2023/2/23-28の期間、RAYで台湾遠征ツアーを開催した。台中開催の大規模音楽フェス「浮現祭Emerge Fest」2デイズと台北ライブハウス開催の1公演にオフ会2回を加えた行程だった。備忘録的なメモを残します。

 

2/23 台湾入り

2/24 夜オフ会

2/25 浮現祭 DAY1

2/26 浮現祭 DAY2

2/27 朝オフ会、夜ライブ

2/28 帰国

 

■台湾入り前

RAYは4年前に、高円寺HIGHで開催されるシューゲイザー特化イベントTotal Feedbackの台湾編で、台湾遠征を経験している。RAYのお披露目が2019/5→初台湾遠征が2019/10、新体制お披露目が2022/9→今回の台湾遠征が2023/2と、スタート/リスタートから5ヶ月というあたりで不思議と台湾に縁がある。4年前は交通手段、宿も全て我々手配だったが、今回はエージェント側が全て手配してくれ、また音楽とアイドルに精通した通訳が常時アテンドしてくれた。後者の方が当然楽ではあるものの、良し悪しではなく、イベントの規模感や遠征の意味づけの問題と考えるのが良いと思っている。4年前の現地アテンダントバンドも精一杯フォローしてくれたので、現地のフォローは何か困った際にとても重要になる。4年前は英語中心、今回はエージェントが日本語に精通していることもあり英語と日本語の組み合わせで調整を進めた。

 

■2/23 台湾入り

海外遠征では通信手段確保が必須になる。前回はフリーSIM+グローバルWi-Fiだったが、フリーSIMはフリーSIMロック解除などの確認が必要になり面倒に感じたので、今回は運営分3台+メンバー分3台の合計6台のグローバルWi-Fiをレンタルした。空港受取/返却が可能で、受取は窓口の有人受取、返却はロッカーへの無人返却で申し込んだ。受取時、カウンターに想像以上の列ができていて時間がかかったので、次回以降はロッカー受取の方がいいと感じた。

 

現地ホテル着後、ホテル周辺をRAYチームで散策。台湾は夕食どころ、盛場として夜市を認識していたので近所の夜市を散歩したのち夕食、やメンバーはタピオカを摂取していた。遠征通じて頼りにしたのはGoogleマップで、近隣を「コンビニエンスストア」「飲食店」などで検索し、日本語口コミや写真などを見て店の広さ(RAYチームは計8名だったので狭い店舗だと全員が入れない事情もあった)、料理の雰囲気、料理名などを事前に確認して入店した。おっさんはどんな変なものが出てきてもある程度食べるが、メンバーは必ずしもそうではないので事前に料理の雰囲気を把握できることは大事だった。台湾には至る所にファミリーマート、セブンイレブンなどの日本コンビニがあり、日本でこれらコンビニに求めるものはおおよそ同様のものが手に入ると思って問題ない。

 

 

■2/24 夜オフ会

台北から台中にバスで移動。夕方から夜市でオフ会のため、早めに出発して現地を下見。海外でのオフ会は、ネットでの十分な事前調査、アテンダントへの事前相談に加え、下見が必須と感じた。台中は車の運転が荒く、バイクの交通量が多く、また歩道がほぼ存在しないため、集合場所から移動する際のルートや安全性などを検討することもできた。夜市は混雑すると想像し、事前にネットで調べ夜市近所の公園集合とした。GoogleマップのURLを告知ツイートに掲載したので、広い公園でも集合場所の認識誤りなどもなかった。結果として会費徴収や注意点説明などゆったりすることができ正しい選択だった。数百メートル程の夜市を2往復してイベントは終了。

 

 

■2/25 浮現祭 DAY1

朝6時台にバスで会場へ出発。慣れない海外のライブ環境、また野外ステージであることも踏まえリハーサルは必須。セトリ類は3現場共に1ヶ月前に事前提出した。当日はPCからIF経由のLR2ch出力で問題なくPAとも連携が取れた。台湾では最近イヤモニがデフォルトで用意されることが多くなってきたとのことでこの日も使用するか聞かれたが、初めての海外PAにイヤモニを任せることが少し不安だったのと、新メンバー3人はイヤモニ未経験だったため、フットモニターを選択した。複数アイドルが出演するイベントなこともありワイヤレスマイクは用意されていた(4年前のライブではライブハウスに常設がなかったので外部からレンタルしてもらった)。ステージの中音は通訳がメンバー要望を適宜伝える形で進行。出音がとても良かったため特に細かな要望を伝える必要もなくリハーサルは終了した。「please make sound loudly as possible as you can」とだけ最後に伝えたところ、「maybe this is the limit」と言われた。

 

浮現祭は数千人収容できるメインステージを中心に、ステージ規模が段階的に小さくなっていく形で複数ステージが存在する。この日は2番目に大きいステージで、アイドルファンに限らず、音楽ファンも多くいるステージだった。RAYのライブは数百人には見てもらえたと思う。本番中風がとても強くメンバーに少しやりづらそうなところはあったものの、リハーサルと変わらぬ環境でパフォーマンスでき無事終了。この日は音楽ファンもフロアに多いことを想像していたので、アイドルとしてのRAYと音楽としてのRAYどちらも見せられるようなセトリを組んだ。曲が終わるたびに大きな歓声が上がり、曲中も現地ファンがMIXを入れていたり、想像以上の反応・歓迎ムードだった。台湾では和式のアイドル文化が定着していて、MIX・コール・振りコピといった日本でもお馴染みのフロアの光景が広がっていた。あるいは日本より熱量があったかもしれない、「そこでアイドルが歌って踊っていることが最高」という空気感を感じ、それは他のバンドステージでも感じた「そこで音が鳴っていることが最高」という音楽を楽しむとてもポジティブな姿勢とつながっているように思えた。

 

 

ライブ後はチェキ会を開催した。大盛況というわけではなかったが、現地アイドルファンも訪れてくれ、中国語、日本語、英語、ジェスチャーを織り交ぜながら、好意的なメッセージをメンバーに伝えてくれていた。RAYの『Green』Tシャツ(期間限定diskunion特典Tシャツで、よほど熱心に追っていなければ手に入れられないやつ)を身につけて駆けつけてくれた現地ファンもいた。グッズはあまり売れなかった。

 

■2/26 浮現祭 DAY2

早めにバスで会場に出発。この日は通訳がいなかったので片言英語で音響を調整、「About foot monitor, mic No.1 please volume up」とか「About Outside monitor, please make sound more loudly. If it’s difficult you can down the volume of vocal」とかでなんとか形にした。前日のフロアはアイドルファンと音楽ファンが混在していたが、この日はアイドル特化のステージということもありフロアの客層はほぼアイドルファンだった、前日のフロアが数百人として、この日は150人程の入りと感じた。前日のセトリは音楽ファンもある程度意識していたが、この日は大幅にアイドルに寄せたセトリで、現地ではMIXなどのフロアカルチャーが育っていることも知っていたため、そうした楽しみ方もしてもらいたいというセトリを組んだ。日本から駆けつけたRAYファンのMIXを見た現地ファンは「この日本人はどんなオタ芸を打つんだ?」という顔で注視モードだったが、次第に呼応して現地ファンも巻き込んでのMIX、コールが起きた。オタ芸をしない多くの人も熱心に見てくれていたように思う。

 

 

チェキ会やグッズ売上についてはおおよそ前日と同様だった。

 

この日はフェス会場から直接バスで最終日の台北に向かうことなっていた。7時間の空き時間に昼食を取ったりフェスを見学した。現地の人曰く今回の台湾遠征期間は「例年稀に見る寒波が襲った」とのことで大変寒く、我々は例年の台湾の気候を想定しての軽装備だったこともあり、この待機時間でいくらか体力を消耗にしたように思う。ケータリングや程よい待機場所を用意してもらっていたが、自分のコンディションを十全に保つにはこちらが軽食、防寒具など何かしらを持ち込む必要があったと感じる。海外遠征では事前調査でフォローできない例外自体がいくらでも起きる。念の為、これはフェス・エージェント側の落ち度ではなく、遠征につきものの事前調査でフォローしきれないイレギュラー事態であり、起きてしかるべきもの、それを見越してどう挑むかというやつ。

 

■2/27 朝オフ会、夜ライブ

この日のオフ会は4年前に開催したオフ会と同じ会場、早めに到着しこの日も下見をした。朝市に平行して存在する公園を集合場所にし、100m程度の短い朝市のため、途中寺院を皆で参拝し、朝市に平行して存在する公園も散歩した。4年前と異なり通訳がいたため参拝方法を説明してもらえた、4年前も参拝したが何もわからず参拝していたことを理解した。

 

夜の会場は日本でいう秋葉原のような電気街で、家電・ゲームなどのメーカーがショールーム的に出店する大型商業ビルの一角にあるライブスペース。 スタンディング700人ほど収容可能な大きな会場で、ステージも広かった。この日は現地台北バンドのP!SCO、バンドではないがアーティスト枠の春ねむりさん、日本からBroken By The ScreamさんとRAYのアイドル2組、台湾のアイドルRuka Bananaさんという構成だった。台湾ではアイドルとバンドの共演も増えており、主催のMUSiC GEARもこうしたブッキングを多く組んでいるとのことで、アイドルファンもバンドファンもそれぞれをしっかり見て楽しむ空気があると事前に聞いていたが、この日もそうした空気で、目当て以外の出演者も皆熱心に見ていたことが印象的だった。

 

RAYのライブは全3公演のなかで最も反応が良かった。40分の持ち時間で硬軟織り交ぜさまざまなRAYを見せられればと思いセトリを組んだ。フェスで見かけたMIXに加え、メンバーの名前を叫ぶコールもたくさんもらえた(コールは名前を覚えていないとできないので名前を認識してくれていたことになる)。通訳から「下手な英語より日本語のMCの方が台湾ファンは喜んでくれる」とアドバイスをもらい、フェス2日間は英語でのMCだったがこの日は日本語でMCした。その通りとても反応が良かった。物販もこの日は好調だった、多くの現地ファンがチェキを撮ってくれ、グッズもたくさん売れ、日本の1回のライブ以上を売り上げることができた。

 

 

共演した台湾ソロアイドルRuka Bananaさんとも会話できた。活動歴5年になる台湾で最も人気のあるソロアイドルと聞いた(本人から聞いたわけではないです!)。日本人クリエイターのkubotyさんが日本語詞のラウドな楽曲を提供していて、この日はkubotyさんも日本から駆けつけステージでギターを演奏していた。

 

■2/28 帰国

朝ホテルから空港へバスで移動。お土産を見繕い、搭乗手続きを済ませ、無事成田に到着。ポケットWi-Fiをロッカーに返却し、解散した。銀行両替の方がレートが良いとのことで空港では両替しなかった。

 

■最後に

ライブのお客さんの話で言うと親日国なこともあり、とても歓迎してくれたように思う。フロアの好反応のいくらかはそうした歓迎の意味もあったと思うが、それだけでなくアイドルとしてのRAY、音楽としてのRAYを肯定的に捉えてくれた手応えも間違いなく感じており、とても収穫と自信になった。台湾ではラウドアイドルの類はいくらか存在するものの、RAYのようにシューゲイズや激情ハードコアといった振り切った音楽要素を取り込んだアイドルはまだ存在していないとのことだった。今回の遠征では海外で定着しつつある「Alternative Idol」という名称で「Japanese Alternative Idol」と自己紹介を続けた。日本ではいわゆる「楽曲派」の細分化が進みシーンが巨視的に見えなくなりがちだが、海外から見ると大きく既存アイドル/新出アイドル(=Alternative Idol)と見えていることは大事だと思った。

 

今回呼んでくれた台湾のアイドルイベント運営チームMUSiC GEARに「なぜRAYを呼んでくれたの?」と聞いたところ「実際に日本でライブを見に行っていいと感じたアイドルを誘った」と言っていた。自国のアイドルシーンに招待するために現地にライブ調査をしに行き5泊6日の公演を組みアテンドしてくれるというのは並大抵のことではない、現地運営の皆さんから感じた、受けた愛情は単なるビジネス的なものではなく、僕たちが日本のアイドルシーンに対して抱いている愛情やシーンの未来に対する想いと全く同じ種類のものだと感じた。海外からこうしたな眼差しを向けられていることがとても刺激になり、同時にライブアイドル先行国である日本としてできること何かと考えるきっかけにもなった。

 

今回の台湾遠征ではフェスの音楽ファンも見るステージ、フェスのアイドルステージ、ライブハウスのバンド混在ライブ、また2回のオフ会と、全てのイベントにおいて日本では得ることが難しい類の経験値を積むことができたし、自信になった、運営だけでなく当然メンバーもそうだろうと思う。海外遠征の本質は、単にライブをしに行くだけでなく、イベントに付随する不思議な経験値にこそ宿るのだと思った。

 

RAYはもっと海外に行きたい。日本のライブアイドルがもっと海外で公演を打ち、逆輸入的に国内シーンを活性化させたり、海外アイドルの来日公演をサポートしてグローバルなシーン展開をしたり、そんな未来がもしかしたら少し見えたかもしれない遠征だった。

 

RAY、海外呼んでください。