万人ウケするアクション、"優しい笑い"のコメディ、不誠実な性生活の人ほど何故か好む純愛モノ映画、みんな反吐が出そう。
だから"北野武監督作品は全作観るが原則それしか観ない至上主義"を長年貫いてきた。


今年はそういったfixed ideaを崩してみようと、気になった映画(配信含む)を貪り観ている。



以下、なるべく端的に感想



①「月曜日のユカ」
 ここまで誰の気持ちにも感情移入できないのは、時代が違うから、だけではない気がする。
 ただ、どんなにドライでシュールで残酷でも、昨今SNSに蠢く怖さより、よほど皆真っ直ぐシンプルな生き方で小気味いいなと思った。
 多様性や"優しい笑い"、正義の鉄拳制裁がお好きな今の時代、完全アウトな価値観も多分に含まれていると思う。下記予告編に出てくるユカの母親の発言も然り。
 僕はそんな今の時代の方が大嫌いだ。悪魔の心根を持っているくせに、都合よく正義を振り翳す奴らばかりで。
 あ、造形に手を加えていない加賀まりこの突き抜けた美しさは言わずもがな。







②「レオン」
 stingのshape of my heartは、あの頃の僕が毎日朝3時半まで居座ったイタリアンダイニングで1時頃から流れていた曲で、聴いては涙していたが、映画そのものは観たことがなかった。
 今回、観たことを後悔するくらい切なかった。レオンがパペットを使っておどけるシーンを反芻しては涙。
 最近の映画、役者にも、ここまでの域のものあるのかな、いるのかな。ないだろうな。




③「ポトフ」
 とにかく"うっほー美味そー、そして観終わったあと腹減った〜"という、大食い動画やグルメ番組観とけよ的な、阿呆みたいな感想だけは絶対に抱きたくないと思っていた。
 ラストが「?」というコメントが多いが、そうだからこそ、ただの飯うま映画じゃなく仕上がっている気がする。

 馬鹿舌じゃなく、心から食を愛し思いを馳せ、貪欲に詳しくなりたいと常々思っている人にだけ観に行って欲しい。

 なお、その夜の夕飯はポトフにした僕は馬鹿舌ではなく。











④「サンセバスチャンへようこそ」
 平素、職場のさながら老人倶楽部な様相に辟易としているが、こんな滑稽悲哀に溢れる老人なら温かく愛しく思えそう。かなり笑った。
 残念だったのは、僕の映画素地が無さすぎて、ウッディアレンを知らなすぎて、彼の仕込んださまざまなオマージュどれひとつ気付けなかったこと。よし、もっともっと…。



※ここが、こんな美しい映画館だったとは知らなかった。











⑤「DIVA」
 曲を知ったのは3年前。
ただ映像と音楽を味わう作品と思っていたら随分と展開が違った。
 助けつつも、愛や友情に基づいて動いているとも思えない不思議な人間関係、殺風景な部屋の真ん中のバスタブと青色、たぷんと揺れる(あれなんだっけハーバリウムみたいな)置物、傘、そして美しい映像と音楽。心なし北野作品と重なった。