プロジェクトマネジメントの現場 -5ページ目

IT業界における偽装請負について(前回の続き)

前回偽装請負や二重派遣といった問題に対処するためのプロジェクトマネージャの管理の重要性について書きました。


ただ、IT業界ではこれら関連法規に対して現実的に対応が難しいケースもあります。それらについてJISA(情報サービス産業協会)から厚生労働省に対して提言を行っています。


今回はその内容を紹介します。

■ 準委任契約における派遣法運用について
準委任契約は請負契約と異なり、業務の処理そのものを目的とし、担当する個々人の資質、能力に依存する要素が高い。このため、以下の運用を認めていただきたい。


① 受託者側が選任した候補者の能力・資質の確認のため、業務履歴、保有資格等の提出を求め、またコミュニケーション能力等の確認のため事前面談を行うこと。


② 単独での客先常駐の場合、受託者側の責任者を別途配置することは現実的でない。従事者自身を責任者とし、委託者と作業連絡を行うこと。また、外注作業員のみが単独で作業を行う場合の連絡を、当該外注作業員自身を責任者として行うこと。


■ 業務実態のある重層的受委託構造において、参加するベンダー全体の工程進捗管理のため、プライムベンダーとユーザとの打合せの場に、ユーザの責任者の了解の下に、二次、三次請けベンダーの責任者が参加することを認めていただきたい。


■ ベンダーグループ全体での進捗管理・品質管理のため、プライムベンダーが開発環境および各種管理ツールを提供し、参加するベンダーが共通に利用することがある。このため、従業員個々人の業務実績報告を各ベンダーの責任者に対し行うことが、結果的に委託者側への通知ともなることを認めていただきたい。


■ 座席の分離については、厳格な物理的隔離を求めるのではなく、実質的に分離(委託者・受託者の座席が大まかには区分されており、座席表等でその区分が明示されているといった一定レベルの分離)がなされておれば、同一の場所で作業を行うことを認めていただきたい。


前回も触れたように、IT業界のゼネコン構造が問題をややこしくしているわけですが、現時点では上記のような点が法規に抵触しているということをマネージャは留意する必要があります。



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調達マネジメント~契約管理

最近IT業界でも「偽装請負」や「二重派遣」といったニュースをよく見ます。これらは業界内の商習慣として長年続けられてきたものですが、労働局が2004年あたりから始めた偽装請負・違法派遣の是正を目的とした、「請負・派遣適正化キャンペーン」を通じて浮き彫りになってきました。


このような背景を受け、プロジェクトマネジメントにおける契約管理の重要性が注目されています。契約関連を含む調達関連の業務に疎い、または意識の低いプロジェクトマネージャを多く見かけます。

プロジェクトの推進に際してこのような事務的な作業が軽視されがちなのですが、法令に抵触すればグッドウィルのように経営全体に影響を及ぼす大きなリスクになることをよく把握しておく必要があります。


PMBOKでは「プロジェクト調達マネジメント」知識エリアで契約管理を含めた調達業務に求められる知識についてまとめられています。


PMPでは問題のボリュームの割合が比較的低いため、軽視されがちなのですが、定期的に読みなおして知識を固めるとともに、関連法規に関しても意識的にキャッチアップする姿勢を持つ必要があります。

プロジェクトにおいてこのような業務を担うのはプロジェクトマネージャしかいないからです。


調達業務においてプロジェクトマネージャが特に意識する必要があるのは、偽装請負、二重派遣、下請法があげられます。いずれも調達側(発注側)が特に注意していないと、いつの間にか違反している可能性があります。


いずれも計画プロセスにおいて要員計画と共に調達マネジメント計画を立て、外注する場合の役務範囲をきちんと明確化することが必要となります。


といいつつも、偽装請負や二重派遣などは構造的な問題を抱えています。これは「請負」という受注時に成果物責任を問われる契約形態に起因すると考えられます。


言うまでもなく、一括請負契約によって請負側に完成責任が問われる契約は、ソフトウェア開発においては大変リスクの大きな契約です。


PMBOKでも「契約タイプ」として5つの種類をあげています。発注者から見てリスクの高い順に、下記のような定義をしています。


・CPPC(Cost Plus Percentage of Cost)

・CPFF(Cost Plus Fixed Price)

・CPIF(Cost Plus Incetive Fee)

・FPIF(Fixed Price Incentive Fee)

・FFP(Firm Fixed Price)


発注側と請負側はリスクをどちらが「被るか」という駆け引きが生じます。一括請負契約(上記のFFPに相当します)では請負側が全てのリスクを全て請負側が被ることになるため、ヘッジのインセンティブが働き、二次請け、三次請けへとリスクが連鎖的に伝搬していきます。


結果としてリスクが請負側全般にまぶされてしまい、作業時には契約や指揮系統の問題が霞んでしまいます。

例えば作業量が膨らみ、且つ納期が迫っている状況ではやむを得ず、請負契約以外の作業を作業担当者に場当たり的に依頼するといったケースが多々あります。このような行為が偽装請負と見なされてしまうのです。
更に請負側が要員不足によって孫請けから要員を調達し、発注者が上記のような作業依頼を行うと二重派遣と見なされてしまいます。


この他にも発注者側が労働者を自らの支配下で自由にコントロールしたい(=派遣形態)という欲求がある一方で 、派遣とされることによって、労働者に対する“使用者”的地位が認められて、労働法(労働 基準法、労働安全衛生法、労災保険法、社会保険法など)上の責任(労務管理、安全配慮 義務など)を負いたくないという理由から偽装請負の形を取るケースもあります。


こういった問題を回避するためは、


【請負契約】

スコープが確定している業務(確定した要件に基づく開発業務)

【準委任契約】

スコープが未確定で、変動リスクがある業務(コンサルティング、要件定義、未確定要件に対する開発業務)

【派遣契約】

不確定要素が大きくスコープを定義できない業務(技術調査、SEサポート)

※派遣契約を行う場合、派遣元が「労働者派遣事業者」としての免許を持っているかどうか確認が必要です。免許を持っていない場合、「偽装派遣」となります。


といったリスクに応じた契約形態の使い分けが必要になります。

その意味で、プロジェクトマネージャは変動要因に対するリスク分析を行った上で調達計画をしっかりと行う必要があるのです。


人材派遣会社への是正指導が一巡した今、IT業界に是正指導が本格化されるでしょう。実際に、大手のITベンダー各社には、労働局からの臨時検査が相次いるのは冒頭に書いた通りです。

プロジェクトマネージャに求められる調達マネジメント能力はますます大きくなっていくと思います。



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プロジェクトマネージャの適性について

日経BPサイトに面白い記事が載っていました。


プロジェクトマネージャの適性と資質

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20080623/309316/?ST=mngskill&P=1


プロジェクトマネージャとしての適性診断チェックリストが掲載されています。問題は15問。それぞれa,b.cの選択肢があり、選択肢毎の割合で4つのタイプに分類しています。


会社中心型

プロジェクト中心型

自己中心型

協調型


早速試してみたところ・・a:27%、b:67%、c:7% で、「プロジェクト中心型」でした。。説明を見てみると・・


■プロジェクト中心型

プロジェクトの成功を常に第一に考えるタイプである。ユーザーやチーム・メンバーの意見もよく聞く調整型のタイプでもある。このタイプは,昔かたぎのプロジェクト・マネジャーによく見られる。プロジェクト・マネジャーとしては,堅実な成長が期待できると言ってよい。

ただし,プロジェクトを第一に考えるあまり,何でも引き受けてしまい,自分自身がボトルネックになってしまったり,ユーザーやメンバーに気を使いすぎて途中で倒れてしまうといったケースを,これまで何回か見てきた。こうなると,結果としてチーム全体にも大きな迷惑をかけることになりかねない。もう少し,自分自身のことを考えることも大切である。


自分がボトルネックに・・・確かにあたっている。。


チェックリストはなかなかよくできていると思います。質問内容もプロジェクトマネージャとして遭遇する場面を的確に表現しています。


プロジェクトマネージャは人間の基礎的なコンピタンス(性格や価値観、行動特性)が大きく作用する職種だと思います。知識でカバーできる範囲が他の職種と比較して小さいのです。


しかし適正や資質が備わっていないからプロジェクトマネージャになれないわけではありません。この記事では4つのタイプに分けていますが、マネジメントのタイプ・スタイルは様々ですし、どんどん進化しており、求められるものも変わってきていると思います。


プロジェクトマネージャ職で苦労されている方は、「あるべきマネージャ像」に捉われすぎているのではないでしょうか。周りを見れば、本当に色々なタイプのマネージャがいます。

自分の性格や価値観を簡単に変えることはできません。自分のいい所を引き出しながら、自分なりのマネジメントスタイルを見つけていくことが大切だと思います。