お見舞い申し上げます。 | メメントCの世界

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演劇ユニット「メメントC」の活動・公演情報をお知らせしています。



 今回地震で被害に遭われた方、関係する全ての皆様にお見舞い申し上げます。そして、これからも大変な世の中が続くのだと思い、溜息をつく毎日です。他人の溜息まで聞かされたくない、と思われるかもしれませんがしばしお付き合いを。

私は自宅で仕事をしておりましたが、突然のすさまじい揺れに本棚の上に積んだ本が総崩れになり、すわ東海地震かと思いました。揺れが収まるのを待ってようやくテレビをつけると東北地方というのが分かり、その次の揺れでこれは大変なことだとマンションの廊下に出ました。私は静岡県出身で、子供の頃から月に一度は避難訓練をしていました。ある意味、地震慣れしておりますが、それでもあの揺れはひやっとしました。

割れたものや家の中を片付け、上のほうの危ないものを床に下ろし、本日消印締め切りの東京都の助成金の申請用紙を必死でしあげて(守銭奴のごとく)、保育園に子供を迎えに行きました。揺れから二時間以上たっていたので、すぐに職場を出た親や、ラッキーにタクシーを拾えた親が保育園に辿り着き始め、子供を引き取って行きます。しかし、徒歩帰宅が多いので先生と相談の上手分けして、親が深夜まで迎えがこない家の子供を預かる事にしました。夜中の11時頃には都心から徒歩で辿り着いたお父さんやら、出張先の群馬から車で帰ってきたお父さんが、子供を引き取りに来て、段々家の中も落ち着きました。ほっと一安心ですが、うちの旦那は帰ってきません。お客さんが帰れないので劇場で泊まりになりました。

翌日から、鷺沼はオイルショックのような騒ぎで、スーパーやら食料品店、コンビニで買い占めが始まったのです。自宅待機になったお母さんたちが手分けして、買い物をしてくれまして、ホントに助かりました。まるで隣組のようにママ友で連帯です。しかししかし、あの買い占めは一体なんなんだ??今日明日の分だけ買えばいいのに・・・・何でもかんでもなぜ買い占める???



阪神大震災の時、大阪近鉄劇場で公演でした。震災当日は休演で、たまたま用事で静岡に帰っていて、朝、テレビで知り、近鉄を乗り継いで三重経由で8時間ほどで大阪まで辿りました。それも今考えるとラッキーでしたが、上本町に着いたら南部はあまり被害が見当たらず、会社に行くと相当数の関係者のご家族が被災してました。

これは芝居もクローズだろうと、たかをくくっていたのが間違いの元。崩れ落ちた神戸国際、に始まり、ほとんどの劇場は翌日以降クローズしたにも関わらず、当時居た会社は翌々日の公演を指示してきました。絶句しましたね。演目は古典的なミュージカルでしたが、どんな名作もあの被災地の近くにいたら白みます。というか、全然、もう誰もやる気でない。被災地を横目で見ながら、劇場に辿り着いて、無理やり笑顔で踊る俳優の気の毒さ。それとも演劇の力で鼓舞しようという理屈なんでしょうか?もっと大きく見て、経済活動を止めないということなのでしょうか?

案の定、停電が頻発。今回のような輪番ではなく、いきなり瞬間停電やら電力がフラフラと上がったり下がったり。それだって仕方ないんですよ、大震災なんだから。でもここで悲しいことに、私は音響だったのです。照明が少し暗くなってもそれほど困らないけど、8CHのテレコ(古いですね・アナログ)はスパッと止まります。音楽がぶっちぎれました。今だと、もっとハイテクになっていて、照明も音響も電圧の変化にもっと脆弱なのではないでしょうかね。それだって、しょうがないと思うのですが・・・・結局、無停電電源をどなたかが、徹夜で車飛ばして東京から運んでくれました。ものすごく感謝しましたが、無停電でテレコを回すよりも、人の役に立つ事に使った方がいいに決まってます。でも、私はそれから二カ月そのテレコをグルグル回していました。すんごいトラウマになりました。

来週から四月の公演の稽古を始めます。何というか、それでもやりたいなあという気持ちと、やれるのだろうか?という気持ちのせめぎ合いです。知人の中には今週末の公演を中止する方もいらっしゃいます。チェーホフは伝道の書・ソロモン王の言葉「空の空 空の空なる 全ては虚しきかな」を頻繁に唱えています。意味は人間の営みは全て空だというわけです。その身になんの益があるか。  しかし地は永遠に変らない。太陽も風も潮も動くが又、戻っていく。身も蓋もない絶望感ですが、それに長々と続く言葉として、だからこそ、今日一日汗を流して労働して一日の糧を喜び味わうのだというくだりがあって、ようやくホットします。

とどのつまり、こうやって毎日暮らして行く事しかできないのでしょう。日常をなるべく平常に、家族とつまらない喧嘩しながら、他人を思いやりながら・・・一方、何かスーパーマンのような助けやら、神頼みの奇跡を願わずにはおれません。
被災者の方が一日でも早く、日常を取り戻され復興が進むことを心よりお祈り申し上げつつ、電気の無駄を悔い改める私です。


                               ・・・3月16日 嶽本 あゆ美