祝!「べしみ」 | メメントCの世界

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祝!「べしみ」 ・・・ 嶽本 あゆ美

閑話休題
 熊野の続きはちょっとお休みで、宣伝です。

 いつもメメントの公演をお手伝い下さる、作家友達の田中兆子さんが、「小説新潮」で小説家デビューされました。これは、昨年の新潮社のR18文学賞という官能小説の作品公募で、田中さんが大賞をお取りになって、それが今月21日発売の「小説新潮」に掲載されました。心よりお祝い申し上げます。さあ是非お手にとって立ち読みはせず、そのままレジへとお進み下され。

 内容ですが、要するにエロ小説です。ネタばれするのであんまり書かないのですが、女性にとっては身に覚えがある事ばかりで、そのスーパーリアルさに圧倒されます。そしてコミカルな中にシニカルな笑いが満ち満ちていて、まあとにかく読んで頂くのが一番です。決して男性には理解できないかもしれませんが、すんごいリアリズムです。

「こぶ鯛」という魚をご存じの方は多いか少ないか知れませんが、ナポレオンフィッシュのような突き出た頭のめでたい鯛です。こいつは大きくなるにつれ、メスからオスへ、オスからメスへと性転換します。その途中である転換中の性というのもあり、体はオスなのに頭はまだメスのつもりで、他のオスにまとわりついて、この野郎!とばかり痛い目に会わされる事もあるそうです。毎週日曜日19時半から放映のNHK「ダーウィンが来た」で特集していて、その生態について息子とじっくり見ました。

「べしみ」は40代独身、彼氏いない歴十年以上のOLが自分の性欲と七転八倒する話です。
いわゆる中年を過ぎると女性の大半は更年期といわれる女性ホルモンの減退で、変調をきたします。もちろん私も突入致しましたが、これは、こぶ鯛のように性が揺らいでいるような状況なのではないかと、「べしみ」を読んでいてはたと気がつきました。ほっておくと、オジサンに変身してしまうのかもしれません。最近のアラフォーはとかくもてはやされ、かつてバブルを体験した二十代後半にしがみつくように、その外見までも留めようとしている傾向がありますが、外見は頑張れても、中身はこぶ鯛のようにトランス・ジェンダーしていくのを止めるのは至難のわざです。

 一昔前に、オバサンになるとオニババ化するという説が唱えられていましたが、本当にオバさんになると、ジェンダーというものがどうでもよくなってきます。息子を二人も持つと特にそうです。ちっとも男が偉く思えなくなります。トイレで二人同時に放水して喜んでいる小さなお尻を見ると「アホだ」としか思えません。一度に何人でできるか、友達同士で競い合ったりもします。西原の「ああ息子」状態です。ここでもうすでに頭がこぶ鯛化してきているのかもしれませんが、物書きにはそれも大変有効です。オジサン頭になって、「坂の上の雲」のような仰々しい歴史小説を書くという手も有りかもしれません。そんなアホな事を考えるのはお前だけだと言われそうですが、「べしみ」を読んだら、女性はみんな苦笑しつつ爆笑するのではないでしょうか。そうでなかった人はメール下さい。そして、そうでないあなたの日常をこっそり教えてくらはい・・・