「時生」はずっと以前に読んだ本。
そして「メイク・ア・ウィッシュの大野さん」は今日読み始めて、今日読み終えたばかりの本。
- 時生 (講談社文庫)/東野 圭吾
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- メイク・ア・ウィッシュの大野さん (ダ・ヴィンチ ブックス)/大野 寿子
- ¥1,300
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この2冊がわたしの中でつながった。
「もうすぐ最期のときが訪れることが分かっていたら、人間は何を思うのか」
わたしは普段、死についてそれほど考えたことはないが、このまぶしいほどに光り輝く
2つの物語(1つはフィクション、1つはノンフィクション)は、わたしに重要な「何か」を
与えてくれた。
「時生」は、不治の病を患う息子に最期のときが訪れようとしている時、
若い時代に、「トキオ」と名乗る不思議な少年と過ごした思い出を、父親の「拓実」が
妻に打ち明ける形でストーリーが進んでいく。
この「トキオ」はむろん「時生」で、死んだ後、時間を超えて若い頃の父親に会いに行く
のである。この時点で、「トキオ」は、将来、自分が目の前にいる父親の子どもとして
生まれた後、どのような運命をたどるのかを知っているわけであるから、読んでいる方も
切なくなる。
そして、「メイク・ア・ウィッシュの大野さん」は、以前日経新聞で偶然見つけた記事に
あった難病の子どもの夢をかなえる団体「メイク・ア・ウィッシュ」の活動が知りたくて
買った本である。
ここにも、難病を抱えながらも、一生懸命生きている子ども達が登場する。
中には、残された時間がほんの僅か、という子もいる。
そして、「メイク・ア・ウィッシュ・オブ・ジャパン」の事務局長を務める大野さんが、
その子ども達に「明日を、今を生きる力を与えるために」、彼らの夢をかなえるお手伝い
をするのである。
死への恐怖は当然あると思う。子どもならなおさらだ。
でも、そんな恐怖を、まだ小さい体で精一杯受け止め、克服し、明るく夢を語る子ども達。
彼らには、ちゃんと「未来」が見えているのだ。
「トキオ」(=死んだ後の「時生」)は、未来の父親である拓実にこう言っている。
「人間はどんな時でも未来を感じられるんだよ。
どんなに短い人生でも、たとえほんの一瞬であっても、生きているという実感さえあえば
未来はあるんだよ。あんたにいっておく。明日だけが未来じゃないんだ。
それは心の中にある。それさえあれば人は幸せになれる。」
そして、別の場面では、未来の母親である麗子にこう言っている。
がんばって生き続けてください。きっと素晴らしい人生が待っているから。
難病と向き合って生きている子ども達の心の中に、夢が生まれる瞬間。
その夢を一緒にかなえていくプロセス。
そして、その夢がとうとうかなった瞬間。
大野さんの仕事は、子ども達の心の中に、「未来」を届ける仕事なのだと思う。
2冊とも、わたしの本棚の一番いい場所に大事にしまっておきたい宝物のような
本である。