楽しみにしていた都市の1つ、ビルバオ。
バスク地方最大の都市。
ピスケー湾に面していることから、かつては造船や鉄鋼業がさかんだったが、重工業自体が衰退していった近代、街全体が不況に陥ってしまった。
そんな中、”アートプロジェクト”、芸術で都市復興を図ろうという動きが広まり、文化・芸術とそれを目当てにする観光客を取り込んだ第三次産業で、街は再び活気を取り戻したのだとか。
グッゲンハイム美術館が有名だが、その他、街の至るところにアート、芸術を感じる。
なお、ここでも添乗員さんに感謝してやまない出来事が。
自由行動、離団は基本的に認められてはいるものの、僕がスペイン、バスク地方初めてと知った添乗員さんは、
待ち合わせ場所で合流できないことを懸念して、
「初めてのビルバオで、無事集合時間に戻ってこられるとは思えないので。昼食と、その後の観光で合計3時間ありますが、皆での昼食時間1時間の間のみの自由行動にしてください。もつ鍋さんを私、探しきる自信がありません。」と僕に告げた。
ビルバオで、あそこも行きたい、ここも行きたいと、半年前から計画していた僕、泣きべそをかきそうな顔で
「どうしてもダメですか?どうしてもなら、我慢しますけど、僕、地図も頭に入れていますし(実際事前におよそ地図は覚えている)、必ず待ち合わせ時間10分前に戻りますから。」
と、懇願した。
バスがビルバオ中心地に着いた瞬間、添乗員さんが僕にそっと紙切れを渡した。
そこには、こう書いてあった。
「グッゲンハイム美術館 パピ(子犬のオブジェ)の前 16時45分」
!!!!!!!!!!ツアー客の管理責任との狭間で、きっと悩んだであろう添乗員福世さん、
悩んだ末に、3時間の自由行動を許してくれた。
そして、僕にこう言った。
「パピの前なら、分かりやすいかなと思って。皆さんきっとその時間記念写真を撮っていると思うので、急がなくても大丈夫。パピの…頭でも尾っぽの前でも、どっちでも。見つかるでしょう。」
泣きそう。ありがとうありがとう。
そして、僕はぐんぐんと予習通りに。
お。「CAFE IRUNA(カフェ・イルーニャ)」
スペインと言えば、かつてイベリア半島にイスラーム王朝が勃興した頃から始まり、レコンキスタ(キリスト教の国土回復運動)によってナスル朝のグラナダが陥落するも、その後もイスラームの影響、文化が色濃く残ることは有名。
そんなイスラム文化の影響の濃ゆい、ネオムデハル様式の内装で有名なのが、こちら。
店前のおじさんもオシャレ。
あいにく、行きたい店があったため通過。
スペインのランチタイムはジャスト正午ではなく、14時頃なのを体感。
超賑わっている。
さすが、バスク一の都市。
今回の旅でも、何一つ身の危険を感じるような体験をしなかったが(もちろん、細心すぎるほど手荷物には用心したし、工夫もした。数回目の海外旅行で油断して痛い目に合うのは、愚の骨頂)、評判通り本当に治安がいいことを痛感した。
グッゲンハイム美術館がビルバオの最北、中心街がモユア広場、そこから放射線状に道が伸びて、南の方に、ランドマーク的大聖堂や名物市場が並ぶ。
順に歩くぞ~。
この川の名は。
珍しく、そのまんま「ビルバオ川」!
橋を渡ると旧市街。
早速、歴史ある建築物が。
El Teatro Arriaga(アリアガ劇場)
1890年開場のオペラハウス。1200人収容できるらしい。
建築様式の違いは、昨年のベルギー、オーストリア辺りで学習し、だいたいわかるように。
これは、ネオ・バロック様式※。
※19世紀半ば、ナポレオン三世の第二帝政期フランスで始まったもの。左右対称の外観と豪華絢爛な装飾が特徴。
旧市街は、バルやカフェだけでなく、服飾のお店もたくさん。
窓サッシがかわいい。
旧市街にチラ見えする荘厳な尖塔が。
Santiago Catedral(サンティアゴ大聖堂)
サンティアゴと聞いて、お?と思う人は、それなり以上博識が高い。
そう、キリスト教三大聖地※の1つである、スペイン北西部の都市、サンティアゴ・デ・コンポステーラの大聖堂にちなんだカトリック教会。
見た目から明らかなとおり、ゴシック様式。
※残りは、ローマ、エルサレム。
ここで、ちょっとショックなことが。
ビルバオで1番楽しみにしていた、バル「Gure Toki(グレ・トキ)」が店休日だと、直前に気付いたのだ。
しっかり「水曜定休」と書いてあったので、完全にリサーチミス。
こちらの、イディアサバルチーズ※ときのこのスープと、ピリ辛ボロネーゼを詰めたナス焼き、クルマエビと野菜のロール揚げが、あまりに見目麗しく、絶対食べたかった。残念だが、次回必ずやという思いが膨らんだ。
※生のそれは、バスク地方でしかいただけない、羊乳のチーズ
ちなみにイディアサバルチーズのスープは、この本の表紙のこれ↓ 目が覚めるようなビジュアル。
https://books.rakuten.co.jp/rb/17733955/
さて、切り替え早く、先を急ぐ。
おや?
楽器隊がやってきたよ。
日本でいうちんどん屋さんとは全然違う。
街の人たちが楽器隊に嬉しそうについて行ってる。
それも、見て欲しい。待ちゆく人、ほとんどが同じ青いハンカチーフをつけている。
この青いの、入り組んだ迷宮のようなビルバオの石畳が描かれ、「Bilbao」の文字の入ったスカーフなのだ。
ビルバオの人たちは、本当に自身の生まれた街を愛しているとは聞いていたが、それを肌で体感した。
日本人が日の丸のスカーフをつけて街を歩いていたら、何だか思想的バイアスで見られそうだし、東京都のイチョウのマークのスカーフなんて持っていたら「どしたの?」と思われそうだが、ここではそんな疑問さえ湧いてこない。
楽しそうな隊列に、僕も参加してついて行ってみた( ◠‿◠ )
だんだんと、音楽が速くなり、みんな身体を揺さぶり始めた。
そして、ここでもう一つ身をもって、予習のとおりだと感じたこと。
排外主義的な空気が全くない。
この旅を通して、ほぼ全く、日本人、何ならアジア人にさえ遭遇しなかったが、ぽつねんと一点、街に佇む日本人の僕に、誰もが優しかったのだ。
この隊列でも、目が合うと、みんな自然とにっこり。
そしてついに、路地の真ん中で、みんな派手に踊り始めた!!
おじさんもおばさんも、楽しそうに手を取り合って。
おじいちゃんと孫なのか、肩寄せ合って踊っている。か、かわいい!!!
何この光景。僕、1人もう顔がにやけてたまらない。というか、泣きそう。
音楽隊を名残惜しく見送って、さらに南へ。
グレトキに行けなかった代わりにこちらへ…と目の前までは来たものの、やめておいた。
なぜって、この「Mina(ミナ)」、10品120€からのコース料理のみ提供の、1ツ星レストランでして。
予約なしで入れるのか問題もあるが、僕はこの旅一番の目的、某三ツ星レストランを翌日控えていたので、
予算の関係というより、専ら腹具合のコントロールの関係で、それまでは軽めに済ませたかったのだ。
しかし、予習する限りこちらも実に素晴らしい。
次回は絶対、ビルバオ、サンセバスチャン、サンジャンドリュズ、オンダリビアとバスク地方に絞って長期滞在し、グレトキもミナも訪問するとしよう。
このミナの川向うが、ちょうどリベラ市場なのだ
市場と言っても、築地市場のような鮮魚祭りではなく、やはりバルがひしめき合っている。
ここで食べ歩きするのも観光客に人気のコースのようだ。
なので、ちょっと入ってみることに。
おお、かなり広い。
こんな感じの店が何十とある。2フロアに渡って
定番のクロケッタのピンチョスなどがたくさん。
でも、ここで食べるなら、やはりあの店に行こう、そう決めていたので、見学のみで退散。
再び旧市街に出ると、また楽器隊に遭遇!
やっぱりみんな楽しそうに踊って歌っている。
先ほどのアリアガ劇場の前で、素敵な光景に出会ったので、思わず激写。
おんなじ青いビルバオスカーフの仲良し五人組おばさんが、写真撮影をしている。絵になる~。
同じ衣装だが、何の集まりなのだろう。
ちなみに、歌舞伎座の前でおばちゃんが記念撮影していても、立ち止まりさえしないと思う。
そしてモユア広場近くまで戻ってきた。
ここにも有名な建築。
いも虫のような、という描写が嫌だが、特徴的ガラスドームが有名なこれ、メトロの入り口なのだ。
建築家(ジョディーフォスターならぬ)ノーマンフォスター設計。
これまた近代的な建物。
PRIMARKというデパートのよう。
こうしてみると、本当ビルバオは都会。
この辺りなんか、丸の内のよう。
なお、丸の内みのある街並みは、プラハの旧市街にも、ブダペストのペスト地区にもあった。
この流れている音楽、40代の人はジェニファー・ロペスのクラブ音楽で知っているだろう。
50代60代は、石井明美のランバダの名前で知っているかと。
「Diputacion Foral de Bizkaia」(ビルバオ市役所)。
そして、右に見えるのが、おおお!!
もしかして!
これが見たかったのだ。
同じくビルバオを誇る建築。
ビスカヤ県立図書館。
30万の蔵書を誇る、6階建ての大型図書館。
ガラス張り部分は、世界中200の言語のフレーズをシルクスクリーン印刷しているそうだ。
すげぇぇぇ。
くるっと回ってみた。
残念ながら、こちらも休館日だが、外観を拝めただけでも十分だ。
あれは、裁判所のようだった。
さすがに腹ペコ。
目当ての店が図書館の目の前。
超有名店だけあって、混んでる~。
外に、ほんのり列が。
すみませ~ん、並んでるんですかぁ?
と聞きたいが、そのスペイン語訳が分からない。
腹ペコで、調べるのも面倒なので、店内に押し入ることにした。
ダメなら、むんずと掴まれるだろうし。
これが正解。
ここで、スペインバル豆知識。
日本人はとかく並ぶのを厭わないというか、並びたがるというかだが、スペインのバルでは、どんなに混んでいようが、順番はあってないようなもの。躊躇っていると、いつまでも注文できない。
これは、この日の夜のサンセバスチャンでも体感した。
こちらは、世界一の生ハムの名店。
La Vina del Ensanche(ラヴィーニャ・デル・エンサンチェ)
はいはい、スペインといえばパエリアに生ハムだもんね~的にふわっと捉えないで欲しい。
1927年創業の家族経営バルであるこちらの売りは、最高級イベリコ豚を製造する老舗加工会社ホセリート社の生ハムを使ったピンチョス。
日本で食す生ハムとはもう全くの別モノ。乾燥サラミとサーロインくらいの差がある。
ちなみに、先日某都内百貨店でホセリート社の生ハムを見たが、空輸の問題かもうカピカピ真っ黒だった。
この写真からもきっと少しは、違いが伝わるだろう。
イベリコ豚のコッパ。首肉を使っており、ゆっくり熟成させることで旨味が凝縮されるという。
口にしたことのないとろける美味さに目が飛び出そうになった。
大混雑の中、カウンター席をゲット。
優しい淑女のお客さんが、僕の空いた皿を下げてくれたり、お客さんからの思いやりもとても沁みた。
あまりに美味しくて、同じものをおかわりした。
生ハムの老舗なので、この2個食いは正解。
欧州といえど、巷の店のパンは決まって業務用。こちらのは業務用かもしれないが、とにかくガリゴリ音がするほどクリスピーに仕上げてあり、そこもまたたまらなくて。
生ハムも、日本に持ち帰れないのだけれど、こちらの店は奥に販売所もあるのだ。
ここに僕、いたのかぁ。しみじみ。
目の前のものを指さすだけでなく、黒板メニュー(熱々のものが多い)を頼んでみよう。
もじもじ。
い、忙しそうだなぁ。
す、すみませぇん。
しかしやはり生ハムのこちらが売れている。
左の、カスクートサンドのようなものも美味そうだったが、さすがに生ハムサンド3個食いは芸がないなとやめておいた。
2個目のコッパを左において、3皿目の名物が出来上がるのを待つ。
1個バゲットが置かれた後、なぜか途中でもう1個入れてくれた。サービス?笑
早く来ないと、もう1個頼んじゃいそう。
食いついてしまいそう。
きたきた!!!
フォアグラ、きのこ、卵、ポテトピューレのピンチョス。
ミニパンに入って、熱々。
ポテトピューレは、生クリームとバターかな?で溶いてある。
バゲットをつけて、と。
う、なんだこれは。
ポテトピューレがうまい。
初めて食べる味!この組み合わせ、とっても合う!
図書館のシルクスクリーン印刷。
本当に文字がたくさん。
かっこいいなぁ。何時間でもいられるな、こんなかっこいい図書館。
ありがとう、ラヴィーニャデルエンサンチェ。
モユア広場。超いい天気だな。
雨天が基本のバスク地方なのに、旅の間中、天候に恵まれた。その分超日焼けしたけども、日本で望まないお出かけや仕事で日焼けするより数億倍いい。
ループ、海外でも乗ってる人多いのな(というか、海外発祥のもの?)
おや、ループ不具合かい?
そして、先ほども通った芋虫フォルムの地下鉄。
芋虫って、漢字の字面だけでも気持ち悪いのでなるべく書きたくないのだが。
で、と。
お腹を満たしたところで、ビルバオ1の目的地へ、お茶を飲みに行こう。
Hotel Carlton(ホテル・カールトン)
★★★★★
はいはい、リッツカールトンっしょ?と思った人、是非とも利用しないでいただきたい。
リッツカールトンは今、JWマリオット系列だが、全然違う。
なお、マドリードにはホテルリッツもあるが、こちらも違う。
加えて、ホテルの星★がどうついているのか、レストランの星はどこがつけているのか、
そもそも星幾つまであるかわからずに、ただただ「星付きホテル~」みたいに言っている人が多いように思う。
以前、激激美人セレブの友人が、「5つ星レストランにつれてってやるよ、とかいう男性、もうその時点で無理~」と言っていた。
そんな高飛車な女性こちらから願い下げだ、という男性や、眉をひそめるオブスの女性もいるだろうが、僕は彼女と同意見。知らないことよりも、己の無知にさえ気づかずイキっていることが恥ずかしいと思う。
※一応書くが、レストランはミシュランがつける。3つ星までしかない。ホテルは、国によって格付け機関が異なるので基準も異なる。5つ星まである。
そんなこんなで、ツアーゆえ泊まるホテルは選べないので、せめてお茶だけでもと5つ星を貪る。
先に書いたが、本当に4ツ星から5ツ星のグレードの飛躍がすごい。
エントランスから廊下。
クロークスタッフのホスピタリティを測りたいのもあって、毎回敢えて、喫茶の場所をスタッフに聞くことにしている。
カールトンの喫茶は小さめだった。
あとで行くサンセバスチャンのマリアクリスティーナと比べると、ちょっと見劣りするがそれでもサービスは五つ星。
50代くらいの貫禄のある男性スタッフが、とてもにこやかに案内してくれた。
アイスコーヒーは、ホットコーヒーを氷の入ったグラスに注ぐシステム(名古屋喫茶と同じだね)。やり方が分からずもたついていたら、やってくれた。ありがとう。
なんだかんだ2時間半くらい歩き回っていたから、涼しいし落ち着く~。
会計時に、この旅初めてカード払いをした(現金を念のため11万円ほど持って行ったが、結局カードは以後使用せずに済んだ。いろいろ食べて飲んだ割には安く済みすぎ)。
「ジャポネ?(日本人)」
おじさんスタッフがにこやかに僕に声を掛けた。
「Si.(はい)」と言いつつ、嬉しくて口角が耳まで裂けそうだった。
僕は日本でこんな仕事をしていて、カールトンもずっと来たくて…とか喉まで出かかったけど、待ち合わせ時間が迫っていたので我慢した。
しかし、エントランスの、豪華絢爛ながらも華美過ぎずクラシカルな色合いは、さすがの五つ星。
天井がドーム型ステンドグラスなのも、ヨーロッパの五つ星ホテルエントランスにありがち。大好き。
さようなら。また、伺います。
さてさて。グッゲンハイム美術館のパピ前へ行かないと。
(正面右から2番目が今いたカールトン)
すっごい真白で綺麗な、超極細ゴシック様式の教会がある。
ノー予習なので、名称が分からない。
そうそう、今更ながら、この旅、実は1人じゃなかったのだ。
ずっと外を見せてあげられてなくてごめんね。
…といって、鞄から顔を覗かせてあげた途端、まさかの、僕の手が滑り、地面に頭をぶつけさせてしまった。
「痛いっぴ。汚れたっぴ。」
ばっちぃね、、ごめんねごめんね。
痛いの痛いの、飛んでいけ〜をしてあげた後、顔をはたいて(帰国後、手洗いしてあげた)、
名もわからぬ教会の前で、ハイっポーズ!
見聞が深まるっぴ~!
Arrese(アレセ)という地元で有名なパティスリー。
真っ赤な外観、かわいい~!
プティフールが有名だそうだが、店内に入ってそんなに惹かれなかったのと、翌日にしこたまスイーツを買う予定があったため、パス。
グッゲンハイム美術館が見えてきた。
よく見ると、街路樹がほっそいね。
どこかの企業のビルが、超かっこいい。
あんなフォルムのビルで働けたら、気持ちいいだろうなぁ。
パピは、これのこと。
子犬の超どでかいオブジェ。
ちゃんと待ち合わせ時間に10分前集合したよ、僕。
しかし、よかった心からよかった離脱して。充実の3時間だった。
僕も皆さんとともにグッゲンハイム美術館とパピの前で記念撮影。
ビルバオの信号は、赤になるまでの時間が表示される。
パピ、よく見て欲しい。
全部花でできているのだ。
なので、季節によって色が変わるそう(植える花によって)。
腐れないよう、中で水が回るようになっているようだが、すごい装置だね。
見る位置によって違うフォルムが楽しめるグッゲンハイム美術館。
さて。17時。いよいよ、サンセバスチャンの街へ!