映画でも漫画でも、「巷で話題」というだけで忌避してきた僕、それによる機会損失の山脈はエベレスト級だろう。



 "その時代のマジョリティに支持される作品を知っておくことも必要!"、と頭で分かってはいても、流行りモノというだけで「アホみたいに猫も杓子もwww」と蕁麻疹が出そうで、どうにも無理なのだ。



そんな僕が久しぶりに手をつけたthe 流行りもの、「明日私は誰かの彼女」。

すっかりU-NEXTの養分になっていた僕だが、U-NEXTから吸い返すごとく夜な夜な貪って、一気に読了した(まだ既刊僅か10巻だけど)。




一応知らない人のために、ふわっと概説すると、こんな感じ。




時代設定は、まさに今の今(途中からコロナ禍になるくらい今)。

登場人物は結構多いんだけれど、相関図が必要なほどの複雑さはなくて、チャプターごとにそれぞれの女の子が主人公となって物語が展開する。


パパ活女子、整形醜形恐怖症、ソープ女子、ホス狂い(からの風俗転落)女子、お茶爆推し活女子など、現実世界にも腐るほどいるよねこういう人、なラインナップ。

共通点は主にみんな大学生、とにかく突き抜けて可愛い(一部例外あり)、そして病み(闇)。



ふーん、イマドキって感じ!と、一蹴することもできるが、そのイマドキさ反映度は、怖いくらい凄い。



アプリで出会うこと自体は、もはや今更驚くことでも何でもないけど、何というか、恋愛の在り方もスマホ普及とともに大幅に変化したなぁと、この作品を見て改めて感じた。


男も女も、昭和平成のべっとりした情事とは真反対で、爽やかにカフェでキャロットケーキとカフェラテを楽しんだ後に、カジュアルにセックスするような感覚だよね、今って。

そりゃあ「リスキーゲーム」や「悪魔のキス」の作風が現代に馴染まないわけですわ。

(ちなみにいずれも90年代名作エグドラマ。ダイバーシティやコンプライアンスにうるさいこの時代、絶対再放送されない。悲しみ。)





もちろん、僕の周りのZ世代もしっかり不特定多数と遊ぶし、バレては彼氏彼女とそれなりに揉めてるんだけど、なんか何やるにしても、どこか総じて"ポップでライトでカジュアル"に思える。

泣いたり"キュンです"したり、感情の起伏はあるのだろうけど、淡々と日々を生きていて、ドライというか。人間関係も性的なアレも、サクサクとスワイプで軽く飛ばして未読既読スルーしてこなすような感覚というか。



何よりすごいなぁと思うのが、皆さん、明日カノを読んでも、別に異性交遊を絶望視することなく、"面白い時間潰しのエンタメ"としてしか受け止めていない。そんなイマドキ女子たちのドライさに驚きを隠せない。

だってさ、作品中では、パパ活しててもそのパパサイドもたくさんの女子とのスケジュール調整で忙しいし、大体の男も女もLINEのトーク通知は「新着メッセージがあります」にしないと不都合な秘密を抱えすぎだし、"推し"からは所詮ホストの太客と同程度にしか思われていないし……もう、オワじゃん!漫画化されなくてもわかるくらい、分かりきったthe現実だけど、改めて漫画でまざまざと再認識させられて、絶望しない方がおかしいと思うんですけど!!




自分の周りにも溢れてすぎる現実の作品化、それをベッドに寝転んで「ふーん♪」とスクロールしては、自分も作品さながらのSNSの使い方をする女の子たちの、そのドライさに、古くさい僕は驚く。




 

ちなみに完全に他人事として書いているのは、僕が「男女云々」と無縁なところで生きていることも大きい。

よって、全くもって僕自身は共感はできないんだけれど、唯一自身と重ねられたのは「推し活」の章。


 "推し"は、ジャニや坂道のようなメジャーなアーティストから、V系、声優、YouTuber等々とにかくジャンルが広いが、どちらかというと、メジャーな"推し"よりも、マイナーなソレの方が闇沼が深い、というか明らかに深い。


理由を考えるに、そのアーティストにとって、活動維持のため、課金がどれだけ重要かが大きいからだろう。

メディア露出が多く、(CDは売れなくてもサブスクで)曲が売れて、だからコンサートで集客してそこそこグッズを買ってもらえば食っていける勢と、(いろんな事情で)それができないためにSNSでちょこちょこ収益を得ざるを得ない勢では、ファンに求めるその在り方も当然に異なる。

後者のファンは、投げ銭さえすれば気軽に名呼びされる距離感の近さと「私が頑張らなきゃ」という使命感ゆえに、高揚とともに病みがち。

SNSで「〇〇さん結婚してくれないからまたODしちゃった。」と推しのハッシュタグ付けた呟きが散見されるのも、その証左。

とはいえ、キャスでお茶爆投げる行為も、違いは「SNS」を媒介するかどうかだけで、ホスクラの担当にリアコこじらせるのと行動としては似ている。



どちらも「そんな、課金なんていいよ(オリシャン入れてくれなくてもいいよ)、応援さえしてくれたら!」と(本心かは別として)言ってくれたとしても、それを真に受けて皆がチケ代のみで観覧(初回荒らし)し始めたら、早晩"推し"は食っていけなくなる。



君の夢は消えてなくなっちゃうんだよ。





だから、「金なのね!そこに愛はないのかい?」とか思うのは愚の骨頂。そのパラダイムで楽しむと決めた以上、羽振りのいい客ばかり厚遇されるのも世の常と甘受しないと。





…とはいえ、しちゃうよねー推しに期待。

分かるよー分かるよー。

"これが私にとって幸せなんだもん!!、幸せ?本当に?幸せってなに?考えちゃダメぇぇぇぇぇ!!"…って、自問自答繰り返すよねー。

おお、まさに男女の恋愛と同じじゃあないですか。




明日カノ、次巻以降どう展開し帰結に至るのか分からないけど、幸せって他人に求めたり、そもそも答えを求めようとしちゃあダメですよね、と思いつつ、僕は今週末も推し活の旅です(あくまで推し活とは認めたくない!)。