コリー:ジノ
ヨンジェ:ヒョジョン
ウネ:ソン・ムンソン
ボギョン:キム・ゴネ
消防士:チェ・イニョン
ジス:パク・ジェウン
ソウル芸術団がまた一つ名作を世に送り出してくれました!
チョン・ソンラン氏の韓国科学文学賞大賞受賞作である「千個の青」をミュージカル化。
脚本・音楽・演出・演者さんのパフォーマンス、どれもが素晴らしかったです!
ソウル芸術団の作品は公演期間が短いのが難点。
今回はご覧になれなかった方も多いと思いますが、再演の暁にはぜひとも観劇候補に入れて頂きたい作品です。
熱烈推奨!!
舞台は近未来の韓国。
競走馬のより速いスピードを求めて開発された、騎手ヒューマノイド。
その一つC-27は、研究者のミスで学習チップが誤って挿入されてしまいます。
そのために風変りなヒューマノイドとなったC-27は様々なことを学習していき、相方の競走馬であるトゥデイの「感情」をも察知するようになりました。
走る喜びに満ちていたトゥデイでしたが、無理なレースの連続で脚に故障を抱えるように・・。
脚の痛みのため、トゥデイは走る時幸せではないと気づいたC-27は、トゥデイを止めるために自ら落馬。
下半身が壊れて役に立たなくなり、廃棄処分を待っている時にヨンジェと出会います。
ヨンジェはロボット技術に天才的な才能を持つ高校生。
ロボット研究員になることが夢でしたが、研究プロジェクトの最終面接で失敗してからはバイトに明け暮れ鬱々とした日々を過ごしていました。
C-27を偶然発見したヨンジェは、彼を自宅に持ち帰り修理することを決意し、緑色の帽子をかぶる彼をブロッコリーにちなんで「コリー」と命名しました。
ウネはヨンジェの姉で、小児麻痺のため7歳の時から車椅子生活を余儀なくされています。
自由に行動できないウネにとって、自由に駆け回る馬は憧れの対象。
とりわけトゥデイには深い愛情を寄せ、トゥデイの世話をすることに喜びを見出していました。
ボギョンはヨンジェとウネの母親。
夫である消防士を殉職で失い、女手一つで二人を必死に育ててきました。
生活維持のために、夫の死亡保険金をウネの手術代よりも店舗開業資金に使わなければいけなかったことに自責の念を抱いていて、ヨンジェに対しても経済的な事情やウネの事で我慢を強いていることに負目を感じています。
ヨンジェ・ウネ・ボギョンの三人の家族は、お互いを思いやる気持ちは持ちつつも、お互いへの申し訳なさからぎこちなく距離を置いているような関係。
そんなどこかギクシャクとした家族の中に純粋な心を持つコリーが入ってきたことで、彼女たちの心に少しずつ変化が現れはじめます。
天涯孤独だったヨンジェにはジスという友達ができ、引きこもりがちだったウネには外に飛び出していく勇気が芽生え、時が止まったままだったボギョンは歩き出すきっかけをコリーから貰い・・。
一方、競走馬トゥデイは脚の故障のために安楽死させられることが決定的に。
ヨンジェとウネの姉妹は、コリーと共に周囲を巻き込みながらトゥデイを救う解決策を探していき・・というストーリー展開です。
せわしなく動いていく世界から疎外された者たちが手を取り合い、お互いを思いやり、ゆっくりゆっくりと歩みを始める物語。
「わたしたちはみんな、ゆっくり走る練習が必要だ」
原作小説の帯にあるこのキャッチフレーズが、観劇後じんわりと胸に染みわたります。
脚本は、「ラフヘスト」を手掛けたキム・ハンソル氏。
とにかく、この脚本が素晴らしかったです!
あの原作をこの脚本にまとめ上げてくれたこと、感謝しかありません。
音楽は、「ダーウィンヤング」を作曲されたパク・チョンフィ氏。
これがまた琴線に触れる素晴らしい楽曲ばかり。
コリーを命名する時の「コリー、コリー、コリー♪ ブロッコリー、コリー♪」の曲は中毒性が高くて、今でも口ずさんでしまいます。
演出は、「マリー・キュリー」を演出したキム・テヒョン氏。
原作小説は、近未来を舞台にしたSF小説でありながら、とてもアナログ的な情感が主題の作品だと思うんですよね。
その作風を見事に表現した演出が素晴らしかったです。
コリーとトゥデイはアナログなパペットを使用し、救助ロボットなどは最新技術を搭載した実際のロボットを使用。
舞台美術にもハイテクとアナログが混在する感じが、とてもあたたかい雰囲気を作り上げていたように思います。
演者さんたちのパフォーマンスも秀逸。
コリー役のジノさん、めちゃめちゃ良かったです!
透明感のある歌声が純粋なコリーにピッタリ。
歌唱力抜群で安定感があるし、歌唱表現も演技も素晴らしかった!
純粋すぎるコリーの言動に、思いっきり泣かされてしまいました・・。
周囲を固める芸術団の皆さんの素晴らしさは言わずもがな。
満足度がめっちゃ高かったです。
心に深く響く、美しくて優しい作品。
「ダーウィンヤング」「ナビレラ」と、ソウル芸術団作品の日本版は成功例が続いているので、本作もぜひ上演を検討して頂きたいです~♪