想い溢れすぎるとなかなか文字にできない。
が、そういうものはだいたい一周まわって、あまり語らない方がいいと思うに至るもので


「想い」はもちろん独りよがりであり、爆発しそうな感動の整理のために書くものだが、第三者に発信したとて、そのまま僕の感動を喜ばしく受け取ってくれるとかなかなかあるもんじゃなく。
とんちんかんな返しや、そういうこと言いたいんじゃなかったのになー、が返ってくるとモヤモヤするというわがまま四郎なので、書かないに限る





といっても、多少は書く



辻仁成先生の個展は2回目

まさか、予約が取れると思わず諦めていたがまさかの取れて、フラァっと訪れた暑い日




辻さんの音声ガイドをスマホで聴きながらまわる。

絵画って本当に難しい。小説より難しい。

これを見に来たファンの方の、一体どれほどが、いろいろと理解して見ることができたろう。

そもそも絵画において「理解」とはなんだろう。

漠然とした「なんか、すごーい」「やっぱり辻さんだわぁ」で、いいのだろうか


そんな歯痒さも覚えつつ、歯痒く思うだけましかと思いつつ。







そしてツアー初日

やめるやめる詐欺ではなく、本当に「引退」とのこと。少なくとも公の場でのライブは。

僕が初めて辻さんのコンサートに足を運んだのは、ついぞの昨年だというのに。

昨年の名古屋、六本木exシアターが回想される








いい席すぎる

真前、3列目



ちなみに全通したが、4公演とも幸せなことにほぼ3列目以内の中央だった



エコーズ時代の曲メインに、ソロ曲まで、それはそれは豪華だった。

1年前まで、zooと少ししか知らなかった僕も、いつしかソロ曲のみならずエコーズもほぼ分かるようになっていた。



♪愛されたいと願っている


泣けるな







この日は驚くべきことがあった

「サボテンの心」を歌っている辻さん、突然動揺し始めた

何かと振り返ると、客席がものすごいざわつきを見せていた


その中央に、赤と黒の女性が立っていた


その女性、じわじわとステージに近づき、そして上がった



加藤登紀子さんだった



辻さん、本当に素で存じなかったようで、怖がっている様子が見てとれた

僕も暴漢かと思って、こわばった顔で振り返ったが、赤と黒のジャックのような人物は、オーラを放ち狂った只事ではない大物だった



サボテンの心は、辻さんの曲を加藤登紀子さんが好んでカバーしたのだ

それで、席で歌い始めた加藤さん、連れのスター(後述)が促したのか、周りの客かはたまた自主的か、ゆるりゆるりとステージへ向かったとのこと



そして気付いた辻さん、加藤さんを招き入れ、

「歌詞わかりますか?」と問いかける


すると辻さんの耳元で何か囁く加藤さん


このやりとりと粋な返しがもう映画のようで


「あなたの口元を見て歌うから大丈夫」



そして歌いきり、降りる際、加藤さんはこう言った

「辻さん、あなた、これから始まるんだから」




引退コンサートでのこれ以上ない花向けの言葉




その様子を辻さんが綴っているので見てほしい





2日目、3日目も言葉にならなかった




初日の帰り、客席で加藤登紀子さんと、残りのメンツを見かけた

昨年もお見かけしたが、もう見ただけで倒れ込みそうなオーラ

僕の平素の悩みなどゴミのように思えた




辻さんSNSから引用



コシノジュンコさん

辻仁成先生

加藤登紀子さん

湯川れい子さん




こんな方々が訪れる辻さんのライブなのだ



帰りしな、加藤登紀子さんの「灰色の瞳」と湯川れい子さん作詞のゴスペラッツ「まさか赤坂SHOWTIME」をひたすら聴いた

どちらも好きでならない












こんな歌詞が紡げ、そして歳をとるほど噛み合わないコミュニケーションが難しい方が多い中、未だに30代と変わらないコミュニケーションをSNSで展開し、気丈で聡明で何より生き様も姿もカッコ良い先人たち

僕も頑張ろう、歳をとるのも悪くない














最終大阪、楽しそうな僕も写っている




いやぁ、お腹いっぱい

これでおわりじゃない、加藤登紀子さんのおっしゃる通りこれが始まりなのだけど、ひとしきり辻仁成の有終の美を吸い尽くした夏だった

ありがとう

素晴らしい視座を