仕事である程度のスキルを習得し、「できる」ようになると、次に待ち受けているのは他の人にそのスキルを「教える」という役割です。
しかし、「できる」と「教える」には大きな違いがあり、特に一作業者からリーダーに変わった時、そのギャップに直面することが多いです。
私もその一人であり、自分の経験を通じてこの違いを痛感しました。
そう「できる」人でも決して「教える」ことができるわけではないということです。
ではどうしたら「教える」ことができるのか解説していきたいと思います。
結論は「教える」とは伝えるではなく、相手に質問をくり返し「理解したこと」を認識し「理解していないこと」を「理解したことにする」ということです。
では詳しく説明します。
1.「できる」と「教える」は全く異なるスキル
初めてリーダーの役割を任されたとき、私は「できること」を「教えること」が簡単だろうと安易に考えていました。
しかし、実際に他の人に教える段階に来ると、思いもよらぬ困難に直面しました。
自分が自然にできることを、他人にどう言葉で伝えればよいかがわからないのです。
たとえば、仕事の問題解決において、私は冷静に対処し、正しい判断を下すことができるようになっていました。
しかし、これを新人に教えようとすると、問題のどの部分でつまずいているのかを理解する必要がありました。
自分が当たり前にやっていることでも、新人にとっては未知の領域であることが多いのです。
「できる」とは、あくまで自分の中で完結するスキルです。
自分が知っている範囲で、自分だけの問題を解決する。
しかし、「教える」とは、相手がどこでつまずいているのかを理解し、その部分を言語化して伝えるという、全く別のスキルが必要になります。
リーダーになって初めて、この差に気づかされ、教えることの難しさを痛感しました。
2.教えても伝わらない現実
リーダーとしての最も大きな苦労は、教えたつもりでも相手に伝わらないという現実です。
どれだけわかりやすく説明したつもりでも、相手が理解できないことがあります。
これは、単に説明が不十分だからではなく、相手が何がわからないのか自分でもわかっていないという状況が関係しています。
「わからないことがわからない」というのは、教える立場にとって非常に難しい問題です。
どこから説明を始めればいいのかがわからないため、何度も試行錯誤を繰り返すことになります。
この時、リーダーとして求められるのは、相手の立場に立って考える能力です。
何がわかっていて、何がわかっていないのか、その境界線を見極める必要があります。
また、相手に質問する勇気を持たせることも重要です。
「わからないことを質問できない」という状況は、新人にとっては非常に大きな障壁です。
自分の無知をさらけ出すのは、特に仕事場では勇気が必要です。
リーダーとしては、そのような場を提供し、安心して質問できる環境を作ることが必要です。
3.何がわからないかがわからない状況への対処法
リーダーとしての成長の一部は、この「何がわからないかがわからない」という状態をどのように乗り越えるかにあります。
まず大切なのは、相手が自分の状況を素直に話せるように信頼関係を築くことです。
これには、リーダー自身が「わからないことは恥ずかしいことではない」という姿勢を示すことが効果的です。
リーダーも完璧ではなく、自分も昔は多くのことがわからなかったという経験を共有することで、新人が安心して質問できる環境を作りやすくなります。
また、相手が何を理解していて、何をまだ理解していないのかを明確にするために、確認の質問をすることが有効です。
「今、どこが難しいですか?」や「この部分はどう感じましたか?」といった質問を繰り返すことで、相手の理解度を把握しやすくなります。
まとめ
リーダーとして大切なのは、単に「わからないことは聞いてね」と言って説明責任を終えるのではなく、相手が本当に理解できたかを確認することです。
どこまで理解できているのか、自分から質問をして相手に答えてもらう。
このプロセスを通じて初めて、相手に確実に伝わったかどうかを確認できるのです。
「できる」だけではなく「教える」ことの難しさに向き合い、相手が成長できるようなリーダーシップを発揮することが、真のリーダーへの第一歩となるのです。