どこからどこまで話したのやら | メメントCの世界

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演劇ユニット「メメントC」の活動・公演情報をお知らせしています。

どこからどこまで話したやら


ご無沙汰です。
御蔭様で、早川倉庫支援リーディングは、大成功に終わりました。
え?何々?そんなのあたりまえ?そうじゃないんですよ。もうほんとにほんとに!ご苦労さんだったんです。
 とにかくまあ、世知辛い世の中ですが、ダムと何かをやりたい!そうだ!あの人に聞こうと、ずっと東北支援をタップダンスでやっているダンサー・おどるなつこさんに相談しました。なつこさんは、文学座の女優で劇作家の山谷典子さんとも親しく、ではでは、「つつじのむすめ」という短いミュージカルがある!と企画はどんどん進み、他人の迷惑お構いなしでまとまりました。ダムのシンポジウムの人々をネットで公募したらすぐに手が上がって下さったのに勇気づけられました。
 会場については、できるだけ大き目で観やすく、費用がかからない場所を探したんです。だってですよ、劇場は無料じゃないし、様々な付帯設備がかかります。だから、下手したらチャリティーやって、チケット代は全て費用になってしまう可能性があります。
 もちろん、そんなことしないで自分の銭をドカーンと寄付できればよいのですが、誰しもそうはいかないので、智恵と汗をかくことにしました。
 ダムチーム、つつじチーム、稽古費用も自腹、俳優も、照明スタッフの和田さんもボランティア、という苛酷な優しくない現場となりました。
 当日は、何だか総動員で裏も表も手伝って頂きました。いつものメメントチームだけでなく、四季時代の友達や他劇団の方が足りないところを担って下さいました。
細かい雑費やコピーだい、輸送に必要な手段、会場費の一部をカンパして頂いたり、人様の御蔭で進んだ企画です。全くもって巻き込まれてくださって本当にありがとうございます。


演出協力の藤井さんは、丁寧な稽古で新メンバーも旧メンバーも素晴らしいアンサンブルにまとめあげてくださいました。多分、藤井さんの時計は、私の時計の1.3倍です。というのは、私なら切り上げてしまうことを丹念に拾うのです。ぎりぎりまで舞台稽古も粘って万全のリハとなりました。
裏方の仕込みはほとんど、劇場さんが手つだって下さって、私や大内、東京アンサンブルの方や岡野さんなど、とにかく照明も音響も居る人間で準備して、開場一時間前に、照明の和田さんが来るのを待ち受けていました。和田さん、一時間しかないのに、粘って素敵な照明を作ってくだいましたので、無事に開場。表方は豪華に、いつものメンバーに明樹さん、東京演劇アンサンブルに新宮の方も入ってくださいました。
 ぞくぞくと観客が来場される中でトーク始まりました。このトークには企画者と熊本繋がりの映画監督・遠山昇司さん、地域演劇を追っかけ続けている演劇ライターの大堀久美子さんにご登壇いただきました。この人選はたまたま周りの方に繋いで頂いて、実現したのです。遠山監督は、九州各地で撮影をされ、東京と熊本を行き帰しています。ちょうど7月16日からユーロスペースで「マジックユートピア」や五家荘で撮影の「冬の蝶」が公開です。
http://magic-utopia.com/

タイムリーなだけでなく、遠山監督は現地でボランティア活動現場の報告もして頂き、的確な言葉で、被災地での表現者によるコミュニケーションの役割について語って頂きました。大堀さんからも熊本の被災地で立ちあがった県立劇場を中心とする活動SARCをご紹介いただきました。熊本の劇団の強み、それを生かした取り組みが始まっています。
 その後、松谷みよ子・原作 山谷典子・脚本 おどるなつこ・振り付け 小野文子・作曲「つつじのむすめ」の上演となりました。私はトークを締めくくって、脱兎の如く、バックステージから1階に抜け、そこからまたバックステージの地下1階レベルへ戻り、その間を西山さんに繋いでいたでき、音響ブースに辿り着いたのです。和田さんも、リハ無しで素晴らしい照明をオペしてくださいました。設備に制約が多い中、ほんとに皆でやれることを全部やりました。

「つつじのむすめ」を聞いていて堀田善衞の実家に居たサンカ」の娘の話を思いだしたのでした。
 *堀田善衞のサンカの娘のエッセイ
 そのサンカの娘は奉公人だった。当時、堀田家は祖母が家政をとりしきっていた。そして自由民権運動の壮士をかくまったりしていた為、時として警察のガサ入れがあった。娘は夜目が聞き、いち早く特高などの気配を察して警告をし、事なきを得ていた。祖母は娘をサンカだと知っていたという。
 ある夜、娘が居なくなる。皆が探すなか、祖母は「あそこへ行ったのだ」と憂えている。娘は伏木(富山県)から恋する男のいる京都近くまで、一夜で駆けて逢瀬をして戻ってきた。その男は兄だったという。何度かそういうことがあって後、娘は居なくなる。
 「つつじのむすめ」も堀田家の奉公の娘も幸せにはなれなかった。




「ダム・リーディング」は本公演のキャスト全員ではありませんが、皆さんにご参加頂き、粟野さんがツアーで不在だったため、恋人役・広瀬を東京芸術座の森路敏さんにお願いいたしました。御本人はシンポジウムキャスト公募に、熱意をもって応募して下さり、予想以上にボランティアが集まったこともあり、広瀬役をお願いしました。この「ダム」は兎に角、方言が大変。ネイティブか相当稽古しないと、キャストは大変です。しかしまあ、このリーディング、本当に贅沢で耳福な、豊かな声によって観客の想像力に訴えかけた本公演なみの臨場感あふれる公演となりました。トガキを読み、シーンの枠組みを先導していく円城寺あやさんの的確な構成によって、美術も衣装も小道具も音響効果も無い中で、本当にまざまざと川辺川の濁流や、舞台のかわず荘が立ち現われてくるのです。嫋嫋と鳴るのは、琵琶ですが、そんなふうに幾つもの倍音が一体となり、熊本弁の美しさや辺りの情景を堪能しました。
幸せな時間に感謝するばかりの作者でした。

たくさんのカンパもいただき、来場者も最終的にあ150人を超えて素晴らしい支援のイベントとなりました。心から、手を差し伸べてくださった皆様に御礼もうしあげます。
ありがとうございました。