ごきげんよう、栗毛馬です。
エルメス某店にカシミアシルクのストールを見に行きましたが、希望の品は置いていませんでした。
仕方なく、第二希望の柄の、しかも色違いを試着させていただくことにした話の続きです。
せっかく来たのだから、カシシルというものを体験してみたい。
希望のデザインでなくても、です。
それに、まとった姿から希望の色に脳内変換すれば、イメージだけでもつかめるかも…という下心もありました(無理でした)。
店員さんが壁からカシミアシルクを外し、三角に折って、背中から掛けてくださいます。
おお。なるほど。こういう感じか。
でも、こういう使い方は、多分しない…。
普段自分で巻くであろうやり方で見せていただかないと、判断ができません。
なけなしの勇気を出して、カウボーイ巻きに変えていただきました。
おお…っ!
燃え上がるような色でしたが、巻いていただくと、あら不思議。
意外と似合う!
こんな派手な色が似合っちゃって、なんだか嬉しい気もします。
巻くと、色の強い部分がうまい具合に隠れて、だいぶ穏便になるような気がしました。これなら、派手派手しくはならないのではないかしらん。
あら…
第二希望のデザインだけど。
全く想定していなかった色合いだけど。
意外といいんじゃない?こういうのも…。
そして、初めて触れるエルメスのカシミアシルクの素材感は、想像すらしていなかったものでした。
これだけの大きさなのに、軽い。あたたかい。
広々と大きい翼にくるまれるって、きっとこんな感じ。この包容力ったら!
「触ってみてもいいですか?」
店員さんに許可を得て、表面を傷つけないよう注意しながら、指先でそっと触れてみました。
おお…。しっとりではなく、さらさら。
ふわふわではなく、硬さを感じます。
薄いけれど、しっかりと密に織られています。
頑丈そうにも思われます。
この素材感は、人生で初めて。
意外と硬め、と言ってもゴワゴワとかチクチクするわけでは決してないです。
存在感のある、気持ちのいい硬さです。
いや、「硬い」だと語弊がありますね。
「張りがある」、だ。この表現がぴったり。
手の甲を滑らせると、さらりとすべらかで気持ちいい。
それにしても、軽い。あれほどの大きさなのに。
これが、エルメスのカシミアシルク…!
体験だけだったはずの気持ちが、揺らぎ始めました。
希望のとは全然違うけど。
たまにはこんなのもいいんじゃないかしら。
試着だけして買わずに帰るのもナンだし…。
「こちらは、まだ在庫がありますか?」と聞くと、現品のみで、最後の一枚とのこと。
現品かあ…。正直やだな…(わがまま)。
ババンと張られてた展示品よ?過剰に引っ張られたり、擦れたりライトを浴びまくったりもしてるだろうから、現品割引で5%くらい引いてくれないかしら…(言えるわけないし、言ったとしてもしてくれるわけがない)。
でも、見送ったら最後、また相見えるかどうかはわからない。
前の前のシーズンの商品だそうだし、ここは田舎だから残っていたのではないかしらん。
どうしよう。
鏡の自分と相談です。
派手じゃない?
悪目立ちしない?
気おくれしない?
使いこなせる?
今は目新しくて新鮮でよく見えるだけで、使いにくい色だよっ。
こういう色は、何枚も持っている人が買うものだよ。初心者が初めて買う色じゃないよっ。
ここはこらえて、落ち着いて考え直したほうがいいよっ。
派手すぎるよッ。
きれいな色で素晴らしい発色なのか。
派手なのか。
もう、自分ではわからなくなってしまいました。
で、迷っているうちにも時間は刻一刻と過ぎて行き、その間ずっと店員さんを拘束しているわけで…。
あわわ、申し訳ない。
ええい、もう、いいや。
「こちら、いただきます」
買うことにしたのでした。
包装と会計を待っている間、どっと疲れて、半ば虚脱。
「これでよかったんだろうか」
「そもそも、自分なんぞが16万3000円もするストールなんぞを買ってよかったのだろうか。身分不相応もいいところだ」
頭の中を去来するのは、こんなことどもばかり。
この、高揚感のなさはどうだ。
大変な高額を支払ったのだもの(カードだから未払いだけど)。
もっとうきうきしてもいいはずよね?浮き浮きすべきよね?
これじゃ憂し憂しだよ。
どこで間違えたのだろう?
商品自体が気に入ったのと、見栄と、勢いと。
購入理由としては、どれが一番大きかったのでしょう?
次に続きます。