ポケモンの街 横浜 | シン・メンズビギ横浜店ブログ

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「GM、それボクの胸に留めておきますから
 絶対、他の人には言わないでください!」

と仁田にキツく釘を刺された。

「分かった、分かったよ、、」

と私はとりあえず答えたが、
何か気に障ることを言った覚えもないし、
そこまで言われる筋合いがあっただろうか?

私はただ軽い気持ちで

「ポケモンって、ピカチュウが出るやつ?」

と聞いただけなのに…。


それは8月に入ってすぐのことだった。
マルイの販促担当者がお店にやって来た。

「お疲れ様です。ちょっとお願いがあるんですが…。実は8月8日からあそこの奥のスペースで、◯◯に3台しかないポケモンの巨大◯◯を期間限定で設置するんです。それで6日の夕方から搬出搬入の作業をスタートする予定なので、こちらの前の通路がちょっと騒がしくなると思います。ご迷惑をお掛けしますが、どうかよろしくお願いいたします」

「ああ、全然いいですよ! どうぞ好きなだけやって下さい!」

私はいつもの外面(ソトヅラ)優先で
テキトーに応えた。
話の半分も理解しないままに…。

翌日私は仁田にそれを報告しようとしたが、
なにせ話し半分しか聞いてなかったので
要領を得なかった。

「ポケモンは分かりましたけど、結局それってどこに3台しかない、巨大な何なんですか?」

と仁田に突っ込まれたが、

「ああ… スマン。オレもよく聞いてなかったから分からないんだよ…。もう一度聞いとくよ」

と言ってその場を取り繕った。
そしてその後判明したのは、
世界にたったの3台しかない
ポケモンの巨大ガチャ
ということだった。


「これはどエラいことになりそうですね」

と言う仁田に、
私は冒頭の質問をしたのだが、
それは愚問どころか恥をかくレベルらしい。

私だってポケモンが人気があることぐらい
何となく知っている。
メンズビギ横浜店の2階上にある
ポケモンセンターはいつも大盛況だ。
ただ… その人気と内容がどれほどのものか?
ホントのところ私はあまり理解していない。

仁田によるとポケモンの起源は、
1996年に発売されたゲームソフトらしい。
その後アニメやカード、映画などの
様々なメディアミックスを通じ、
その人気は世界を席巻し、
いまやポケモンは全世界共通語だそう。

1996年といえば私はすでに30代だ。
子供がいればまだしも、
その当時のゲームやアニメには滅法疎い。
ポケモン初代世代の小学生だった仁田とは
世代間ギャップがあり過ぎる。

「ふーん、そうなんだ。 ま、お手並み拝見ってとこかな。ちょっとぐらい賑やかになっていいんじゃない?」

などと軽口を叩いていた私は、
初日を迎えた開店直後、
考えを改めることになった。

ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!
という地鳴りのような響きと、
あ、あそこだー!
という奇声があちこちから聞こえてきた。
メンズビギの前を駆け抜けていく一団が
次から次へとやって来る。

私はすっかり呆気に取られ
その光景を店頭から眺めながら、
その昔、正月の福袋に客が殺到する
懐かしいシーンが甦ってきたのである。

「こりゃスゴいな…」

整理券がなくて泣き叫ぶ子供や
テンションMAXの外国人や
お目当ての景品で喜び合う家族や
シッポまで生やした仮装カップルなど
その喧騒は閉店まで続いた。

再び私の脳裡には
バブル全盛期のお祭り騒ぎの
バーゲンシーンが甦ってきたのである。

すっかりポケモン参道と化した
メンズビギ前の通路…
ご本尊はわずか二軒先にある。
どさくさに紛れて
御守りやおみくじのように
誰か服を買わないかと期待したが、
そうは問屋が卸さなかった。

「これ、いつまでやるんですかね?」

という仁田に、

「うーん… 怖くて聞けねーよ」

と私は応えた。

しかし、決して悪いことだけではない。
メンズビギ前の通路では、
その場で初めて出会った知らない者同士が
相手が欲しかった景品と交換してあげたり、
入場できない子供に整理券を譲ってあげたり
という感動シーンを何度も見せつけられた。
世の中も捨てたもんじゃないな…。


実は横浜では毎年お盆期間中に
目と鼻の先にある横浜みなとみらい地区で
「ピカチュウ大量発生チュウ」が開催され、
ポケモン大行進をはじめ、
様々なイベントが目白押しだ。
さらに今年はポケモンゲームの公式世界大会
「ポケモンワールドチャンピオンシップ」が
パシフィコ横浜で国内初開催となるなど
横浜はポケモン一色の街となり、
全国…いや、世界中のファンが、
この横浜に大集結していたのだった。


その日は世界にたった3台しかない
巨大ポケモンガチャがスタートして6日目…
ちょうどお盆期間の3連休最後の日だった。
普段はシ~ンと静まり返ったメンズフロアは
その日も一段と喧騒に包まれていた。
夕方に販促担当者がお店にやって来た。

「お疲れ様です。実はみなとみらいでやっているポケモンイベントがそろそろ終わるんですが、そのまま勢いで群衆がこちらに向かってくるかもしれないという情報が入ってるんです。特にこちらの6階から8階までは人で溢れ返る可能性が出てきましたのでよろしくお願いいたします」

ツッコミどころいっぱいのお願いだった。
だからどうしろ!ということもなく、
ただそれを待ち受ける心の準備をしとけ!
ということだろうか?
仮に私が
「それは絶対困ります!」
と言ったところで、
どうすることもできないはずだ。
そもそもその情報は一体どこからなのか?
などと思ったけど面倒臭いので、

「ああ、全然いいですよ! どうぞ好きなだけやって下さい!」

結局私はいつもの外面(ソトヅラ)優先で
テキトーに応えた。

しかしよくよく考えてみると、
これ以上群衆がやって来るのは恐ろしい。
館内では各種アニメのイベントや
名探偵コナンのトリックラリーもやってる。
私は以前世界の衝撃映像で視たことがある
視界一面が見渡す限り真っ黒になるほどの
イナゴの大群が広大な農地を襲い、
農作物に壊滅的な被害を及ぼすシーンが
脳裡に浮かんだ。

「仁田、オレそろそろ帰る」

私はイナゴの大群よりも、
「ポツンと一軒家」と
「VIVANT」が視たかったのだ。

翌日…
このポケモン巨大ガチャは無事終了し、
現在は静粛に包まれた日常が戻ったが、
私のアタマの中ではいまでも時おり
この曲が鳴り響いている。
(結構気に入っている…)
 


ここで一句…


 夏草や
    ポケモンどもが
                       夢の跡

お後がよろしいようで…