今日、お財布を忘れた。

サザエさんの気持ちがほんの少しわかった。


いい天気だな!もぅ!

こんないい天気ならピクニックしたーい。

芝生に寝ころびたーい。


私の仕事は冷房の効いた、高層ビルの片隅でPC動かし、カタカタカタ。


友達Rの仕事は教師で、毎日子供たちと一緒に走り回って汗びっしょり。


昔、教師になりたかったことのある私は、彼の仕事の話を聞くのが、結構楽しい。

「あ~、こどもの頃、そういうことにワクワクしてたなぁ」と童心にかえってみたり、

そんなこどもの心をうまくつかむRに、ドキリとさせられることもある。

「私が教師だったらそんなことを思いつきもしないだろうな」

Rはなるべくして教師になったんだと痛感する瞬間だ。


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とある事情で母子家庭。

小4の男の子、タカハシ。

いたずら好きで、相手が男の子であろうと女の子であろうとちょっかいを出しては、暴力もふるう。

授業中はノートも書かない。

自分の名前も書けない。

タカハシの担任である、Rは、もう手に負えない生徒だと毎日ため息をつく。


遠足の予定だったその日、あいにく雨天のため、延期に。

「はい、じゃあ机をさげなさーい」

先生のその言葉に、生徒たちの目が輝く。

「え?いいの?先生!」


わざわざ教室に、ビニルシートを広げて、みんなでお弁当。

気持ちは遠足に行ったつもりの、楽しい時間。


ひとり、をのぞいて。


タカハシはひとりカーテンに隠れて、お弁当を出さずにいた。

「先生、おれ、お腹すいてないんだ」

3時間目あたりから、何度聞いた言葉だろう。

Rは、最初はまた授業をさぼって保健室に行きたいための口実かと、聞き流していた。


お昼になっても「お腹すかないなぁ」としつこいので、

Rは内心、「いつもは給食おかわりするくせに何かあるな」とタカハシに近づく。


「先生、タカハシはお弁当の時になると、いつもああだから、無視するのが一番だよ」

生徒のおせっかいちゃんが言う。

「あー、うん、でも、先生、今日はタカハシと2人でごはん食べることにするわ」


「タカハシ!こっちに来い。先生の机の下が空いてるぞ」

Rがタカハシを呼ぶ。

「仕方ないな、先生がそこまでいうのなら・・・」

周りの生徒たちのブーイング(注:1)の中、タカハシはRとお弁当を食べることにしたようだ。


机の下のRとタカハシの2人でお弁当。



   続く

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注:1 

Rは毎日、じゃんけんで勝った生徒のグループと給食を食べるが、この日はじゃんけんをせずに、タカハシと食べると決めために起こったブーイング。