「アマビエさま、病院の夏、婀の会」 | メメントCの世界

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「アマビエさま、病院の夏、婀の会」

 

今年はいろんな病院に通った。まず、母の白内障手術のたびに、静岡県掛川に帰り、病院へ。三方原聖隷にも行った。病院で手術と点滴が終わるのを待っているのは、とても消耗するので、たくさんの人が消耗している真っ最中だろう。

 そして、次男の足の親指の巻き爪がひどくなり、近隣の形成外科から帝京大学溝の口病院へ手術に。巻き爪の手術は長男もやっていて、形成の先生が太鼓判を押す、東大を出た凄く上手な先生がいるから帝京へ行け、と紹介状をもらい、大学病院へ手術に行った。

長男の時も同じ先生、またしても次男もお世話になった。

先生はみるなり、「肉芽もあるし切りましょう」と余計なことを言わないで、どんどん麻酔して切ってくれた。麻酔注射が痛いので、次男は顔をひん曲げている。そのうちに痛いのか何だか分からない顔になる。そしてものの10分で手術をしてくれた。ものすごく手早く上手なので、地元の形成の先生が褒めるだけのことはある。しかし、先生は2年前にうちの長男の巻き爪を切ったことは、流石に覚えてなかった。当たり前だ。巻き爪の手術くらいでいちいち覚えてられないよね。

 それが二か月位前のことで、そこからほぼ毎週、帝京に通うことになった。なぜなら、肉芽がしつこいからだ。でも、ようやく、「次は一か月後に来なさい」と言われた。先生、有難う。

 

 (中学生の時の長男・親ばか例その①)

 

巻き爪は、全くの遺伝で夫も子どもの頃に手術したという。

私は巻き爪に縁がない。形質の遺伝というのは面白い。夫の足と同じ形を息子二人はしていて、親指と次の指の間があいている。初めから雪駄をはきやすい足の形なのだ。そして、眉毛が途中で切れていて、それは夫の母の遺伝だ。

夏目漱石が「趣味の遺伝」という結構、くだらないような短編を書いていて、そんなものが遺伝するわけがないだろうと思う。

 帝京病院の門前には、名曲喫茶があり、待っているのにとても便利だ。なんと病院では、フードコートにあるような呼び出し端末をくれるので、どこにいてもいいし、混んでいる時は、密をさける。

 

そこの喫茶はずっとクラシックがかかっていて、グランドピアノがおいてあり、外からは全く分からない、いい感じの風情があるので、よくそこで原稿を読んだり資料を読んだりした。冷房がいまいち効かない灼熱の我家に比べて天国だ。この夏はそこで週に一回ですがそこで、門真国際映画祭に出品した「女人往生環」の英語対訳の確認をしたり、 9月1日、2日の婀の会「藝に生き、華に生き」の原稿を直したり、11月の劇団BDPの「リアの食卓」の改稿をしたり、ついには、12月のメメントC公演山の羊舎共同制作の「私の心にそっと触れて」を一昨日、脱稿。

 

今日また午前中、受診のついでに、帝京病院の名曲喫茶で、確かに脱稿したなあと、読んでいたのでした。

我ながらよく書いたものだ。

12月公演の「私の心~」は病院の医師が主人公で、アルツハイマー病をテーマにしている。

それと帝京病院は全く関係ないけど、自分の二年前の唾液腺の手術(昭和大学病院)などを思い出しては、ぼーっとしていました。

病院にはいろんな先生がいる。

 

 

「私の心にそっと触れて」の脚本は、去年、8割ほど書いていたけど、コロナで延期になってようやく、今年の12月にやっと上演です。

演劇集団円の山下悟さんが演出です。私と山下さんの共通の女優さんに捧げるオマージュでもあります。

アルツハイマーがテーマというと、暗いようなことを想像したり、お花畑のような介護を描いたり、世間には色々ありますが、

それぞれに違うのが人間です。病気にかかった女優さんと数年ほど、一緒に活動しましたが、彼女の幻覚を本当だと思って、

稽古に行くたびに、伺って、それはそうなんですか!!すごいですね!っとそのまま受け取っていました。

それが幻覚だと気づいたのは、本当に最後の方です。

そして、アルツハイマーの方には新しい記憶が入らないと言われていますが、彼女がウルトラマンの映画のロケで訪れた

筑豊炭鉱の様子を語ってくれた時、そのあまりにも鮮やかな描写に驚きました。

あとから、映画の画面で観て。彼女の言う通りだったから、アルツハイマーの方が記憶はもう入らないというのは、100%の話ではないと思いました。兎に角、彼女の明るさと屈託のなさ、優しさを今でも忘れられないです。

 

私の戯曲を出版して下さったハーベスト社の故小林社長は、ことあるごとに様々な本を献本くださいました。

その中の一つ、佐川佳南枝著『記憶と感情のエスノグラフィー:認知症とコルサコフ症候群のフィールドワークから』

は、自分の筋道を確認するのにとても重要な参考書になりました。

 

 

そして、私の大好きなオリバー・サックス先生にも数々の著書で私の疑問に答えてくれたことに感謝です。

サックス先生には勿論、一度も会っていませんが私の頭の中のサックス先生は、今にも勝手に動きだしてくれそうです。

そして、彼が脳神経医としてはメインストリームにはなれなかったけれども、その観察とエッセイによって多くの病人に希望を与えてくれるのは、その書物の筆致の明るさと愛情から派生する温かさ、優しさだとつくづく思います。

そして、長男の相貌失認が、頭が悪いのではなく、紡錘状回の異常なのだということが良く分かってほっとしています。サックス先生と、うちの長男の行動はよく似ているのでした。

 

 

私自身も、父の介護で12年、介護バイトや、近所の公演の高齢者たち、諏訪での病院での活動など、様々な方の症例に触れましたが、

巷で言われることは、ほぼ当てはまらないのです。

医療サスペンスというと、久坂部洋氏の小説がいっぱいあります。

父が脳内出血で要介護4~5で、急性期病棟にいたころ、病院のロビーの本棚にあった久坂部氏の、「廃用身」(誰だよ、そんな本を病院に置いた奴は!!)を読み、ぎょっとなったんですが、彼が言ってることは、まあ、それはそういうこともあるけど、お話だということですね。

父は左半身が麻痺しましたが、6年くらいは、廃用になった左半身にはあまり血が通ってなかったんですが、この2,3年、なんと!
冷たかった左側の手足は、暖かくなってますので、小説の様にはなりませんでした。

右側をひたすら動かし、運動用のペダルに両足をくくりつけては、毎日食後に漕ぐことで、回復したのです。

こないだ、血糖値測定器にセンサーを取り付けるのを、父が右手だけでにやってのけて、私が両手でやるより上手でした。

血糖値は糖尿病で240が通常値の父です。三度三度、インシュリンをブスっと打ちます。

ところが、父は脳血管性認知症にもなりませんでした。こんなに血糖値が高いのに??

何故でしょうか、分かりません。

さあ、ペダルを漕ぎましょう。

 

専門家でもない私が実際に触れた事象からのみ脚本を書くことにしました。

それで、それが正しいというか、筋道があっているのか、この佐川氏の著書はかなりどんぴしゃりに、私の体験と重なりました。

最初に決めたテーマに、今年になって辿り着き、自分の見立てが合っていた事に喜びを感じています。

また、今年の初めに受けたセラピーワークショップでも、ToriスタジオのTori先生が言ってることは、まさに

松本元氏の書いた「愛は脳を活性化する (岩波科学ライブラリー 42) 」と重なることだったため、脚本アップまでに時間が掛かったけれども、

そういう道筋で書いてよかったなと、納得したわけです。

原稿書き終え、帝京病院の喫茶で読み終えて、 ふとみると、レシートにアマビエさまがいました。

 

さて、9月1日、2日の婀の会では、アマビエにちなんだ、「安真病癒三番叟」のスペシャルバージョンの演奏と、林祐樹さんの踊りがあるので、何だかほんわかしました。

要するに、これは宣伝です。最後まで読んで下さって感謝です。

コレラ猖獗のクリミア半島ならぬ、コロナ猖獗の首都圏。小中学校は8月いっぱい休業になり、がっくり。そういうご時世なので、とても気が退けるのですが、配信もございますので、婀の会、御高覧賜りますよう、お願い申し上げます。

 

チケット https://ticket.corich.jp/apply/113074/121/

配信【観劇三昧 チケット販売ページURL】

・9/2 13:00

https://v2.kan-geki.com/live-streaming/ticket/346

・9/2 17:30

https://v2.kan-geki.com/live-streaming/ticket/367