ほぅら寒そうだろう。
おじさんも黄昏てる。
ただ実際は、さむみを恐れ狂って防寒布だるまで行ったので1ミリも寒くなかった。
さて。
2度目の盛岡。
前回で宮沢賢治、石川啄木は飽きてしまい、焼肉屋の肉は質が悪く、福田パンはやたらでかく、20時代に終電がないことに焦りビビり狂った(こんなとこで絶対終電逃したくない!泊まりたくない!と)ので、もう今回の目的は喫茶のみ。
前回も通ったこちらをチラ見。
…ちょっと入る勇気がなくてスルー。
この左側にワルツという素敵な喫茶もあったが、この先を左折した別の店と決めていたゆえ、ターンレフト。
こちら。
喫茶店文化の盛岡にありつつ、コーヒーではなく紅茶専門店、珍しい。
一階にグランドピアノ。
僕は二階へ案内された。
事前情報だと、男性店主とのことだったが、女性2人だった。マスターの奥様と娘さん、もしくはアルバイトさんかな。どちらも品が良く美しい。
こちらの1番の売りはスコーンとのこと、もうスコーンとジンジャーティーにしようと予習バッチリだったのだが、入店直後から店いっぱいにブワッと香るスパイスに、気持ちが揺れた。
お姉さんにどちらがオススメか問うてみた。
心底この店が好きで、この店の味を愛しているのだろう。
こんな難しい質問はないといった風で、困り顔を見せた。
と、僕が優柔不断フル発揮しているうちにラスイチスコーンが出てしまったとのこと。
申し訳なさそうにするお姉さん。
いや、むしろよかった。
このままあと30分でも悩むところだった。
これでカレー(かりかりトーストの方)に絞ることができた。
どの席も魅力的で、レトロなのにちゃんと清潔な古民家カフェ。
ちなみに、メニューにかりかりトースト、とあるが、なんて謙虚な書き方なのだろうと思った。
なぜって、これ全部ついてくるから。
カレー、ココット、カリカリトースト3枚、ピクルス、ラッシー、そしてダージリン。
カレーはトマトが結構入っていると聞いていたので、酸っぱいのやトマトソースがそんなに好きではない(食べれなくはないがガツンと濃ゆい方が何でも好きな舌なので)僕は憂慮していたが、杞憂だった。
ほろほろの牛肉や豆が、挽きたてだというスパイスとトマトと馴染んで、旨味優しくもしっかりガツンとしている。
ココットって、ココット皿って意味で使うけどチーズ焼きみたいな意味だよね。
ベーコンとたまごとブロッコリーだったかな、入っていた。
あっつあつ。
これをかりかりに…
3枚なんて食べられるかな、と謎に少食アピールをしたところお姉さんが
「本当に薄いパンなのですが、、2枚にしますか?」と。
いえ、3枚で大丈夫です。
大丈夫でした!
バターしみっしみ。
これはかりっかりだ。
平素、焼き過ぎくらいのガリガリが好きな僕だが、このしみしみをキープするには絶妙にこの焼き加減がいいのだろう。
あったかい店内。
なんていい時間。
カレーとかりかり、ココットとかりかり。
ココットも美味しい。
一階に降りる階段がなんとも言えぬ。
そうそう。
スコーン売り切れと聞いた時、「今から作れば30分はかかりますが…」と言われたので、さすがに腹ペコで待てないと思いつつ
「お土産にはできますか?」と聞いていた。
なのにまたまた謎に僕は、お姉さんの念押し「テイクアウトされますか?」に対して、
「ちょいと考えます。」と保留の意を示したのだ。
なぜか。
お土産って言っても、僕はすぐ食べてしまうと思ったから。
もともとランチはなるべく食べない(それこそスコーンとドリンクくらいの量)僕、かつ旅先で乗り物に乗る前はなるべく食べたくない僕(腹一杯で酔うのつらいので)だが、焼きたてを食べないなんてできない。
加えて、2024年の目標の一つに「歩き食べは下品だからもうしない」というのを立てたものの、せっかくの出来立て焼き立てを持ち帰る方が作り手への冒涜、マナー違反な気がする!という想いが沸々と。
そんなこんなで?自制のためにも保留したのだが、階段を降りたら意思薄弱フル発揮。
すいません、スコーンお願いします!
奥様「わ、嬉しい。もう焼かないつもりだったんですが、さっき残念がってらしたと聞いて、念のため焼いておいたんですよ。」
ぇぇぇぇえ?感動。
奥様がそういうや否や、ぷっくりスコーンがオーブンから顔を出した。
先ほどのお姉さん、ちょうど賄いタイムで、もぐもぐ美味しそうに賄いを食べつつ、僕をみて優しく微笑んでいる。
熱々スコーンの湯気を逃しつつ包もうとする奥様に「あ、すぐ食べるので笑」と声をかけたところ
じゃあ、ここに座って召し上がっていって。
クロテッドクリームと自家製ママレードも出します、と。
うわぁ。
奥様、「焼き立てだから美味しいだけよ」なんて謙虚な笑みを見せたが、新幹線でつい貪った時も美味しかった。間違いない。
甘くないスコーンを謳っていたが、本当に甘くない。
夢中すぎてクロテッドクリームとママレードの写真は撮り忘れたが、お酒を垂らしたクリームと苦味としっかり甘味の効いたママレードを両方乗せてこそ完成するさっくり優しいスコーンだった。
いい時間だったなぁ。
次盛岡に来ることがあったら確実に直行する。
ありがとう。ごちそうさま。