尿沈渣とは

  • 尿を遠心分離器にかけたときに沈殿してくる赤血 球や白血球、結晶成分などの固形成分のこと 
  • これらを顕微鏡で観察し、尿沈渣の数や種類を観察する
  •  腎臓から尿道のどこかに病変があると、いろいろな成分が尿中 に混入します。
 

  尿沈渣検査の項目


・赤血球数(μl)  基準値:27.7μl以下 

・赤血球数(HPF) 基準値:4HPF以下 

・白血球数(μl)  基準値:27.7μl以下

・白血球数(HPF) 基準値:4HPF以下

・細菌        基準値:陰性

 

上皮細胞 正常値:1個未満/HPF

・扁平上皮細胞 

・尿路移行上皮細胞

・尿細管上皮

・卵円形脂肪体   

・細胞内封入体

 

円柱 基準値:硝子円柱以外は(−)。

・硝子円柱 

上皮円柱 

・赤血球円柱

・白血球円柱

・脂肪円柱

顆粒円柱  

・ろう様円柱

 

  尿沈渣検査 項目の説明

 

右矢印赤血球数(μl)、赤血球数(HPF) :IgA腎症、膜性増殖性腎炎、急性糸球体腎炎、ループス腎炎、間質性腎炎、急速進行性腎炎、嚢 

 胞腎、腎梗塞、遊走腎、特発性腎出血などにて上昇

 
右矢印白血球数(μl)、白血球数(HPF):急性間質性腎炎、腎盂腎炎、糸球体腎炎など尿路系感染症にて上昇

 

右矢印細菌:尿中に細菌がみられ、尿路感染症が疑われる。同時に白血球増加がなければ問題はありません。
右矢印真菌:治療を行わなくても自然消失するが、糖尿病など免疫機能低下があるときは注意。
右矢印原虫:トリコモナスなどの原虫が存在している状態。原虫の駆除治療が必要。

 

 

 

上皮細胞郡

右矢印扁平上皮細胞:膣トリコモナスや細菌感染による尿道炎や尿道結石症、カテーテル挿入時の尿道の機械的損傷および前立腺癌のエ  ストロゲン療法時などに多数出現。女性の場合は解剖学的見地から、尿路系に異常がなくても認められることがある。男性で扁平   

 上皮細胞 を多数認めた場合は、トリコモナスやクラミジアによる尿道炎も考慮する必要があります。

 
右矢印尿路移行上皮細胞:腎杯・腎盂 から内尿道口までの炎症性疾患、結石症、カテーテル挿入における 機械的損傷、悪性腫瘍等など
 
右矢印尿細管上皮:尿沈渣中に尿細管上皮細胞が多数出現する場合には、急性尿細管壊死や慢性経過を示 す腎実質由来の疾患など

 

右矢印卵円形脂肪体:ネフローゼ症候群に高率に認められる。

 

右矢印細胞内封入体:麻疹ウイルス、風疹ウイルス、インフル エンザウイルス等によるウイルス感染症患者の尿中に認められるこ とが多い。ウイルス感染症以外でも、膀胱炎、腎盂腎 炎、回腸導管術後、腫瘍性疾患などの非ウイルス性疾患患者の尿中 にも認められる。

 

 

円柱郡

円柱の出現は、尿細管腔が一時的に閉塞され、その後に尿の再流があったことを意味する。 円柱の種類によって、腎・尿細管の病態や障害の程度を把握することも可能

 

右矢印硝子円柱:健常人でも激しい運動などで認める。

 

右矢印上皮円柱:尿細管円柱が剥がれ落ちた円柱。急性尿細管壊死(ATN)や糸球体腎炎を示唆する

 

右矢印赤血球円柱:ネフロンでの出血を示す。急性糸球体腎炎、膜性増殖性腎炎、IgA 腎症などの腎性出血を伴う尿に認められる

 

右矢印白血球円柱:ネフロンでの感染を示す。出現意義としては、腎盂腎炎、間質性腎炎、ループ ス腎炎などが考えられます。

 

右矢印脂肪円柱:ネフローゼ症候群にて高率で認める。DM性腎症でも認める。

 

右矢印顆粒円柱:急性尿細管壊死(ATN))、慢性糸球体腎炎、腎不全で上昇

 

右矢印ろう様円柱:腎不全、ネフローゼ症候群、腎炎末期などで認める

 

               

  感度と特異度

  • 感 度 : ある疾患がある人に対して、その検査を行って陽性になる確率  もちろん偽陽性(b)もある。
  • a/(a+c)で計算
  • 感度が高い ということは①偽陰性(c)が少ない ② 疾患がある人を、疾患ありと診断できる(a) 、                   
  • つまり偽陰性cが少ない=陰性であれば真陰性D=その病気を持っている確率は非常に低いということ
  • 除外診断に有用。
 
  • 特異度 : ある疾患がない人に対して、その検査を行って陰性になる確率(もちろん偽陰性もある)
  •  d / ( b + d )
  • 特異度が高いということは①偽陽性が少ない(b) ② 疾患がない人を、疾患なしと診断できる(d) 
  • 確定診断に有用 で、 特異度が高い検査=その検査が陽性であればその病気を持っている確 率は非常に高い
  • つまり偽陽性bが少ない=陽性であれば真陽性aであるということ。

  陽性的中率(PPV)と陰性的中率(NPV)

  • 陽性的中率 : 検査が陽性だったときに、その疾患が本当にある確率
  •  a / ( a + b )
  • 陽性的中率が高いということは真陽性aの確率が高いということ
 
  • 陰性的中率 : 検査が陰性だったときに、その疾患が本当にない確率
  • d / ( c + d )
  • 陰性的中立が高いということは真陰性dの確率が高いということ
 
   
 

 

  その他の用語と意味

  • RR:相対危険度 : 曝露群と非曝露群の疾患頻度の比
    → RR = {a / ( a + b )} / {c / ( c + d )
 
  • RRR:相対危険度減少率 : 1 から相対危険度を引いたもの
    → RRR = 1 - RR
     
  • ARR:絶対危険度減少率:非曝露群と曝露群の疾患頻度の差
    → ARR = c / ( c + d ) - a / ( a + b )
     
  • NNT:治療必要数:1 人を治療するために、何人の治療(などの曝露)が必要か
    → NNT = 1 / ARR

 

  QT間隔とは

  • QT間隔の変動は不整脈を意味する
  • QT延長は致死的不整脈(トルサ・ド・ポァン)の原因となりうる
  • 正常は 0.36秒以上、0.44秒未満。
 
  • QT時間は徐脈になると長くなり、頻脈だと短くなるため、RRで補正したQTcという指標を用いる。
  • QTc=QT(秒)/√RR(秒)を用いて表す。
  • 心電図の横軸1マス(1mm)=0.04秒である。
  • QT=0.04秒× QT間のコマ数 ÷ 0.04秒× RR間隔のコマ数 となる。 
 

 

  QT延長

  • 正常は 0.36秒以上、0.44秒未満。
  • 0.44〜0.46秒は境界域。0.46秒以上で明らかなQT延長
  • QT延長を認める患者で、失神がある場合Torsades de Pointesが考えられる。
  • ただしQTcが延長しているからといって必ず発作がおこるものではない。
  • 薬剤的原因:抗不整脈薬、抗精神病薬、三環系抗うつ薬、マイシン系抗生剤、抗真菌薬、抗アレルギー薬など
  • 電解質原因:低カリウム、低マグネシウム、低カルシウム血症

 

Torsades de Pointes

  • 多形性VTのひとつで、QT延長に伴う場合はトルサードドドポアントと診断される
  • ねじれるように一拍ごとにQRSの形を変えるのが特徴的
  • 多くは自然停止するが、10%程度でVFに移行するとされている
  • 持続する場合はACLSにのっとった除細動及び、原疾患(薬物、電解質)の治療が必要。
       

 

 

 

  QT短絡

  • QTc=0.35s以下
  • 原因は高カリウム、高カルシウム、アシドーシス、心筋虚血、カテコラミン、ジキタリスなど

 

目次 

  1. AS:大動脈弁狭窄症
  2. AR:大動脈弁閉鎖不全
  3. MS:僧帽弁狭窄症
  4. MR:僧帽弁閉鎖不全
  5. TS:三尖弁狭窄症
  6. TR:三尖弁閉鎖不全
  7. PR:肺動脈弁閉鎖不全症
  8. PS:肺動脈弁狭窄症
  9. ASD:心房中隔欠損症
  10. VSD:心室中隔欠損症
  11. PDA:動脈開存症
※A:大動脈、M:僧帽弁、T:三尖弁、P:肺動脈弁 
 S:狭窄症、R:閉鎖不全
 AS:心房中隔、VS:心室中隔 D:欠損症

 

  心雑音の種類

 

●全収縮期雑音:S1からS2にかけて連続で雑音を認める場合 例:MR、TR、VSD
 逆流による雑音。

 →AMIの急性期に突如聴取した場合、乳頭筋断裂・乳頭筋不全によるMRや心室中隔   

  穿孔が考えられるため至急心エコーが必要。

 

●収縮中期駆出性雑音:S1からS2にかけて漸減、漸増する雑音

 狭窄した部位を通りことで生じる 例:AS、PS、閉塞性肥大型心筋症

 

●拡張期雑音:S2からS1にかけて生じる雑音

 例:AR、MS

 

●連続性雑音:S1〜S1(S2をまたいで)にかけて生じる雑音。

 例:動脈開存症、Valsava洞動脈瘤破裂

 

  疾患別心雑音

AS:大動脈弁狭窄症

  • 収縮中期駆出性雑音=ダイヤモンド型雑音=
  • 胸骨右・左縁第2肋間にて聴取
  • 前傾坐位にて明瞭に聴取
  • 右頚部・鎖骨下に放散有り
  • Ⅰ音、Ⅱ音と少し離れている

   

AR:大動脈弁閉鎖不全症

  • 拡張期雑音
  • 胸骨左縁第2〜第4肋間
  • 高音、膜型にて聴取
  • 吹鳴性漸減性(潅水様)
  • 前傾坐位で息をはいてとめると明瞭
  • マルファン症候群、大動脈解離、感染性心内膜炎でも生じる
  • 逆流量が多い場合:Ⅲ音、Ⅳ音を伴う、収縮期雑音(相対的AS)、Austin Flint雑音を伴う ※Austin Flint雑音 ARジェット血流により生じた僧帽弁狭窄音 

 

MS:僧帽弁狭窄症

  • 拡張期雑音=拡張期輪転様雑音、遠雷雑音
  • 心尖部にて聴取
  • 漸減性低調整ランブル(ベル型)
  • 左側臥位、運動後に聴取明瞭
  • 開放音OSを伴う

  

MR:僧帽弁閉鎖不全症

  • 心尖部にて聴取
  • 全収縮期雑音であるが、漸増、漸減性の場合もある。
  • 左腋窩に放散する
  • Ⅰ音の減弱とⅢ音を伴うことが多い

 

 

TS:三尖弁狭窄症

  • 三尖弁狭窄症はしばしば無音であるが,弱い開放音と前収縮期に増強する拡張中期ランブルが聴取されることがある

 

TR:三尖弁閉鎖不全症

  • 全収縮期雑音
  • 胸骨左縁下部にて右心性Ⅲ音を伴う
  • 吸気時時増強する ※Rivero-Carvallo徴候
  • 吹鳴様雑音

  

 

 

PS:肺動脈弁狭窄症

  • 収縮中期駆出性雑音
  • 胸骨左縁第2〜第3肋間にて聴取
  • 左肩と頚部に放散  
        

 

PR:肺動脈弁閉鎖不全症

 

 

ASD:心房中隔欠損症

 

 

VSD:心室中隔欠損症

  • 全収縮期雑音
  • 胸骨左縁第3肋間にて聴取
  • 非常に強く、振戦を伴う雑音
  

 

PDA:動脈管開存症

  • 連続性雑音
  • 胸骨左縁第2肋間似て聴取
  • 左鎖骨へ放散
  • 中音で強く振戦を伴う
  • 収縮後期で最大となり、拡張期で減衰する
  • Ⅱ音は不明瞭となる
  • バルサバル洞動脈管破裂の場合は第3〜4肋間で聴取
   

 

 

 

・その他

①閉塞性肥大型心筋症

収縮中期駆出性雑音

胸骨左縁第3〜第4肋間

放散無し

しゃがむと減弱

バルサルバで増強

 

②病的でない収縮期中期駆出性雑音

無害性雑音

左室or右室から大動脈or肺動脈へ血液が駆出される際に生じる乱流

小児や若年者で聴取

3S 短く持続(short)、柔らかい(soft)、収縮期(systolic)

2〜4LSBで聴取

低〜中音

仰臥位で明瞭、坐位で消失

貧血、妊娠、甲状腺機能亢進症による血流増加で生じる場合は生理的雑音となる。