今までの人生で5本の指に入る感動体験だった。
沖縄は10回近く降り立っているものの、国際通りはどこもB級グルメとはいえそれにしても小汚い雑多な居酒屋しかないイメージで、沖縄料理自体、全くもって惹かれなかった。
よって、那覇では専らカフェ、旅行の際は名護の辺りのブセナテラスやヒラマツにステイしてラグジュアリーホテルを楽しむことにしていた。
まさかこんなすごい店が那覇の、それも国際通りにあるとは。
きっかけは、昨秋の可愛い友人との沖縄旅。
もちろん小汚い居酒屋なんざ見向きもせず、ホテルステイ後空港直行だったのだが、最終日少しだけ時間があまり、国際通りを僕がドヤドヤと案内したのだ(少々うんざりしていたように思う、ごめんよぅ)。
その道すがら、突如異質なガラス張りの店を見つけた。
それがこの店
絶対いい店じゃないか!なにここ!
と目を奪われつつも通過し、絶対次の那覇訪問時に利用しようとチェックしていた。
意外にもすぐ、那覇に野暮用ができ、そのご褒美にと予約した。
1人なのでゆったりと味わうぞ、沖縄、琉球のコース料理を
泡盛もあるが、ちゃんとワインもある
スペイン旅をしてから、馬鹿の一つ覚えみたいにカヴァばかり飲んでいるが、キリッと辛くて食事の邪魔をしない。
メニュー
店主さんは、品のいい若い男性、ホールには派手さと棘の抜けたデヴィ夫人のような華やかで優しい女将さん(失礼だったら申し訳ないが、僕は割とデヴィ夫人のファンなのだ)。
インスタで目にした素敵な接客、この女将さんに会ってみたくて訪問したのもある。
まるで能楽堂、演舞場を意識したカウンター、料理はおもてなし、食事だけではなく器や配膳、食材の背景のストーリーなど含め、舞台と思って楽しんで欲しいとの説明さながら
なお、いい意味で店内が暗いので映えないが、実物は百倍美味しそう
泡盛製造過程で作られるもろみ酢
泡盛は苦手なのだが、これは美味しい
黒糖みたいな深みのある甘さで、全然ツンとしない酢だ
リンゴ酢とか酢は身体にいいよね
前菜
くこの実の乗ったもずく酢、
ジーマミー豆腐、
(この日は田いもではなく)紅芋唐揚げ、
かじき(ごぼうではなく)巻き、
からしな白和え(ニガナではなく)、
緑のはハンダマ(という沖縄の葉野菜)のかまぼこ
ちなみに、今回はなかったニガナは、長生草といい、八重山名産、肌への効用から資生堂ともコラボしているとのこと(女将さん)。
どれも初めて、けど癖がなく、癖がないのに唯一無二で、品がいい、甘みでも辛さでもなく素材の良さと旨味で楽しませようという調理方法が随所に感じられる
何より、もずく酢の琉球ガラスといい、器が素晴らしい
お造りの美しいこと
メバチマグロ、
セーイカ、
ミーバイ、
海ぶどう
沖縄って魚は残念というイメージで、以前ホテルで食したミーバイも大味だった
こちらのそれは、臭みの欠片もなく(血抜きを徹底し、敢えて寝かせるなどし臭みを消しているとのこと)、甘み醤油がもったいなく塩で楽しむべき
クーブイリチー(昆布の炊いたもの)
ミヌダル(黒胡麻で豚を包んだもの)
昆布はよろこぶ、お祝い事の際に使われる食材なのは周知の通りだが、沖縄では本来採れないもの。なのだけど、北海道松前藩の頃、日本海を長崎経由で船で運送され、中国への贈り物(華夷秩序だね)にされていたと
すごいね、日高利尻の名産が、遠い海を下って。
シャクシャインの頃に思いを馳せながら、箸を進める
1人だからこそできる贅沢だなぁとつくづく
昔、よく実家で食した昆布の炊いたのに似ていたがもちろん別格
この黒胡麻と豚のミヌダル、美味しかったな
カヴァの次は
キャッチアンドリリースという可愛いワインを
揚げ物は
島らっきょう
ゴーヤ
ナーベラー
メカジキ
と、、何だっけ?白身、、しちうまい?
これが美味しかった!
ナーベラー、茄子のようにジュワッと汁が溢れる油との相性抜群の野菜
いい時間すぎる、、
箸休めは、先程も出てきたハンダマのお浸し
そして1番楽しみにしていた白味噌仕立てのラフテー
もうね、皆のご存知のラフテー、角煮とは全くもって別物
まじまじと器を眺めていたら
料理人兼器マスターの方が中から出てきて下さった。
たくさんの器を前に並べて、輪島塗りなどとの違い、柄の部分が凸になっているのは全てこの琉球漆器の系譜であることなど、丁寧に解説してくれた
そして予想外過ぎたじゅーしー
じゅーしーとは、炊き込みご飯
正直、日本料理の炊き込みご飯って、the顆粒だしと酒と砂糖の味!なやつが多くて要らないなと思っていた。普段から米を食べないこともあり、パスしようと思っていたが、しなくて心からよかった。
何この、粒一つ一つに昆布の出汁と甘みが染み込んだ、そしてもちもちの米
さらに驚いたのが汁物(イナムドゥチ)
これも普段は、ほぼ汁ばっか、どぎつい味噌の方が多く、終盤に抑揚のない汁物いらんわ、と思っていた。
具沢山すぎる、とろみがポタージュのような白味噌(酒粕も入っている?)
これだけでもご馳走
縁起物の海老があしらわれた漆器が立派で
ちんすこうも、いわゆる空港ばら撒き土産のそれではなく、ぜんざいもまた
気づけば最終のフライト時間が迫っていた
シェフと女将さんのお話を中断する心苦しさと後ろ髪、痛くて引かれすぎて身体ごとちぎれそうな思いで駅まで走った
「おかえりなさいを言わせてください。待っています。」
終始優しかった女将さん。
2時間のフライト中放心していた。
それくらい素晴らしかった。
必ず、年内に行きます。他に用事なくても。
本当に素晴らしかった。