あの頃の私はとにかく愛情がほしくてほしくて、でもそれは誰でもいいわけじゃなかった。
子供が親を思う気持ちって莫大なんだって。
本当にその通りだったな。
ママに会いたい、側にいてほしい、ママ好きだよ、いい子にするから帰ってきてよ、ううん贅沢は言わないから何やってるかだけは知りたい。
ママ、寂しいよ。
この気持ちは届いてたのかな。
言葉にはしないけどうちに秘めていた感情はあったんだ。
いつもそう。何でも悲しいことは心に秘めてた。
誰にも言わない。誰にも言えない。
でもそんな寂しさを一つ一つ埋めていってくれたのがおねーちゃんだった。
今でこそおねーちゃんだけど当時は赤の他人。
見ず知らずの女の人。兄の彼女。
私達は他人だった。他人だったなんて不思議だ。
まだ出会い始めの頃で小学2年生。私は友達に好かれていなかった。
はっきりわかったのが学校で何人かの女の子と話をしていた時。
何を話してたのかは忘れたけど雰囲気は悪く雲行きが怪しかったのは覚えてる。
その中の一人にこう言われた。
melonちゃんのこと嫌いって。
他の子達も言葉にはしないだけでそんな感じだった。
ショックだったな。私嫌われてるんだ、友達じゃなかったんだ、って思った。
泣かない。こんなことで泣かない。
この人たちの前で泣かない。
涙をグッとこらえて家に持ち帰った。その気持ちもいつも通り心のなかに秘めるつもりだった。
でもそんな私に初めて手を差しのべてくれた人が現れた。
「melon、どうしたの?元気ないじゃない。学校で何かあったの?」
泣きそうなくらいはっとした。
言わないつもりだった。誰にも話さないつもりだった。
でも迷った。話したいけど言えないの。言ってもわからないよ。こういう辛いときにどうしたらいいのかもわからない。
心を開きかけたとき
「melon、自分の気持ちは自分で伝えないとわからないよ。いくらおねーちゃんだからって何があったかは超能力者じゃないんだからわからないよ。おねーちゃん辛いなら話聞くから。」
話さないとわからない。自分の気持ちは自分で伝えないとダメなんだ。
おねーちゃんは私の辛い気持ちに気付いてくれた。
何も話していないのに気付いてくれて私に何かあったのか聞いてきてくれた。
この人は私を見ていてくれてるんだ。
人の暖かさに初めて触れた気がした。
自分の内を伝えてみようと思った。心に秘めてる部分をこの人に伝えてみようって、私をわかってくれたこの人に伝えてみようと思った。
「あのね、今日私友達に嫌いって言われたの。」
「そうだったんだね。それは辛いよね。」
たった一言だったけど涙がこぼれ落ちた。傷ついた心をわかってくれた。この人なら信じてもいいって思った。
でもしばらくしてから予想外の言葉が返ってきた。
「何でそう言われたかわかる?」
「ううん。」
何でそう言われたか?考えたこともなかった。
「あのね、人が何かをする時には必ず気持ちっていうのがあるんだよ。それが正しい正しくないはおいといて、その子がそういったのだってどこかmelonに思うことがあったからかもしれないよ。確かに、皆でそう言うのは間違ってるよね。ひどいと思うよ。」
「うん。」
「でも何でそういってきたかわかる?」
「わからない。」
「私も学校にいるmelonを直接見てる訳じゃないから言ってあげられないけど、まずは回りを見なくちゃ。人がどうしてそう思うのか相手の気持ちになって考えなくちゃだよ。それに友達に嫌いって言われたくらい何ともないよ、大丈夫。melonにはおねーちゃんがいるから大丈夫だから。」
━━人の気持ちを考える。━━
そんなことしてきたことなかったな。そうか、そうだったんだ。
私にも悪いところがあったんだ。
そう思われても仕方がないこともあったのかもしれない。
それにおねーちゃんがいてくれるならって思った。
この人みたいに人に優しくありたいって思ったな。
家に持ち帰った気持ちはいつしかなくなっていた。
目の前にいるのは笑顔のおねーちゃんだ。
そしてその前にいるのは笑顔の私だ。