ダム初演
本日のドラマリーディング稽古で、初めて「ダム」が役者の口からせりふで語られるのを聞きました。
ずっと私の中で、文字情報としてあったダムです。本当にうれしいのと、文字が肉体を持つということが
どういうことなのか、理解しました。何というか、熱を持つのですね。より熱く、より冷えて。命が宿るわけです。なんとまあ因果なことかと思いました。
ダムを書いたのは二男がおなかにいたころ。前にも書きましたが、ある種、日常ではない時間と体の中で書きあげたもので、今読んでも、不思議な感覚です。
今日は西山水木さんが我がヒロインを熱っぽく、強く弱く演じてくれました。この役はとても難しいと思ってました。人生の痛み、を知っているかどうかだとは思いますが。夢破れて~今があるわけなので。
何も自分で為そうとしないヒロイン、私には珍しい登場人物です。しかし彼女は確実にそこで生活をしています。何も起きない日常で、年の若い恋人との情事は存在を確かめる方法です。恋というのか、愛というのか惰性の日常が積み重なっても何も決められない女です。しかしながら、決められずとも生きるということは軋轢が生まれるわけなので、彼女も選択をしなくてはならなくなります。そこへ現れる異邦人。
劇作家協会会長の坂手さんは、これが上演されないというのをずっと気にして下さっていたため、去年の暮れに、発破をかけられ、太平洋食堂との、二本同時公開という身の程知らずな企画を始めました。しかしながら、音になった台詞はとても心地よく、熊本弁の持つ抑揚、陰影、強弱が夢心地に耳をくすぐりました。
ぜひ、一日だけの一回だけの「ダム」、ご来場くださいませ。