「日本人の”肝臓がん”の原因は半数がコレ!」…健診で「HCV陽性」と言われたら必ずやるべき「たった一つのコト」

永田 宏(長浜バイオ大学バイオデータサイエンス学科教授) によるストーリー

 • 9 時間

 

 

 

毎年1回は受けることが義務付けられている職場健診。健診結果の異常を示す「*」がついた数値には、実は気にしなくて良いものもあれば、今すぐに再検査を受けなければならないものもある。果たしてあなたは診断結果の本当の意味を理解しているだろうか。

BMI・血圧・尿糖・眼底など項目別にその検査結果の正しい見方を解説した『健診結果の読み方』(永田宏著)より一部抜粋してお届けする。

『健診結果の読み方』連載第28回

『「1988年以前に集団予防接種」を受けた人は要注意!...職場健診に追加すべき検査項目』より続く

HCV抗体検査

C型肝炎ウイルス(HCV)感染のスクリーニング検査です。B型肝炎ウイルスと同様、普通の職場健診には入っていないはずですが、希望すれば追加できます。

C型肝炎は抗体検査となります。もちろん抗原検査も可能ですが、感染者の5パーセントが偽陰性(本当は感染しているのに陰性と判定されること)になってしまうため、スクリーニングには適していないのです。またHCVにはワクチンがないため、抗体陽性者は全員、感染経験者ということになります。

 

 

C型肝炎の主な感染経路は輸血でした。しかし1989年から、すべての輸血用血液に対して抗体検査が行われるようになり、1992年からはより精度の高い抗体検査に切り替わったため、輸血が原因で感染するリスクはほとんどなくなりました。

肝臓がんの半数はC型肝炎が原因

ただ母子感染はあります。子供が産道を通過する際に、母親の出血を介してうつることがあるのです。その可能性は5パーセント程度とされています。

コロナ以前は海外に行って、ウイルスをもらってくるひとが増えていました。消毒が不十分な器具で、入れ墨やボディーピアスを入れると、感染することがあるのです。コロナ禍が明けて海外旅行が復活したため、これからまた、C型肝炎患者も増えてくるかもしれません。

 

 

 

潜伏期間は2週間から半年で、約2割に風邪に似た症状が出ますが、残りの8割は無症状と言われています。その後、症状は治まり、感染者の3割は、自身の免疫の力でHCVを完全に排除することができます。

しかし残りの7割のひとでは、ウイルスが体内に棲みつき、そのまま軽い慢性肝炎に移行して、最終的に肝硬変や肝臓がんになっていきます。日本の肝臓がん患者の約半数は、C型肝炎が原因と言われています。

かつては治療にインターフェロンという薬が使われていました。しかしウイルスを排除する力が弱く、しかも副作用が強いため、ほとんど使われなくなっています。いまはより効果が高く、副作用の少ない薬が続々と開発されており、ウイルスの完全排除が可能になりつつあります。

健診でHCV陽性と言われたら、迷わず肝臓の専門医を受診するべきです。肝炎の段階なら、ウイルスを退治しさえすれば回復可能ですが、肝硬変や肝臓がんに進んでしまうと、たとえウイルスを駆除しても、元には戻りません。

『最新研究で判明!「お酒を飲まなくても肝臓がんになる」…30歳以上の世代に忍び寄る”新たな肝臓病”の存在』へ続く