先ほど、仲良しパイセンからこんなことを言われた。
「いつも、よくこんなところ知ってるよねって店を見つけてくるよねもつ鍋は。」
…本当にそう思う我ながら。
何でもかんでも美味い美味いと胃に流し込むウワバミ野郎でない僕は、「ファミレスと同レベルかそれ以下」な店には行かない。
というか、僕クラスになると、SNSや紙媒体で店の外観内装料理写真を見ただけで「これはレベチ」か「あかんやつ。よく皆さん食いますね」なやつかわかる。
そうドヤるとパイセンはこう言った。
「我々の同業で地雷系なとこは、ホームページを見ただけでわかるのと同じ理論だねwwやたらカタカタな社名とか、自己紹介写真がみんな腕組みとか、理念のとこやたら熱くて社会貢献押しとか」
…言い得て妙すぎる。
とある寒い雨の日、またしても僕はいい店を見つけた。僕は失敗しないのだ。
ピーコックやスタンド富士やスチパンがある通りの、一本線路寄り。線路沿い。
本当に知らなきゃ通らなそうな場所に、ひっそりと。
入ると、無機質でシックな配色のバーカウンターと、右奥にキャンプテントみたいなベランダが見えた。
客層は、見事に20歳前後。
オーナーと思しき男性とバイトと思しき女性も、同じく20代と思われる。
そしてオーナーはなかなか見ないほどの容姿。適度に遊んでいそうな人なつこい接客をしながらも、プロ意識が滲む芯の強さが感じられる。
カヌレやスコーンやガトーショコラもあったが、
ショコララテと、バナナブレッドにした。
目の前で一杯一杯丁寧に淹れてくれる。
ラテアートを作る表情の真剣さよ。
とても美味しかった。
深みがあるのに、プロい珈琲が苦手な僕でもごきゅごきゅ飲めるクセのなさだった。
チョコレートシロップのおかげかもだが。
一点、かなりぬるめだったのが残念。
敢えてかたまたまかは不明。
バナナブレッド。
こちらで作っているわけではなく、どこかから仕入れているらしい。
あっためてくれた。
確かに美味しい、そして余計な添加物が入っていない限りなくシンプル素材なバナナブレッドなのだろうが、ガツンと濃ゆ目好きの僕にはパンチが弱すぎた。
でも美味しいよ。
バイトの女の子は、今月限定らしく。
名残惜しそうに楽しかった日々を振り返っていた。それに対して、オーナー(仮)、先輩口調ながらも愛情たっぷりに「まぁでも今の職場も次へのステップやと思って。本当にありがとな。」と。
その光景を、僕の横の女性2人組が、自分らの会話そっちのけで見つめていた。
オーナー(仮)がバイトちゃんに話しかけるたびに2人して耳をダンボにしている様子は、読書に没頭し下を向いた僕でもヒシヒシと感じることができた。
ちなみに、小一時間滞在した僕は、退店まで一言もオーナー(仮)に話しかけられることもなかった。
読書に没頭していたから、ネ。