ハムレット症候群 | メメントCの世界

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演劇ユニット「メメントC」の活動・公演情報をお知らせしています。

ハムレット症候群




嶽本あゆ美






久々に更新します。


全く、何をやっていたかというと仕事してました。ひたすらに書く毎日、ワークショップや稽古に行く毎日。


どうせ告知だろうと言われるでしょうが、私が二月に主に行ったのは都内の小中学校でした。そこの、総合の授業やら国語科の授業で、出前のコミュニケーションの授業をしにいきました。それと、もちろん、劇団BDPの「ハムレット・レポート」の稽古も


合間はすべて太平洋の執筆と雑事務でした。こちらも、大きなイベントがあったので、改めてご報告致します。




小中学校に行くのはこれで二年目ですが、私の知らない若い世代とたっぷりやりとりできる貴重な時間です。それと、生徒は私を演劇やってようが作家だろうが、関係ない変なオバサンという受け止め方なので、素の自分に戻れるのです。構えないで済む分、授業はかなりの部分でアドリブなので本番と同じです。


こないだ、中学校で携帯電話をテーマにディベートにチャレンジしました。中学二年ともなれば、立派な立論をしてくれます。そして、いろいろなサイドに立っての意見を、即興芝居で伝えてくれました。脱帽ですね。




やはり14歳位になると、小学生とは違って知能と理性があるなあ・・・と感動などしてました。きっと、高校生ならもっとすごいだろうから、例の桜ノ宮高校などは、市長と公開討論会をしたら、市長とか行政側が負けるだろうなあとつくづく思ったのです。子供と言う勿れ、大人よりも明晰な判断力だなあと思います。もちろん、世の中正論が勝てるわけじゃないのですが、志というものはこういう学生時代に培われるわけで、ここで惰性や空気を読むようでは、不健全だし伸び代が減ります。長い間に志はどうせ削れるのだから、思い切りとんがってね、とオバサンは中学生にエールを送ったのでした。






さて、ハムレットのテキストに戻ると、「あ、この人ってこれで30歳なんだよね」というちょっと醒めた印象を持ちます。何故って、懐疑が多すぎるからです。ハムレットの原作(笑)ノーカットだと、5時間以上かかります。大体は、この人が悩んでいるのです。国内でやる場合はたいてい、テキストの編集(カット)をするのですが、私はこのハムレットレポートで、大体、1時間20分まで割愛しました。おいおいおい!と作家が怒りそうですが、こういうのを死人に口なしというのでしょう。福田さんの翻訳は難しいけれど、語呂が良くてだんだん歌舞伎に聞こえてきます。そして、ハムレットは悶えまくり、自意識過剰で自分で解決方法を見出せないのです。いつから、かっこいいハムレットなどという幻想が生まれたのでしょう??これって恋愛?いやいや、一方的な支配被支配だなあと。




彼は延々と、先へ進まない言い訳を言い続け、自分の悲劇に浸るのです。そして、ようやくアクションを起こすと、転げるように報復的な殺人をしていきます。すっぱりと、思い切りよく、へたくそに。


しかしも、親友ということになってるホレイショーときたら、このまま復讐をして、この若者が王位についたらどうする?という展望さえもないわけです。無責任な幇助のあげく、世継ぎもいなくなってしまう。どこかの研究家が、ホレイショーによる市民革命なんて言ってましたが、そこまで考えてるとは思えない。目先の義理やら、忠義でこの王家の血族を絶やしてしまうわけですから。




ずいぶん、辛口になりましたが、そういう先を観ようとしない、もしくは憂鬱とセットでしかアクションを起こせない若者って現代的ですね。オフィーリアにしても、父親や兄に隷属し、次の主人兼保護者としてハムレットを見ているようにも思えます。その主体性の無さは諦めから来ているのでしょうか?




方や、悪者扱いのガートルードにははっきりと大人の意思が見えます。王国存続のために、義弟と結婚。清濁併せのんでの結論に、息子は全く理解を示しません。大体、文句があるなら、ハムレット自身が即位でも何でも宣言すればよかったわけです。しかし、やらない。周りにはごろつきばかり。




こんな風に書いていると、じゃあお前は一体、何がやりたくてハムレットを題材に書いたのだ?と怒られそうですが、こういう家庭内不和が、デンマーク王室特有の現象ではなくて、非常に現代的なものだと思ったわけです。お仕着せとしてのハムレットではなくて、リアルに嫌な奴のハムレットと出会ってほしいなあと。




こうなると、悪役のクローディアスですが、素敵な俳優が演じる必要があります。今回の劇団BDP公演では、昴の重鎮・金尾哲夫さんが、演じて下さいます。とても魅力的ですね。




ギルデン&ローゼンのコンビも二十歳の女子が演じますが、これがなかなか相当の悪ぶりで楽しいです。二年前にやった「るつぼ」でも、すごい魔女ぶりでしたね。このお芝居は歌とダンスも、コーラスラインのようにあります。そして私が作詞した、二人のコンビの歌もお楽しみに!!以下歌詞です。








M4 ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ




ローゼンクランツと ギルデンスターン


二人の運命はいかに hohoho



ローゼンクランツと ギルデンスターン


俺達はなるようになるさ hohoho





♪さすらいの旅は これで終わり


さあエルシノアへ 帰ろう 


うまい話と 出来すぎの悲劇が


ゴロゴロしてるはず


狼どもが 牙をむいて 羊達を追いまわす


キツネどもが 舌舐めずりして カモにとびつく


綺麗なバラには 棘がある


惚れたりするなよ ベイビー


あっちの水は甘いだけじゃない




ローゼンクランツと ギルデンスターン


二人の運命は 神のみぞ知る


Hohoho~