12誘導心電図の読影順序

  1. 25mm/秒、10mm/mVで記録されているか
  2. RR間隔は整か不正か、心拍数はどのくらいか
  3. P波の形(右房負荷、左房負荷)、陽性P波かどうか(aVL、aVRを除く)
  4. PR間隔に異常はないか
  5. QRSの形、幅(正常は120ms未満でnarrow)①電気軸②移行帯③脚ブロック④異常Q波の有無⑤高電位、低電位の有無
  6. J点は基線にあるかどうか STは上向きか、平低か、下降か
  7. T波の形
  8. QT時間:QTc 基準値:0.36s〜0.44s
  9. U波
 

①. 25mm/秒、10mm/mVで記録されているか

  • 心電図は速さ25mm/1秒、波の高さ1mv/10mmと記録されるようになっている
  • 条件が正しく設定されているかどうをまず確認。

 

②.RR間隔は整か不正か、心拍数はどのくらいか

  • 規則正しいRR間隔かつQRSの前にP波が毎回あれば洞性といえる
  • 300÷RR間隔のマス数を計算するとおおよその心拍数が表される
  • 逆にRR間隔が不規則で、P波が不明瞭なときは洞性でなく脈は不正といえる 
 

③.P波の形

  • Ⅱ誘導でP波が0.25mV(25mm)以上の場合は肺性P波(右房負荷)と考える
  • v1誘導にて 上下2相性で、陰性成分部分が0.04秒(1mm)以上かつ、          深さ0.1mV(1mm以上)の場合は左房負荷となる
  • aVL,aVRでは興奮がはなされいくためP波は陰性となる

 

④.PR間隔に異常はないか

  • P波の始まりからQRS波の始まりまで
  • PQ間隔、PR間隔は同じ意味
  • 正常は0.2秒(5mm)以下
  • AVB等で延長する

 

⑤QRSの形、幅

①電気軸

  • 電気軸とは、心臓の電気信号がどの方向に向かっているかを角度で表すもの。 心室肥大の評価に用いられる。

  • QRS軸の測定方法はⅠ、Ⅱ、Ⅲ誘導のそれぞれのR波からS波を引いたものを、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの方向成分として合成すると求められる。
  • 正常は0~90度。                           -30度以下の場合左軸偏位と呼び、                   +110度の場合を右軸偏位と呼ぶ。
  • 簡単にするとI誘導とaVF誘導の陽性成分が多ければ正常
  • I誘導で陽性成分が多く、aVFで陰性成分が多ければ左軸変異
  • I誘導で陰性成分が多ければ右軸変異と考えて良い
  • 右軸変異:心房中隔欠損、立位心、肺性心などで認める右室の拡大している状態
  • 左軸変異:左前脚枝ブロック、肥満による横位心、左室肥大などで認める
②移行帯
  • 胸部誘導QRSで評価する。いわば心室中隔の位置と考える。
  • 横断面(水平面)での心臓の回転を評価できる
  • 胸部誘導にてR波とS波が同じ高さになるところ移行帯という
  • 通常V3、V4あたり
  • V1、V2が移行帯の場合、反時計方向回転といい右室肥大を認める
  • V5、V6が移行帯の場合、時計方向回転といい右室容量負荷を認める
③脚ブロック
  • 通常QRS幅は120ms未満 = 3mm未満 =0.12秒未満である
  • 右脚ブロックの診断基準①wide QRSV1でrSR'パターンV5,V6で深いS波
  • QRS波が0.10~0.12秒はIRBBB:不完全右脚ブロック
  • QRS波が0.12秒以上はCRBBB:完全右脚ブロック
  • 右脚ブロックはあまり病的意義はない。
 
  • 左脚ブロックの診断基準①wide QRS②V5、V6でQ波欠如           ③v1~v3で幅広い深いS波(QS波or rS波)④Ⅰ、aVL、V5、V6でノッチのあるR波⑤V1-V3でST上昇、V5V6で低下
  • 新たに生じた左脚ブロックではAMIを疑う
④異常Q波の有無
  • v1〜v3以外の小さな異常Q波は正常
  • 幅0.04秒以上、陰性波が同じ誘導R波の1/4は異常Q波といえる QS or QR型
  • 異常Q波は心筋の壊死を示す
  • 誘導の位置で壊死の位置を把握できる
⑤高電位、低電位の有無
  • 胸部誘導でQRSが1.0mV未満を肢誘導でQRSが0.5mV未満を低電位という      
  • 原因は1)起電力低下:心筋炎、心筋梗塞。
  • 2)電気伝導低下:心嚢液貯留、COPD、粘液水腫、肥満、ネフローゼ
 
  • 高電位は左室高電位と右室高電位にわかれる
  • 左室高電位は①SV1+RV5>35mm②RV5>26mm③RV6>20mm        →つまりV5、V6でR波が増高していれば左室高電位=左室肥大を示唆する
  • 左室肥大しているケースでは他にI、aVL、V5、V6にてストレイン型ST-T変化 (右下がりの緩やかなST下降+T波陰性化)所見を認める
  • 左室が肥大するとⅠ、aVL、V5、V6においてR波が高くなり          右側誘導(V1、V2)ではS波が深くなる
 
  • 右室肥大は①RV1>7mm②RV1>SV1                    →つまりV1でR波が高ければ右室高電位=右室肥大を示唆する

 

 

⑥.J点(ST-T)とSTの上昇・下降

  • ST上昇とは、解剖学的に連続した2つ以上の誘導で、基線より0.1mV(1mm)以上の上昇を認める場合をいう。ST上昇は貫壁性虚血=完全閉塞を示す。
  • ※冠攣縮性狭心症など高度の狭窄でもST上昇を示す場合がある
  • ただし、V1~V3では生理的に2mm程度J点は上昇している
 
  • ST低下とは、基線より0.05〜0.1mV(0.5~1mm)以上の低下を認める場合をいう
  • STが水平もしくは右下がりに低下している場合は虚血(75%以上の狭窄)を示唆
 ※ちなみに基線はP波の終わり〜QRS波までの平坦部分でなく、T波の終わりからP   
 波の終わりまでの平坦部分を基線という。

 

 

⑦.T波の形

  • 通常ではⅠ、Ⅱ、v3~v6にてT波は陽性波を示す。P波と同じ向き。

  • T波の大きさはP波の2倍以上。R波の1/7以上が正常。            肢誘導で5mm(0.5mV)以下、胸部誘導で10mm(1mV)以下で正常。

  • 通常T波の形は左右非対称で、右肩あがりの波形となっている。

 
  • T波の種類①陽性波②陰性波③平坦or平低T:おおよそR波の1/7の高さ
    ④二相性T(+-)⑤二相性T(-+)⑥二峰性T
    ⑦陽性冠性T波:左右対称で尖っていない陽性のT波
    ⑧冠性T波:左右対称で尖っていない陰性のT波(陳旧性心筋梗塞)
  • 病的に問題となるのは⑨高カリウム血症によるテント上T波。通常とは違い左右対称的で尖端が尖った形をしている。
  • ただし慢性的な高カリウム血症では高カリウムでもテント上T波は発生しない

 

⑧.QT時間

  • QT延長の有無を確認する
  • QT延長は致死的不整脈(トルサ・ド・ポァン)の原因となりうる
  • 正常は 0.36秒以上、0.44秒未満。短絡は問題とならないが延長は注意。
  • 0.44〜0.46は境界域。0.46以上で明らかなQT延長
  • ただしQT時間は徐脈になると長くなり、頻脈だと短くなるため、RRで補正したQTcという指標を用いる。
  • QTc=QT(秒)/√RR(秒)を用いて表す
  • 心電図の横軸1マス(1mm)=0.04秒
  • QT=0.04秒× QT間のコマ数 ÷ 0.04秒× RR間隔のコマ数 となる。 
  • QT延長の原因は電解質異常(低K,低Ca,低Mg)、薬剤性(抗不整脈薬、抗精神病薬)

 

⑨.U波

  • U波とは、T波に続く最後の波。
  • 起源は不明。低カリウム血症で生じやすい。
  • 肢誘導では見えにくく、胸部誘導のV2~V4にみられることが多い
    aVR誘導以外では陽性で、高さは1mm(0.1mV)以下。
    aVR以外で陰性U波をみたら心筋虚血を示す。