牧ひかる(17)
私の母は少し変わり者だったらしい。彼女は恋だの愛だのにはあまり興味がない人間で天気の研究に明け暮れていた。私が歩き始めた頃には母は研究の為に父とは離婚しており、私は45歳になってやっと係長になった父親と2人で過ごしてきた。私が15になる誕生日の2日前、母親が家にきた。父親は緊張しているのか、母親に敬語でどうぞどうぞと中へ案内していた。父親は顔に出さない様に懸命に抑えていたが、まだ母親を愛しているのが直ぐにわかった。天気の研究?ごときで家族を捨てた、女に惚れている父親が情けなく思った。母親は自己紹介?自慢話をするなり、学校は楽しい?恋はしてる?と聞いてきた。別にと答えたら、私みたいになったら駄目よ、と言った。愛される人より愛する人になりなさい、と言って母親は出て行った。
牧太郎 (45)
ひかるの父親。おおらかで怒ったことは一度もない。怒れる程拘りがあるものがそもそも持ち合わせていない。千尋が観測している、天気予報を離婚した今も毎日観ている。たまに外れると悔しそうにしている。太郎は人に頼まれると断れない性格で、洋服屋に行くと必ず両手一杯に買わされてしまう。生命保険を毎月10万円契約しており、食事代が無くなり水のみで2日間生活した事もある。断れないのはこだわりが無いから、大学で何となく受講した空に関する講義で何度も教授に質問する千尋。周りの学生から冷ややかな目で見られても、見向きもしない千尋がカッコよく受講が終わると声を掛けた。声を掛けた自分に驚いたが、既に気持ちは止まらなくなっていた。千尋と結婚しても千尋は研究に没頭しており、子育ては全て太郎がしていたが不満は無かった。そんな千尋を好きになったから。
牧千尋(43)
几帳面でなんでもノートに纏めるのが好きだった。読書感想文は夏休みの宿題で出される前からとっくに始めていた千尋の趣味だった。勝負の日はいつも雨で中学時代に入っていた陸上部の大会は豪雨で延期の延期で中止になり引退した。好きだったバンドの野外ライブの日も雨で音響が故障し15分で中止になった。あまりにも雨女だった為、天気に呪われた女と呼ばれていた。高校生になり、天気に合わせて行動するようになった。天気予報だけではなく、雲の動き、空の匂いて天気を予想するようになった。予想通りに天気が動くと嬉しくて、晴天の日に傘を持っていき。帰りに雨が降ると周りが雨宿りしているところを悠々と帰るのが楽しみだった。