子どもの頃って、どこに連れて行かれても、誰と飯食っても、美味いものは美味かった気がする。
先日、職業柄日々偉いおじさんたちと会食三昧だという友人が、こう言った。
「この前焼肉行ったんやけど、嫌すぎて、先方が電話で離席した隙に、片っ端から肉焼いて、それ全部口に入れて、先方が戻ってきたのと入れ替わりで離席して、そのままトイレ行って鯉のようにくぱーっと…」
…さすがにそれをやる勇気は僕にないというか、食材を作ってくれた農場や店に申し訳なさすぎてできない。が、気持ちはわかる。わかるものはわかるんだから、仕方ない。
今回訪問したこの店は、僕がまだ坊やの頃、何でも無邪気に美味しい美味しいと食べていたあの頃に、母親に連れられてよく来ていた。
このリゾット春巻も懐かしい。
そういえば、この店でアラカルトは初めてだ。
品がいい店のタルタルは、くどくなくてうまいのなんの。
ここは鉄板焼きとお好み焼きの店。
目の前で丁寧に焼かれたお好み焼き、見た目通りの美味さ。もっとも、変に舌ばかり肥えた大人の僕には物足りなく思えてしまった。もっとふあふあ、もっと分厚く、もっと具沢山……甚六のお好み焼きの方が好みかもしれない。
十分すぎるほど美味しいんだけどね。
"美味しい"ってなんだろうね。
そんな話を、友人とゆるゆるとしながらお好み焼きをつついた。
この友人も職業柄、上司と西麻布界隈の焼肉店に行くことが多いらしく。へーいいなー、と僕が言うと「別によくないよ。何でも食べていいよって言われても、実際気を遣って何でも頼めやしないし、そもそも気遣いながら飯食ってもな…」と。
僕に高級焼肉三昧の経験はないが、冒頭の友人のエピソード同様、とりあえずとってもわかる気がして「あーーー!わかるーーー!なんか砂食ってるみたいだよね!!」と食い気味に返した。
アスパラの肉巻がやってきた。
味の想像がつくメニューだが、目の前で焼かれたいい肉いいアスパラは当然に美味い。
湯気が出てるだけの動画。
杏仁豆腐。
友人「砂食ってるはないよ笑。鶏じゃないんだから」
あ、そこはフォローするんだ(誰をか、フォローなのか、ただのつっこみなのかわからないが)。そうやって、こちらの過剰相槌を訂正するその感じもなんだか楽しく、時折反芻して笑ってしまう。
シメはガーリックライス。
ここの店の大人気メニュー。
僕はこれが1番美味しかった。
鉄板焼きといえば、やっぱりガーリックライスだよな、肉はほとんど食べてないけど。
湯気が出てるだけの動画。
杏仁豆腐。
品の良い料理屋のデザートって、どこまでも品が良くて、それゆえに物足りない。
まぁ、帰ってジャイアントコーン食べるからいっか。
おまけ。
総じて大満足だった。
だけど食欲旺盛な僕らは、ついいつも2軒目を探す。
そして、だいたい2軒目でハズす。
この日行った2軒目はなかなかにひどく、見るからに質の悪いハイボールを前に、互いに半笑いの中、友人が零した。
「今度から2軒目も(どこ行くか)決めといた方がいいかな」
…そうかもね笑、と言いつつ、そのやりとりもまた面白く。
島田紳助の言葉で「何を食べるかじゃない、誰と食べるかだ」というのがあるけど、当時の彼の年齢に近づくにつれ、その思いが強まる。
ちなみに、その後友人から連絡があり、2軒目行ったその店が潰れていたとのこと。