのものだ!
なんておいしい栗だろう。
栗自体の味が濃くて素晴らしい。
煮方も最高。ほっくり、しっとり。口の中でほどけて、ふわぁっと栗の味が広がる。
しっかり煮てあるのに、栗の味は飛んでいない。
これはまるで、あれだ。家で作る栗ご飯の中に入っている栗(塩と昆布だけで炊いた、シンプルな味付けのやつ)。
甘露煮なのに、こんなにも素材の味が残っているのは、いったいどうして?
市販の甘露煮や栗菓子に多いガリガリ感は皆無。
これほど柔らかな甘露煮を、形を崩さずに生地に混ぜ込むのはどれほど難しいことだろう…!
『マツコの知らない世界』では、『機械ではなく手で練り上げます』と紹介されていたと記憶していますが、まさにこれは熟練の職人のなせる業。
すごいものだ…!
手練りの生地はもっちりとして柔らかく、程よく弾力があり、味わい深い。
粉っぽさやもさもさしたところがなく、知らぬ間に口の中で溶けて、なくなる…。
甘すぎず強すぎず、栗の存在感に負けず。絶妙のバランスです。
後口はすっきり。
栗蒸し羊かんというと、笹の葉に包まれたものもあり、それはそれでもちろん素敵においしいのだけど、ときに強すぎて本体の味や香りに影響することがあります。
嚴邑堂のパッケージは笹でも木でもなく、一見そっけないけれど、それは栗蒸し羊かんを最大限に際立たせるためなのかもしれないと思いました。
これまで食べたどの栗蒸し羊かんよりおいしいかもしれません。
当ブログに度々登場する『うちの老婦人』こと母は、栗が大好き。栗ならほぼ何でも好きだけど、栗を使った和菓子の中では、栗蒸し羊かんを特に愛しています。
ただ、この老婦人、栗蒸し羊かんが好きだけど、栗よりもあのもっちりとした独特の生地の方が好き、という変わり者。
「嚴邑堂の栗蒸し羊かんだと、栗と生地のどっちが好き?」
試しに聞いてみたら、
「うーん…」
難しい顔をしてしばし考え、
「両方!おいしすぎて、選べない」
とのことでした。
開封した栗蒸し羊かんは、私は冷蔵庫で保存しました。
固くなってしまうので、食べるときは常温に戻した方がおいしいです。
早く食べたくて、ものは試し…、と、軽くチンしてみたら、柔らかくなっておいしかったです。
やりすぎると台無しになり危険ですので積極的におすすめはしませんが、ほのかにあたたかい栗蒸し羊かんも乙なものです。