韓国の「ベルばら」に興味があるけれども、言葉の問題で観劇を躊躇されている方も多いと聞きました。

原作を知っていれば言葉がわからなくても十分楽しめると思いますが、大体どんな事を歌っているかを知っておくと、さらに楽しめるのではないかと思います。

私自身、韓国ミュージカルを観劇する際、諸先輩方の歌詞訳にずいぶん助けられてきました。

その恩を次に繋ぐ形で恩返しできればと、浅学の身ながら歌詞訳を用意いたしました。

聞き取り間違い・誤訳等、多々あると思います。

聞き取れなかった所は飛ばして訳した箇所もあります。

ご了承の上、ご活用いただければ幸いです。

 

<15. 光り輝くお金を見るだけで> (アンサンブル・オスカル)

<16. 光輝くお金を見るだけでunderscore>

 

宮廷では「フィガロの結婚」が上演されている。

その最中、ド・ゲメネ公爵にシャルロットとの縁談を提案するポリニャック夫人。

黒い騎士の舞台用の変装をしたオスカルが乱入して舞台を貴族風刺的な内容に。

 

 

<17. 舞台事故underscore>

 

オスカルとアンドレの頭上に舞台の幕を落とすポリニャック夫人。

反応が遅れたアンドレをオスカルが庇い、二人はすんでの所で難を逃れる。

この一件でアンドレの視力に問題があることを認識するオスカル。

アンドレは「おばあちゃんには言うなよ」と言い残して去っていく。

 

 

<18. 秘密結社> (ベルナール・アンサンブル)

 

(ベルナール&アンサンブル)

見ろ 感じろ 死ぬ時まで考えろ

生まれたままに生きることが 本当に当たり前のことなのか

誰かにとっては当たり前のことが 誰かにとってはなぜ!贅沢なのか

今日も叫ぶだろう 世界に問うだろう

 

我々の自由(我々の自由) 我々の権利(我々の権利)

我々の平和(我々の平和) 我々の希望(我々の希望)

 

我々の祖国は徐々に死んでいく(我々の基盤は破壊された)

いつまで奪われながら生きるのか(いつまで奪われながら生きるのか)

彼らは権力で抑圧するが(我々の自由)

実状は我々を恐れている(我々の権利)

我々が力を合わせて一つになれば(我々の平和)

彼らよりももっと!強力な存在だ!(我々の希望)

 

我々の勇気が彼らに試練を 自由は我々にパンと翼を与えるだろう

我々の絶望が彼らに闇を 明日昇る太陽は我々を照らすだろう

長い眠りから覚めてまばゆい夜明けを迎えよう

 

オスカル「王后陛下。このような夜更けにどのようなご用で・・。誰だ!」

衛兵「隊長!あやしい奴を発見し追ってきました。すぐに逮捕します」

オスカル「あやしい者ではない。持ち場に戻れ」

衛兵「しかし」

オスカル「近衛隊長である私が身分を保証する。・・・陛下、今日の事は見なかったことにいたします。しかし、この・・・。交代時間はあまり残っておりません、陛下・・」

 

(ベルナール&アンサンブル)

我々の悲しみ 我々の憤怒 我々の沈黙

いつまで息を殺して生きていくのか

我々の悲しみ 我々の憤怒 我々の沈黙

いつまで息を殺して生きていくのか

 

我々の勇気が彼らに試練を 自由は我々にパンと翼を与えるだろう

我々の絶望が彼らに闇を 明日昇る太陽は我々を照らすだろう

長い眠りから覚めてまばゆい夜明けを迎えよう

 

我々の自由  我々の権利  我々の平和

我々の心臓を一つにして一緒に叫ぼう

これが我々の声だ

 

見ろ 感じろ 我々の胸の中の希望

これ以上耐えられなくても これだけは離さない

 

我々の祖国は徐々に死んでいる(我々の基盤は破壊された)

いつまで奪われて生きるのか(いつまで息を殺して生きるのか)

長い眠りから覚めて叫ぼう(長い眠りから覚めて叫ぼう)

明日の太陽は我々を起こす(明日の太陽は我々を起こす)

いつか

 

 

<19. お前は私に与えるだけ>

 

アンドレ「お前のためなら片目くらいいつだってくれてやるさ」

オスカル「今私はそんな話を聞き・・」

 

お前はなぜ与えるだけなんだ お前にとって私は何なんだ

そうやって全部与えたら お前には何が残るんだ
 

ただ慣れてしまったのだろうか お前との時間

そばにいるお前が当たり前だったのか

お前が私のそばにいない時間は 想像もできない

そばにいつもいたから 考えられなかったのか

 

一日一日が耐え難く 人生の重みが大きく感じられて

たわいもない話で くつろぎたい時

力いっぱい戦っても結局負けてしまった時 世の中の皆が背を向けてしまった時

お前がいなければ 私は誰の背にもたれればいいのか

 

ある壁が私たちを遮る

お互いに壊したくない壁 先に言い出せない言葉

時折お前の眼差しを見つめると

何と答えたら良いのかわからず 唇をかみしめる
 

ただ慣れてしまったのだろうか お前との時間

そばにいるお前が当たり前だったのか

お前が私のそばにいない時間は 想像もできない

そばにいつもいたから 考えられなかったのか

 

一日一日が耐え難く 人生の重みが大きく感じられて

たわいもない話で くつろぎたい時
 

もしかするとそれは恐れだろうか

もしかするとそれは私のまた別の心

 

 

<20. 貴族とは何か> (ベルナール・オスカル)

 

負傷したベルナールの看病をするロザリー。

そこへオスカルがやってくる。

貴族社会についてベルナールとオスカルが歌う。(以下はその一部)

 

(ベルナール)

貴族とはなんだ 貧しい民衆にダニのように寄生して暮らしているだけだ

(オスカル)

それでもそこには愛がある 人間はそうやって生きている

 

オスカル「ベルナール・シャトレ。君はあの銃を我々から買った。1000リーブル近衛隊寮の兵器部に支払ってくれたまえ」

ベルナール「俺は黒い騎士だぞ」

オスカル「黒い騎士?そんな男は知らん。ロザリー!支度をしたら舞踏会に行くぞ」

 

 

<21. お前なら> (アンドレ)

 

黄金の髪 赤く輝く制服 お前はペガサスのよう

オリンポスのまばゆい太陽も比べられない

 

考えてみれば今まで俺はお前の手首を掴み

我慢しなければ、気をつけなければ、と言いながら見守るだけだった

けれど今日見たお前の姿は 以前とは違う

なりたかったその姿 いつこんなに大きな木になったのか

 

人々は簡単に言う 平凡に生きろと それはお前にとっては無理強いだ

人々はあまりにも簡単に判断しようとする お前の外見だけを見て自分を納得させる

 

望むようにお前を想像する あたたかい暖炉が必要だというように なぜ

お前だけの苦痛と哀しみ その中の涙が

どれほど貴いものであるかも知らずに なぜ

 

俺はお前だけの盾になる いつでも俺の肩にもたれろ

お前ならきっとやりとげられる 誰も手にすることのできなかった

星を見つけて

お前の夢を広げていくだろう

お前なら

 

 

<22. メヌエット> 

 

ロザリーの復讐に協力するため、ロザリーを伴って舞踏会に出席するオスカル。

泣いているシャルロットを発見し、慰めて事情を聞くロザリー。

ド・ゲメネ公爵との結婚を母親から強要されていることを話すシャルロット。

そこへポリニャック夫人が登場。公爵が待っていると言ってシャルロットを去らせる。

ポリニャック夫人が復讐相手だと気づき、銃を構えるロザリー。

そこへ駈け込んできたオスカルとアンドレ。

ロザリーに実母がポリニャック夫人であることを告げる。

動揺するロザリーとポリニャック夫人。

その刹那、シャルロットが投身。

 

 

<23. 私が生きる世界> (ポリニャック夫人)

 

 

嫌よ嫌よ嫌よ嫌よ おかしくなりそう お前がなぜ 勝手に死ぬの

私がここまでどうやって来たと すべてお前が壊した

 

15歳の子供の頃は愛しか知らなかった 世間知らずの貧しい男に出会った

朝の日差し 目が覚めたら寝台には私一人 私のそばには 残った赤ちゃんが泣いていた

使用人に娘を押しつけて 私の人生を再び始めた

 

はなやかに着飾って舞踏会に出て 

裕福な貴族を誘って結婚し 貴婦人になったけれど 

私の欲望は始まったばかり 私はもっと強力な権力を望んだ

王妃に媚びて私の味方を作った 世界をこの手に掴んだ

 

私が着たドレスに嬉しそうに挨拶をして 私が乗った派手な馬車 皆こうべを垂れる

もっと持ってこそ もっと高い所へ昇ってこそ 人間らしく生きることができる

後ろ指を指されて 心が沈んでも それがまさに私の生きる世界

 

ポリニャック夫人「違う、違うわ。終わってはいない。ロザリー、一緒に行きましょう。私が最高の人生を見せてあげる。我が娘、おいで。お母さんのところにおいで。ロザリー」

ロザリー「嫌よ。私の母は亡くなりました。あなたの馬車に轢かれて。あなたが殺したの。シャルロットもあなたが殺したのよ」

 

そうね 笑いなさい 思う存分笑いなさい

お前たちも望んでいたじゃないの 私の退陣を お前たちが 

笑えるわ

 

貧しくても愛があれば幸せになるという甘い嘘 お前たちも信じていないじゃないの

手に入れてこそ幸せで 手に入れるには不幸になって

手に入れたなら しっかり握りなさい

 

ああ 後悔しないわ

再び生まれ変わっても さらに高い所で 生きてやる

それが 私の生きる世界

 

 

<24. 離別> (ベルナール・ロザリー・乳母)

 

(ベルナール)

しかし、ここにも愛が存在したのか

人間は皆そのように生きていくのか

 

ベルナール「黒い騎士をこのまま行かせるなんて 正気なのか?」

オスカル「盗みなんてもうやめろ どんな目的を持っていようと他の方法を考えろ」

ベルナール「最後までおせっかいだな」

アンドレ:「ロザリーも行くんだとさ」

 

ロザリー「オスカル様 今まで・・この恩をどうやってお返しすれば・・」

オスカル「ベルナール、ロザリーが落ち着くまでちょっと頼んでもいいか 私の大切な妹だ。頼む」

ベルナール「約束しよう」

 

乳母も登場し、ロザリーとの別れを惜しむ。

 

ベルナール「オスカル、貴族の中にお前のような人間もいるということを必ず覚えておくよ」

オスカル「(ロザリーに)これからは本当のお前の人生を生きなさい」

ロザリー「みんな、さようなら ありがとうございました」

しばし私は夢を見たのでしょう 属せない世界で 悲しく美しい夢を

 

ベルナールたちが去った後、ジャルジェ将軍登場。

オスカルが近衛隊を辞めて衛兵隊に異動することを知り、オスカルと口論。

アンドレを呼び、衛兵隊に入隊してオスカルを護衛するよう命令する。

 

視力低下が著しくなったアンドレは乳母と衝突。

乳母は孫のアンドレの目の異常に気付くも、将軍家に迷惑をかけてはいけないとその事実を話さないようにアンドレに言う(歌う)。

「大丈夫。それくらい言われなくてもわかってるよ」と返すアンドレ。

 

(乳母)

隠さなければならない これ以上迷惑をかけてはいけない

目立たないようにそのように 生きなければならない

 

 

<24a.  衛兵隊>

 

椅子に縛りつけられ、衛兵隊の面々に取り囲まれているオスカル。

そこへ飛び込んでくるアンドレ。

しかしアンドレは高みの見物で、オスカルが一人で衛兵隊の皆を倒す。

心を抑えつけても仕方がない、諸君を処分したりはしない、お前たちと一緒に努力していきたいと兵士たちに告げるオスカル。

兵士たちも心を開き、衛兵隊は結束する。

 

 

<25. オスカル様とダンスを>

 

不穏な世情を心配したジャルジェ将軍は、オスカルを結婚させようと求婚者を募る舞踏会を開催。

父親の思惑に対し、男装の礼服で現れ次々に女性たちをダンスに誘うオスカル。

オスカルはアンドレにもダンスを誘うように手を差し伸べ、アンドレもそれに応えようとするが乳母がそれを制止する。

その後、衛兵隊の兵士たちも乱入して舞踏会はだいなしに。

結局、求婚者はジェローデルのみ。

 

乳母からオスカルにワインを持っていくよう頼まれたアンドレは、その途中ジェローデルと遭遇。

 

 

<26. 毒杯> (アンドレ)

 

ジェローデルはアンドレに「私は・・私の妻を慕う使用人一人くらい、いくらでも黙認することができるよ、君さえかまわなければ」と言い残して立ち去る。

その言葉に「それは、どういう・・」と動揺するアンドレ。

 

遠くから見つめているだけで大丈夫なのかわからない

愛しながらも決して愛さないように

周りを彷徨って結局息が詰まるのだろうが 

そうしてでもそばにいたなら

 

甘い夢を見ることができるだろう その夢の主人公になりたい

けれども俺は登場しないだろう 幕が降りる時 照明を浴びずに 終わる夢

 

俺の苦痛も慣れるだろうか 毎日地獄を歩いても

俺の罪とはお前を愛した罪 赦しなど望まない

罪を犯しながらも耐え抜くなら それが救いになるだろうが

神はそんなに慈悲深くはない

むしろ俺の愛に代価があれば嬉しいのに

もうこれ以上俺に希望を許すな

 

毒を入れたワインを飲み干そうとする瞬間、オスカル登場。

オスカル「どうだ、見えるか?」

アンドレ「衛兵たちと一緒にいると思ったのに・・」

オスカル 「(騎乗軍服姿の自らの肖像画を見上げて)私はあの姿が私の人生の理由であり最後の姿になると思った・・・だけど良かった」

アンドレ「・・何が?」

オスカル「私を支えてくれるあたたかい眼差しに気づくのが遅すぎなくて・・・私は誰とも結婚しないぞ。一生!アンドレ、準備はいいか? 久しぶりにダンスの腕前をみてみようか? まだ舞踏会は終わってないぞ」

 

まだ生きている 心臓の鼓動が聞こえる 凍りついた肺が息をする

真っ暗な瞳に光が見える 唇がわななく

 

愛しているのに愛していないふりは嫌だ

俺の愛が本当に有罪だとしても 愛しぬく

愛して守るんだ この命をすべて捧げて

 

俺を許さないでください 俺は救済を受けることはできません

俺を彼女のそばにだけいさせてください

死ぬその瞬間まで

愛するようにさせてください

俺の全てを捧げて 彼女を守れるように

俺の魂をすべて捧げますから

 

愛に代価があるなら 全部甘んじて受けますから

我を罰したまえ

 

 

<27. 革命> (ベルナール・ド・ゲメネ公爵・ジャルジェ将軍・オスカル)

 

(ベルナール&アンサンブル)

私は祖国を告発する

国民の権利を侵害し、人権を蹂躙した私の祖国フランス 構造的矛盾を認めろ 認めろ

(構造的矛盾を認めろ 認めろ)

パリの市民たちよ 聞け 目を開け

1776年 財務総長罷免宣告

1778年 アメリカ独立戦争支援

1786年 王室財政破綻宣告

1789年 三部会招集宣言

税金は平民が払うもので 国庫は王室が使い果たしたのに 彼らはなぜ我々に無理強いする

 

(ド・ゲメネ公爵)

彼らを直ちに解散させろ フランス軍は扇動されたのだからスイス傭兵を呼ばなければ

彼らが暴れたところで 暴徒への射撃を許可しろ

 

(アンサンブル)

血と汗を流す我々の税金は誰のために使われるのですか

果たして許されるのでしょうか この国の正義は死んだのでしょうか

貧しい者 弱い者 闇の果てに光が来る 力を合わせて声をあげろ

新しい時代がやってくる

 

アンドレ「大丈夫か?」

オスカル「お前は?」

アンドレ「俺はお前の味方じゃないか」

 

軍幹部「オスカル准将、兵士たちを直ちに会議場に出動させ平民議員たちを武力で鎮圧せよ」

オスカル「そんなことはできません」

軍幹部「オスカル准将!」

オスカル「市民に銃を向けることはできません!」

軍幹部「お前も謀反で逮捕されたいのか!」

 

ジャルジェ将軍「処分を待つまでもない この反逆者! 私の言うことをよく聞け!」

我々の家門は最後まで王室を守らなければならない

ジャルジェ将軍「お前を成敗する!」

 

アンドレ、両手を広げてオスカルの前に立ちはだかる。そしてジャルジェ将軍にひざまずく。

オスカル「やめろ・・」オスカルがアンドレの前に出て父にひざまずく。

オスカル「父上が私にいつもおっしゃっていたことがあります」

 

(オスカル)

卑怯に生きるな  いつの日か振り返った時 誇らしく生きなければならない

(ジャルジェ将軍)

行くがいい お前の選んだ道を

 

軍幹部「すぐにオスカル、あの反逆者を逮捕しろ!皆、会議場へ行け!」

アラン「国民に銃を向けることはできません 衛兵隊はその命令に従うことを拒否します!」

軍幹部「こいつら、本当に・・」

 

兵士「暴動!暴動です! スイス傭兵隊が国民に向かって発砲しました。血生臭い匂いがあふれています!」

オスカル「諸君、聞いてのとおりだ。スイス軍は我々の国民に発砲した。諸君!私は今この瞬間から私のすべての地位と称号を捨てよう。さあ、選びたまえ!」

 

(オスカル)

心は何と言っている 国民に銃を向けるのか それとも一緒に立ち向かうのか

(衛兵隊)

喜んで隊長についていきます(喜んで隊長についていきます)

国民と共に立ち向かいます(国民と共に立ち向かいます)

 

兵士「王室近衛隊が我々を包囲しました!」

ジェローデル「オスカル隊長、剣をお収めください。近衛隊長であられたあなたを私がどうして撃つことができるでしょうか」

オスカル「撃て。私の心臓を砲弾で貫く勇気があるなら 私の屍をこえていけ!」

 

ジェローデル「退却せよ」

ジェローデルの部下「近衛隊、退却せよ!」

オスカル:「衛兵隊、進軍せよ!部隊、前進!」

 

ジェローデルの部下「隊長、このようにすると謀反人になって断頭台に立つことになるかもしれません。」

ジェローデル「そう、これが私の覚悟だ」

進撃したオスカルに向かって敬礼するジェローデル。

 

(アンサンブル)

皆が享受する権利 誰もが同じ機会 真理は我々の胸に 皆の自由と平等

 

オスカル「市民を前にだすな!部隊、位置につけ!」

 

(アンサンブル)

自由 それとも死 絶対に退くな

祖国のために国民と共に戦おう 歴史を変えるのは我々国民だ

 

アンドレ、オスカルを庇って被弾。

アンドレ「そこにいるのか?」

オスカル「見えてないのか?なぜ言わなかった!なぜついてきた!」

アンドレ「オスカル・・怪我してないか?」

 

オスカル「私を撃て! お願いだ 撃ってくれ!」

私の心臓をナイフでえぐり取ってくれ そうでなければ 私を石にしてくれ

いっそ私を狂わせてくれ

オスカル「私を撃て!」

 

 

<28.   私を包む風は私にだけ吹いたのか> (オスカル)

 

私を包む風は私にだけ吹いたのか

私が歩んだ道は私にだけ平坦だったのか

今は少し分かるような気がする

私が享受してきたこの人生は 当たり前ではないことを

今はわかった

神の愛にむくいる術もない存在 限りなく小さな存在ではあるけれど

自己の真実に従い 悔いなく 私に与えられた生を生きた
 

人間としてこれ以上の喜びがあるだろうか

愛し 憎み 悲しみ 

人間が長い間くり返してきた その崇高な生のくびきを生きた

心を抑えることに どんな意味があるのか

心まで服従させることはできない 誰も所有することはできない

一人一人どんな人間にも 心の自由がある

私にとってこれがこの世界に生まれた理由

我が身を旗印とし

世界に再び生まれ変わる機会を贈ろう

春風に似た少女が再び笑えるように

憎悪することのない世界のために
行こう

再び生まれ変わる機会

生きたい世の中のために 皆一緒に行こう

 

 

「・・・泣かないで 私は悔いなく生きた・・」