子どもの頃どこでどんな遊びをしたか、謂わばその原体験が、大人になった時、どこかの何かに反映される、とはよく言われる。

丘を越えて学校まで通ったり、川で沢蟹を見つけたり石投げをしたり、…僕のように恵比寿ガーデンプレイスで隠れんぼしたりロブションのブリオッシュを買ったり…した小学校生活を送ると、こんな屈折した人格が形成されるのかもしれない。

君らより数億年前から、東カレなんて略語もなかった時代から、僕は恵比寿を知っていたのだよーんだ、という優越感を全身に迸らせるサイテーの大人になってしまった。




そんなことを思いつつ、なんだかんだで久々のガーデンプレイスが随分と変わったことに驚き(三越がライフになってしまい、1階なんて丸ごとシマチュウみたいな園芸用品売り場になってしまっている。かなしー)、加計塚小学校トイメンのルファヴァーを横目に、てくてくと。




初訪問。

外観から雰囲気抜群だったが、中に入ってびっくり。

一点の不潔さもない(フランス料理で不潔とか論外だが、なくはない)グレーで統一されたシックな内装、暖炉の似合うあったかい空気(実際とてもぬくかった)、すごくいい。



ワインペアリングならぬ、パンペアリング…すなわち、料理ごとに、その料理に合うパンを合わせてくれるフランス料理店だそう。




一年ちょっとぶりのこの友人、七夕ノリで誘ってきた。

他者の追随を許さないくらいパンが好きな僕、こちらのコンセプトを知って欣喜雀躍したところ、



「パンといえば四郎だな、と思って。」と。



付き合い6年目、よぉく分かっているじゃないか僕のこと。ありがとうありがとう。







しかし、ペットボトルを机上に置くのは恥ずかしいような。

…まぁいいや、僕は君の母ちゃんでも恋人でもない、何よりこの店の常連でもないから、もういろいろ思うのはやめよう。

ラベルの綺麗なスパークリング。








しょこたん似のソムリエバッジのお姉さんがパンを解説してくれた。

胸元が心配になってしまったが、こちら女性客ばかりだし、凝視するような変態はいないか。







幸い動画を撮らせてもらったので、今書きながら一つ一つ記憶喚起された。

しかし、ラストのクリームチーズの、食べてないような。はて。




これらのパンたち、特にどでかい立方体のさつまいもの食パン、丸ごと提供されるのだろうと思って、この日は絶食して挑んだのだが、残念ながらそうではなかった(下記写真参照)。








バターは自家製。

カルピスバター以上に真っ白!

プルンプルンで、まるで缶詰のチーズケーキみたいだが、岩塩と合わせて有塩になる感じとか、パンに絡みやすい加水率とか、珍しくて美味しかった。






クランベリーのパン。

最初に言うが、こちらのパン、総じて普通だった。焼きたてならではの火傷しそうな熱々は楽しめたものの、自家製たる気概というか生地の特徴は感じられなかった。

さすがにパンペアリングを謳いつつ業務用ってことはなかろうが、正直、ベーカリーレストランサンマルクの食べ放題パンと差異なく思えた。




ホテルやかなりのレベルのグランメゾンでさえ業務用パンを使用するところが多い中、自家製なだけいいのかな。



うんでも、都立大学の笠井や神保町アルテレーゴ、池尻大橋のリアン、初台のハトなどのパンが凄すぎて、そしてパンに限らず、それらと比べると全体的に「Z世代が喜びそうなマーサー系列ぽいオシャレフレンチ」と思わざるを得ない。







とはいえ器、盛り付け、そして色で統一した各プレートの創意工夫は素晴らしかった。











解説を。







斬新なクロワッサンサンド。

中には帆立(確か)。パンの中では、こちらが1番美味しかった。








貝類のブランマンジェのような白いプレート。









白を。

うっ、まだペットボトル…(言うまい)。







カヌレ型に入れたブリオッシュ。バターが効いて普通に美味しい。







ごろごろとトリュフ。









贅沢に削って、褐色プレート。

トリュフ、ポルチーニなど香りがいいきのこはバターや生クリームと合うね。美味しい。








指を火傷しそうだった。

悪い意味ではないが、焼きたては大概何でも美味しい。先日スターバックスロースタリーで食べた焼きたてクロワッサン(コルネッティ)の美味かったこと。










赤いプレート。

サーモンと人参と。

ソースも人参だね。

こってりソースが続くが僕はガツンと濃ゆいのが好きなのでウェルカム。

胃が弱い人はこの辺でしんどいのかもしれない。






さつまいも食パン。

あの立方体ごと食べたかった…。








鴨の紫プレート。

これは綺麗。

効いてないが、多分マデラソース。









シャインマスカットのブランマンジェ的な。

さっぱりデザート苦手だが、このちゅるんもちゅんなシャインゼリーは白玉のような食感で楽しかった。







ミニャルディーズ。

うん、これは完全に普通。





不満かといえばそんなことは全然ない。
静かで綺麗で心地よい空間で、美味しいワインと見目麗しいコース料理をいただけて幸せだ。
何より僕は「フレンチとかコスパわりぃよ、ダンダダン酒場の餃子でいいじゃん!」みたいな、食への思い馳せることを放棄したコスパ厨ではない。

なのだけど、フランス料理でも何でも、コース料理ってどこか頭打ちで似たり寄ったり、バタークリームを効かせたソースと魚と肉と…で、そもそも客の方も「うわぁ。」と言って写真を撮りまくりつつ、その食材やソースの味なんてほぼ覚えていなかったり、ということが多いように思う。
だから作り手が「ほぉら、豪華っぽいコースだぞぉ。こんな感じで満足でしょう?」と、特に強い創意工夫を発揮することもなく、ある種投げやりになっても、哀しいかなニーズが合ってしまうのではなかろうか。


こちらの店がそう、と言っているのではない。
ただ、感動って何だろう、と今一度考えるとともに、感動のなさを店のせいにするのではなく、自分の舌が練れていないだけではないのか、都度自問自答したいと思った。


もちろん、シンプルに「うまい!忘れられない!」という直感は大切に。