ビクター:チョン・ドンソク

アンリ:イ・ヘジュン

エレン:キム・ジウ

ジュリア:ソンミン

ルンゲ:シン・ジェヒ

 

 

 

※  かなり踏み込んだ内容を記載しています。未見の方はご注意ください ※

 

 

 

フランケンシュタイン10周年記念公演、5公演めの観劇は練習動画を観てズキューンときてww、一番観たかったドンソクビクター&ヘジュンアンリの組合せ!

めっっっちゃ良かったです!

練習動画の雰囲気だとお兄ちゃんビクター&弟アンリという感じになるのかな?と思っていたのですが、実際に観劇してみたら対等な「親友感」の強い二人だったように思います。

だからこそより一層、後半の「悲劇」があまりにもやるせなく胸が痛みました・・。

 

 

北極シーン。

私の場合、観劇している最中にストンと納得できる解釈が可能な回もあれば、その場ではなんとなく腑に落ちず観劇後にあれこれ想いを巡らせて納得できる解釈を探す回もあるのですが、この回に関しては後者でした。

今期、ビクター役の俳優さん達が北極シーンで多彩なアドリブ台詞を繰り出してくるのですが、あまりにも多岐にわたるのでその解釈に戸惑ってしまうことがあるんですよね・・。

ドンソクビクターもご多分に漏れず心の叫びのような台詞が多々あって、それを自分の中で納得できるように解釈するのに少し時間がかかってしまいました。

 

 

あれこれ思い返していくうちに、ヘジュンけむるへの憐みと同情、ドンソクビクターへの憐みと同情、この厳然たる悲劇への暗澹たる想い・・。

様々な想いが渦巻いて、なんだかとても胸が苦しく切なくなって、グスグス泣いてしまいました・・。

ああ、これが「フランケンシュタイン」なんですよね~・・。

 

 

と、しんみり(?)したところでレポに突入!

 

 

☆  1幕

 

<ウォータールー>

 

「アンリ・デュプレ!」とイイ声を張り上げながら登場したドンソクビクター。

軍服が似合っていてめちゃめちゃ格好イイ!!

カツカツカツと颯爽と歩いてきてもう一度「アンリ・デュプレ!」と呼び、さらに重ねて「アンリ!」「デュプレ!」と右腕を振り下ろすような振りつきで呼んでいました。

どれだけ探してたの~?という感じで、登場シーンからぐっと心を掴まれました♡

 

 

<ただ一つの未来>

 

3演の時のドンソクビクターはもっと所作がビシっとした感じで、その方が私の好みだったのですが・・。

でも、お気に入りの数々の所作(大きく腕を広げたり、腕を順に突き出していったり、欄干に手をついて身を乗り出したり、嫌みっぽく手を叩いたりww)が観れたので満足です。

ドンソクビクターとヘジュンアンリの声の相性も良く、素敵なハーモニーとテンションの上がる旋律に、こちらの気分もめっちゃ高まりました♡

 

 

ウェリントン将軍の「唾飛ばし甲高い声攻撃w」に対しては無反応なドンソクビクター。

でも、アンリの元に行ってそのマネはするwww

ビクターと同様に無反応に「質問ですか?命令ですか?」と返すヘジュンアンリ。

そんなアンリにドンソクビクターは「笑えよ・・」と言った後からの「お願いだ、友よ」でした。

 

 

ここの「ぷったぎやちんぐ」のシーンは、私にとって萌え所シーンの一つだったのですが、今期は今のところ3演の時より皆さん少し軽めな感じで台詞を言うので、個人的にはちょっぴり残念!

ドンソクビクターには、以前の様にもっと「たらしっぷり」を発揮していただきたいっ!

でも、台詞を言うときに顔は近いですけどねww

 

 

<一杯の酒に人生を盛り>

 

3演よりも酒グセが悪くなっているドンソクビクターww

「けーせっき~!」と絡まれると「わんわんっ!」って返したりwww

テーブルの上に乗ってはちゃめちゃな?ダンスを踊っちゃったりwww

介抱するヘジュンアンリは「ビクター・・、ひどく酔ってるな」的なフランクさ。

アンリの「一杯・・・やるか?」に対するビクターの返答も「いいね!」という感じで、対等な「親友」感が観ていて微笑ましかったです。

 

 

<君の夢の中で>

 

美しく澄んだ穏やかな声で歌うヘジュンアンリ。

対して、膝からくずおれ涙に咽ぶドンソクビクター。

跪いた自らの大腿を拳で何度も打ちつけるビクターの姿がなんとも痛々しかったです・・。

ヘジュンアンリは絞首台への階段をしっかりとした足取りで昇っていき、「君と共に新しい世界を思い描くことさえできるならば 僕は」の「なん(僕は)」を強く強く歌った後・・。

漏れるような笑い声で笑ったんですよね。

その笑い声は達観的というより、どこか揺らぎというか切なさがある笑い声で、あたかも自分を鼓舞しているようで、胸が苦しかったです。

そこから、何かを振り切ったようなラストフレーズの高音での歌い上げ。

ぐっときました・・。

 

 

<偉大なる生命創造の歴史が始まる>

 

左手に生首をかかげ、右手に桶を下げ、超低音で歌うドンソクビクター。

地獄の底から這いあがってくるような低音歌唱が凄かった!

そこからの歌唱は、もう圧巻。

狂気と熱情が入り混じったようなうねりの渦に、目も耳も奪われる感じ。

そして噂には聞いていましたが、ラストの「俺が生命を創造したんだ~~!」の叫びの迫力たるや!

ドラマティックここに極まれり!という感じで、会場もめっちゃテンション上がってました!

 

 

☆  2幕

 

<あなたなしでは>

 

ドンソクビクターの指輪出し(?)は、マジック形式ではなく普通にポケットからごそごそww

まあ、そこは別にマジックである必要性はまったくないので、普通でいいと私も思いますw

跪いて指輪をはめてあげるシーンは、その格好良さにクラクラww

ここのナンバーはメロディも歌詞も甘いんですが、ジュリアが歌っている間にドンソクビクターが入れるアドリブ台詞「など(僕も)」の言い方がめちゃめちゃ甘い!

トキメキました♡♡

 

 

<行方不明>

 

再会時から怒りのオーラを立ち上げるヘジュンけむる。

アンリと呼ばれた時の怒りは哀しみを帯びて激しさを増し、ヘジュンけむるの「怒り」は「哀しみ」と表裏一体なのだということをひしひしと感じました・・。

 

 

<そこには>

 

「北極にはクマがいるよ!北極グマ!」というカトリーヌの言葉に、ヘジュンけむるは「行きたい・・行きたい・・・・」って泣くんですよね・・。

ここ、本当に胸が詰まります・・。

虐待を受けた圧倒的な孤独を抱えたこの生命体は、どれほどの苦しみを抱えているのか・・。

カトリーヌに「あんにょん」を教えてもらって、温かい交流に初めて「笑う」ことを覚えて、そのカトリーヌが行きたいという、人間がいない「北極」。

この時のヘジュンけむるにとって、「北極」とは桃源郷のような場所だと感じたのではないでしょうか。

オーロラに向かって大きく手を振る二人の姿が、とても切なかったです・・。

 

 

<私は怪物>

 

カトリーヌに薬を盛られ、チュバヤとの対決に敗れて壊れた人形のように横たわっているヘジュンけむる。

カトリーヌが連れてこられると、身動きすら不自由な身体なのに一生懸命「あんにょん」の手振りをするんですよね・・。

「そんな目で見ないで!」と怒鳴られても、蹴りを入れられても、それでもカトリーヌが視界から消えるまでずっと「あんにょん」を繰り返していました。

何度も・・何度も・・何度も・・・・・。

コレ、泣くしかないですよね??

 

 

すべての気力を無くしたように力なく横たわっているヘジュンけむるへのジャックの嘲弄。

ドンソクジャックは、けむるの動かない腕を持ち上げてわざと落としたりとか、やるコトが本当に憎らしい!

ヘジュンけむるが「人間」に対して憎悪を抱くのも無理はない、というかむしろ当然とさえ思える「人間」の醜悪さ!

ヘジュンけむるの復讐の対象は、創造主であるビクターへと集約していくけれども、根底には「人間」への嫌悪というか絶望があるのだろうな、という気がしています・・。

 

 

ヒュ~・・ともの悲しい風が吹き、静寂の中打ち捨てられ一人横たわっているけむる・・。

ヘジュンけむるの歌い出しは、透明感のある澄んだ美しい歌声。

誕生から今までの短い人生に区切りをつけ、また新たに生まれ変わったような・・。

自らの存在意義を問い、その怒りを創造主にぶつけ、憤怒に染まっていく様子は、見ていて本当に苦しかったです。

自らの首をもぎ取ろうと必死になる姿・・・・。

コレ、泣くしかないですよね??

 

 

<その日に私が>

 

ラストのドンソクビクターの台詞は「一人にしないで」。

そこから子供のようなビクターの泣き声が暗転した後にもずっと続き・・。

そのまま<傷>のシーンという流れになるので、ビクターの泣き声が<傷>の子供の泣き声に繋がっていくように感じられました。

この感覚は三演の時以来。

今期は<傷>のシーンの子供の衣裳が、三演の時の少年ビクター寄りだったグレーの衣裳からベージュの衣裳に変わっていたため、子供を「人間」の象徴として解釈することが多かったです。

しかしこの回は、前述したように泣き声の連続性を感じ、「人間」の象徴であると同時に「ビクター」の姿も投影している、そんな風に感じました。

 

 

<傷>

 

子供を湖に突き落とした後の「くろじま(そうはならないで)」。

一度めは平坦な口調で子供を落としながら言い、その後「くろじま~・・・くろじま・・」と涙に咽びながら繰り返したヘジュンけむる。

その後、湖を覗き込むようにして突っ伏して泣き続けるんですよ~・・・。

コレ、泣くしかないですよね??

 

 

ひとしきり泣いた後、ようやく「ひとりの怪物がいたんだ ただ傷の中に住んでいた」と歌い出したのですが、涙・涙でようやく声を絞り出して歌っている感じで、めちゃくちゃ切なかった!!

「あの世界の果て そこに 幸せ そんなものがあるのだろうか」と続くのですが、この「幸せ」という言葉を、絶望に満ちたような底冷えのする低い声で、ヘジュンけむるは吐き出しました。

そんなものは絶対にない、自分には絶対にない・・。

胸が締めつけられるような絶望感と、その後に続く泣き声のスキャット・・・・・。

コレ、泣くしかないですよね??

 

 

<絶望>

 

ビクターはエレンの亡骸を抱えて生命創造装置の元に駆けつけますが、その装置はけむるによって完全に破壊されています。

私はこの回、<傷>のシーンの子供を「人間の象徴」そして「少年ビクター」という二重の意味で捉えました。

そして「くろじま(そうはならないで)」という、切実を極めたようなヘジュンけむるの願い・・。

 

 

「君も大人になったら 人間のふりをするだろう そうはならないで」

元々のこの台詞は、「人間の象徴」である子供に対して、闘技場にいた人々のような「醜悪な人間」にならないでほしいという願いだと、私は解釈しました。

そしてもう一つの意味である「少年ビクター」に対しては「君も大人になったら 神のふりをするだろう そうはならないで」と言っているように感じたのです。

 

 

生命創造という神の領域を侵す大人になってほしくなかった・・。

ヘジュンけむるが生命創造装置を破壊したのは、単にエレンの蘇生を妨害するためだけではなく、そういう意味もあったのではないか・・。

そんな風に考えています。

しかし、ビクターはまた同じことをしようとした・・。

ヘジュンけむるの怒りの激しさは、上記のように解釈するとより一層納得できるような気がしています。

 

 

<後悔>

 

ヨレヨレでボロボロのドンソクビクター。

立ち上がることさえできないほどの衝撃と苦痛・・。

ジュリアにコートをかけようとして一旦それをやめてジュリアを抱きしめ、再びベッドに横たえた後にコートを途中までかけ、額に口づけしてから丁寧に身体を覆ってあげていました・・。

切ない・・。

 

 

<北極>

 

乱闘の後、けむるが銃を奪ってビクターに銃を向ける場面。

ヘジュンけむるはビクターの額に押し当てるかのように銃を構えました。

この近さが、ヘジュンけむるの「怒りの強さ」=「哀しみの強さ」を表しているかのよう・・。

銃を持ちかえてビクターに渡し、ビクターが発砲。

がくっと膝をつき、「その片足では・・」と語り始めるヘジュンけむる。

途中、「お前は一人になったんだ」のあたりで後ずさるドンソクビクター。

そこで、ヘジュンけむるは声色を高めの声に変えて「ビクター・・ビクター・・友よ」と語りかけました。

 

 

ビクターに向かって震える手を差し出すヘジュンけむる。

愕然とした様子で手を差し伸べるドンソクビクター。

ビクターの手がけむるの頬に触れたかどうかという瞬間、「わかっただろう。これが私の復讐だ」の言葉を残してヘジュンけむるは息絶えました・・。

 

 

しばし呆然とした後、高所にのぼって「あー」「あー」「あ~~!(最後は絶叫)」と声を上げた後、泣きながら「俺に、何でだよ!」「俺が何をそんなに間違ったっていうんだ!」と叫ぶドンソクビクター。

倒れ込み斜面をずり落ちつつ「起きろよ!もう一度話してみろ!」と泣きながら・・。

立ち上がって「お前、嘘だろ!」「お前、嘘だ~~っ!(の、こじんまりや~っ)」と叫んだ後にけむるを後ろから抱きしめて慟哭。

そして最後の歌い上げ・・という流れでした。

 

 

ドンソクビクターは、何に対して「こじんまりや~!」と叫んだのか・・。

私はその意味を観劇後もずっとぐるぐると考えていました。

ヘジュンけむるは声色を変えて「ビクター・・ビクター・・友よ」と語りかけましたが、その声はあまり「アンリらしく」はなかったんですよね・・。

ビクターも、その後「アンリ」と呼びかけることはありませんでした。

ドンソクビクターは声色を変えて「ビクター・・友よ」と呼びかけたけむるに対して「それは嘘だ!お前はアンリじゃない!」という意味で「の、こじんまりや!」と叫んだのではないか・・。

これが、私が行きついた解釈です。

 

 

ヘジュンけむるは、アンリの記憶は持っていたけれども主たる人格はずっと「怪物」のままだったと私は解釈しています。

ヘジュンけむるは本当に可哀想で同情せずにはいられない生命体ですが、彼は意図した復讐を完璧に遂行したとも言えると思います。

しかし、そこには「幸福」はなかった・・。

あれほど憧れた「北極」の地で、復讐は遂げたものの孤独も痛みも傷もすべて抱えたままでこの世を去った哀しき生命体。

哀れでなりません・・。

 

 

一方、ビクターの立場に立てば、たしかに不可侵の領域を侵した事に加え、自らが生み出した生命体に対する責任を果たせなかったという過ちはあるにせよ、ここまで苛烈な復讐を受けなければならないほどの罪だったのかと考えてしまいます・・。

 

 

ヘジュンけむるも可哀想だし、ドンソクビクターも可哀想だし、やりきれない想いが渦巻く厳然たる悲劇の前にただただ呆然とする・・。

私にとってこの回は、そんな舞台でした・・。

切なすぎましたっ!!!!