僕のことをある程度知る友人は、クラブだとか合コンだとか、海やら花火やらに僕を誘わない。
 
 先週、僕をまだそこまで知らない人から、不意にこう言われた。

『バーベキューやるんだけど、来ない?コストコで買ったグリルで魚をホイル焼きにしてさ…』

僕『ば、ばーべきゅー…?』

『うん。来ない?』

僕『バーベキューとか、文字通り酒池肉林、不純異性交遊の温床であり…』

 『あ、ごめん、わかった!』

僕『…僕ら私らリア充ですよと言わんばかりの男女が集まっちゃって、バーベキュー仲間もいるんです夏満喫してますアピールのためにインスタ写真撮りまくって、あいつら絶対異性がいなきゃクソ暑い中海川なんざ行かないくせに、いやらしくも"海が好きなだけだよ"感を出したりして。極め付けは、バーベキューも終盤になった頃に群れから外れたところで語り出す男女。で、こう言うんだ。"私、ホントはこういうの好きじゃないんだよね。"俺も!普段から1人が好きだし。今日とかアツシが誘うから仕方なく来たけどさ、よかったわ仲間いてww"……なんだそれ。自ずからバーベキューという場に参加しておいて、僕は私はこういうキャラじゃないんですオーラを出す、その矛盾。あぁぁぁぁあ』


 『病気だな』

僕『はぁはぁ……そう!病気だよな!』

 『や、君が。とりあえず、呼ばないから。悪かった。』


 多分彼からは今後バーベキューに限らず誘われないだろうな。まぁ、いいのだ。

 とりあえず、美味しい魚は海や川まで行かずとも食べられる。せいぜい直射日光にやられ、蚊に刺されまくるがいい、変態どもめ。

 てなわけで、僕はここへ。




 美味しい魚を食べさせる店、と看板に銘打っている麻布十番の老舗店だ。


  なんかの頭だった。まぐろ?
頭なんて身がなさそうだが、裏までしっかり身がついていて、かなりお腹いっぱいになった。何より煮付けの汁が薄味で美味しくて、飲み干したいくらいだった。



 他にもたくさん魚料理があり、サラリーマンたちが酒を飲みながら美味しそうに摘んでいた。大勢で来た方がいろんな魚料理を楽しめるのだろうが、こうして黙々と食べ、さっと帰ることができる1人飯に勝るものはない。やはり味わいたいなら飯は1人に限る。


 蚊にも刺されず、ひんやり涼しい室内で美味しい魚を独り占めできた。万歳。