眠るひと | くずかご。

眠るひと

「レクイエムでもかけようか」
そう言って彼が笑ったので、私はとても、面白く思った。
「これから寝るって人に、ずいぶん縁起悪いね。」
私は眼を閉じてそう言って、襲ってくる眠気に耳を傾けた。
「だからだよ。君が僕をおいて寝ようとするんだもの。」
「そっちは朝でしょう。なに、『怒りの日』とかかけてくれやがるわけ。」
「いや、『涙の日』」
「超縁起悪い。」
目の前が暗くなったので、私の唇は自動的に「おやすみ」を呟き、私の指は通話の終了を押した。
彼の「おやすみ」を聞きながら、私はその声が朝までずっと続けばいいと思った。
私はその秘密を知っている。
知っているのと、実際の行動はまた別の話なので、私はゆっくりとどこかに沈んでいった。

彼のおはようを聞くために。