僕がまだ坊やだった頃、父に連れられて銀座のインド料理店に行った。地下にあるその店は、薄暗く、象の置物がたくさんあって、摩訶不思議な音楽が流れていて、見慣れない顔の色の人たちが見慣れない料理を運んでいた。


なんだかとてもこわくって、僕は涙目になりながらじっと耐えて座っていた。ほとんど何も口にできなかった。



と、優しいインド人の店員さんたちは、卓に来る度に僕をあやそうと、微笑んだり何か話しかけたりしていた。そんなこと、されればされるほど僕の中の"こわい"は膨らんで、店員さんの顔を見て『ギャーーー』と泣いた。
困り顔で厨房に戻る店員さん。父は『ほら、おいもさんだよ。これはからくないよ。サクサクの、三角のおいもさんだよ』と僕に言ってきた。その後自分がどうしたか、そこの記憶は抜けているのだが、渡されたカレー味のおいものサクサクパイ包みみたいなもの(大人になってからサモサだとわかった)の味は今も覚えている。



あの頃はなぜか外国人がこわかった。外であやされても、目を背けたり泣いたりしていた。
…失礼千万である。普段礼儀…謝罪や感謝の心を重んじる僕は、あの頃に戻って、出会った外国人の方1人1人に謝罪したい。






だが、その方々に言いたい。
大人になった僕は、こんなにもインド料理の虜になったのだよ。



カレー好きという人は多い。だが、それを鵜呑みにしてはいけない。ほんと?じゃあ、ここいこー、なんて本場南インドカレーのレストランに連れて行こうものなら、顔をしかめながら我慢して口に運ぶ友人を見ることになるからだ。
君らは学食のカレーかカレーの王子様を食べていれば結構。お子様カレーライスが好きと訂正してくれたまえ。






年の瀬、僕以上にインドカレーに精通したカレー好きの友人と、その知り合いと3人で。
何が食べたいか問われ、ここぞとばかりに『ガツンとスパイシー!』と答えた僕に対して、スマートにここを選んだ友人に拍手喝采したい。







もう一回見せるが、この量だ。
そして、なんの躊躇いもなく1番下のコースを選んだ友人の粋さにも乾杯したい。そして、盛大に食べて飲んだ。見ての通り、これに加えビリヤニやナンは食べ放題、もう訳がわからないくらいじゃんじゃか出てくる。カロリーがとか気にする人は来てはいけない。



興奮して食べたので写真が全部ではないこと、恐ろしく汚いことはご愛嬌。





マサラパパド。





インド風ナスの天ぷら(右)と、もう一つ天ぷらと、サラダ。








骨なしチキンと…ウインナーみたいだけど、なんか美味しいやつ








ベジタブルサモサ。随分とかわいらしいサイズ。懐かしい味がした。






カリフラワーはインド料理に欠かせない。







赤ワインも何杯飲んだかわからないくらい飲んだ。年に数度の、胃と肝臓の解放時と判断した。普段は無駄遣いしたくないから極力使わない。






タンドリーチキン。柔らかくガツンとスパイシーでうますぎた。






待ちわびたビリヤニ。ラムが入っている。チキンと選べたが迷わずラムに。こんな美味いビリヤニ久々だ。






やー、本当にうまい。バスマティライスも食べつつ、もはや何だか訳がわからない。






キーマカレー。美味いしか言わないが、本当に悶絶するほど美味いのだ。ちなみに、友人が店員にリクエストをし『MAX辛いの』を途中でお代わりした。ナイスリクエスト。






バターマサラ。もう説明不要。どうせ美味いしか言わないから。





山のようなナン。もうどうにも止まらない。山本リンダもびっくり。



大満足だった。ありがとうサイーファケバブアンドビリヤニ。名前からしてかっこいい。



そして今日は父の誕生日。時系列的にこの店の記事を書く予定だっただけで、まったくの偶然。
あとでメールでも送ってみるかな。マハラジャの思い出なんて、覚えてないだろうけど。