バターとマーガリンの違い。これがわからない人は、そんなにいないだろう。だが、生クリームとホイップクリームの違いがわからない人、これはとっても多い気がする。そして、バターは外食で出てこないことはないが、純生クリームは実はそんなにはお目にかかれない。


  あなたがたが、"生クリームたっぷりでおいしー♡"と喜んで口にしてるそれは、ほとんど人工的な植物性油脂だぜ、ぷぷぷ。



  …と、笑いきれないのは、僕が普段口にしているクリームの大半も哀しいかな人工油だからだ。乳脂肪過多の動物性油脂とどちらがマシかはさておき、身体にいいはずはない。
  でもさ、巷に生クリームを使ったケーキはなかなかない気がするし、なんなら区別もついてないし、どちらもおたまですくって飲みたいくらい好きだし、仕方ないよね。


  だが、これは見た目でわかる。しっかり純粋な生クリームのケーキだ。



  だって、生クリーム専門店ですから。



  少し前までは行列必至だったが、今はすんなり入れる。何でもブームが去るのを待つに限る。




  店内は、さながら牧場。



  そしてブームが去ったからか、客層も若年層だけでなく商談をする高齢紳士、家族連れと多岐に渡る。嬉しい傾向だ。




  いちごの生クリームシフォンケーキ。生クリームが主役とのこと、大部分が生クリームだ。何ならバケツでくれよと思っていた僕にとって夢のようなプレート。




  いいフォルム。



  あぁ、ここにきて改めて、いつも口にしているクリームとの違いがわかる。僕はプラスチックを食べていたんだな。こちらは、遥か昔、おうちで焼いたショートケーキの生クリームの味がする。ややもすると、それ以来生クリームのケーキを食べていないのかな。





  黙々と食べ進めていると、前の席に女性2人が座った。音符が頭に見えるくらいルンルンな様子だった。そしてとってもお太りになっていた。彼女たちは、生クリームシフォンケーキ、生クリームガトーショコラを1人2皿オーダーしていた。そして1人がこう言った。

  「生クリームマジ好きでさ。どんぶりで欲しい!」


  ……。

  いや、彼女たちは日々ハードな減量に勤しんでおり、今日がご褒美デーなのかもしれない。そしてまだ減量開始から間もなくて、効果が第三者にわかりづらいだけかもしれない。いやいや、人の幸せを体型、外見で測ること自体間違っている(と批判される)かもしれない。
  個人的には、ストイックな人間に対して「美に執着し過ぎ!」と罵る人間の外見は、たいてい醜いと思っている。が、それはそれとして、幸せの形が多様なのは事実。目の前の女性が微笑ましいくらい幸せそうなのも事実。


  …とんでもなくおせっかいな思考を巡らせつつ完食した。僕には2皿は無理だ。
  彼女らと、ミルキーで幸せな時間を共有し、今後も中途半端であろう自分の立ち位置を再認識した。