「クララとはだれか?」
これはかなり硬い概要ですが・・・ダケモトあゆ美
概要
評論家・室伏高信の娘で、戦時中に中国文学翻訳者として南京、上海で活躍し、敗戦後に上海で客死した室伏クララ(1918~48)を主軸に、敗戦と日本人文学者らの葛藤とモラトリアムを租界のアパートの一室から描く。
近年、発見・発表された堀田善衞の上海日記「滬上天下1945」と小説「歴史」、林京子の著作「予定時間」をベースに、聖女とも侠女とも言われたクララの人物像を探る。
1940年、日中戦争の中、離婚後の22歳で大陸に渡ったクララは、草野心平を頼り南京政府の宣伝部に勤める。その後上海に移り特務の宣撫工作を担うが、中国の言語・文学を愛した彼女は、積極的に中国人女性作家の作品を翻訳し、「大陸新報」という国策新聞に連載した。中国人よりも北京官話が美しかったと言われた彼女は、日本人という支配者でありながら、中国文化に深く分け入って溺れた被支配者でもあった。晩年は男性遍歴を繰り返し、健康を害した後に病没。朝日新聞記者の林俊夫に見とられ、遺骨となって日本に戻った。敗戦の中、沈みゆく祖国を遠い上海から眺め、その目に映る絶望と希望を語り合う若き詩人達の肖像。
てな訳で、日中戦争から終戦の上海で活躍した女編集者・スパイのクララ室伏です。
私が最初にクララを知ったのは、2005年の「かつて東方に国ありき」青年座公演です。この話に出てきた堀田善衞こと「堀」は、中国人民に送る「日本人文化人の敗戦に寄せる真情」を書いたパンフレットを空からばらまこうと計画していました。そのパンフの翻訳をしていたのが、クララ。計画は印刷所がどこも、占領国日本との係り合いを避けてとん挫。資金も、紙も、ばらまく海軍の飛行機も準備できたのに、パンフ原稿は没となりました。打ちひしがれる堀田に、クララは「絶望が虚妄なるは、希望も又等しい」という言葉を言って慰めます。
日本人捕虜となった上海在住日本人は、引き上げ船で順次、帰国しましたが堀田、クララは残留を望んだ。帰りたくない、祖国日本。それを上海から眺めている彼らにどこまで迫れるのか・・・作家の脳みそは10年来の上海に今、トリップ中です。(続く)