「ホワイトアルバム」こと、ザ・ビートルズの唯一の2枚組オリジナルアルバム「ザ・ビートルズ」(1968年)の50周年記念バージョンが発売されました。

 

6枚組「スーパーデラックス・エディション」もあるようなのですが、とりあえず3枚組の「デラックス・エディション」を聞いてみました。

 

■3CDデラックス・エディション
<期間限定盤> UICY-78857/9 価格:3,600円+税

*デジパック仕様
*24ページ・ブックレット付
*ポスター付
*英文ライナー翻訳付/歌詞対訳付
*日本盤のみSHM-CD仕様

◇CD 1 & 2 : 『ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)』2018ステレオ・アルバム・ミックス
◇CD 3 : イーシャー・デモ

 

ジャイルズ・マーティンはこれらの“ニュー・ミックス”の制作に当たって、父ジョージ・マーティンがプロデュースした68年版のオリジナル・ステレオ・ミックスを参考にしたという。

 「”The White Album”をリミックスする際、僕たちが心がけたのは、ザ・ビートルズがスタジオで奏でていたそのままのサウンドを届けることだ。」これは、ジャイルズ・マーティンが今回のパッケージに寄せた序文の一節だ。「僕たちは、”Glass Onion(ガラスの玉葱)”の皮を1枚ずつ剥がしていった。そうすることで、アルバムに親しんできた人たちにも、今回初めて”The White Album”を聴く人にも、きっと作品に没頭してもらえると思った。この、歴史上例のないほど刺激的で、多様性に富んだアルバムにね。」

 

 

で、聞いてみたところ、かなり音に厚みがあるし、シャープでクリアーになってますね。これはこれでアリだと思いました。確かに若い人が聞いても楽しめるんじゃないでしょうか。前回出たリマスター盤と聴き比べてみると面白いですね。

 

またイーシャーデモってなんだよ、と思ったんですが、イーシャーのジョージの自宅で録音されたアコースティックデモ集でした。

「Child Of Nature」って曲が、「ジェラスガイ」の原曲だったんですね。その他「ポリシーン・パン」とか「アビイロード」のメドレーで使われる曲がもうこの時点であったんですね。これも面白かった。

 

 

 

「ホワイトアルバム」のセッションの頃から、ビートルズの心はバラバラになり、レコーディングの雰囲気は最悪だったという話は有名です。ビートルズのエンジニアだったジェフ・エメリック「ザ・ビートルズ・サウンド・最後の真実」という本に、その雰囲気がよく描かれています。

 

 

数日後、ビートルズの四人とジョージ・マーティン、そしてもちろんヨーコ・オノが、コントロール・ルームでバッキング・トラックのプレイバックを聞いていた時のことだ。ジョンがなにげなく、彼女にどう思うかと訊いた。するとだれもが驚いたことに、彼女は批評めいたコメントを口にした。

「かなりいいと思うわ」彼女はか細い声でいった。「でも、もうちょっとテンポを速くした方がいいんじゃないかしら」

コントロール・ルームは水を打ったように静まった。全員の顔に、ショックと恐怖の色が浮かんだ。ジョンの顔にまで。みんなの視線がジョンに集まったが、彼は何もいわなかった。いかにヨーコに夢中でも、ここで彼女の弁護に立つのは、火に油を注ぐだけだと判断したのだろう。

 

「ホワイトアルバム」のセッションから、ジョンは横にオノ・ヨーコをはべらすようになり、険悪な雰囲気になっていったようです。ポールとの対立も目立つようになります。

 

ポールの顔に暗雲が立ちこめる。どうやらはじめて聞いた「レボリューション9」に、すっかり失望させられてしまったらしい。曲が終わると気まずい沈黙が流れた。

ジョンは期待をこめてポールを見たが、彼は「悪くない」としかコメントしなかった。ありていにいうと、気に入らないということだ。リンゴとジョージ・ハリスンは、ひとことも口をきかなかった。見るからに困惑し、この二人の板ばさみになるのは勘弁して欲しいと思っているのが、手に取るように伝わってきた。

「悪くないって?」ジョンがあざけるようにいった。「どうせおまえにゃちんぷんかんぷんだろうよ。けどマジメな話、この曲はオレたちの次のシングルにするべきだぜ!これからのビートルズは、こっちの方向に進まなきゃダメなんだ」

すると恐ろしいほど空気の読めないヨーコが、「わたしもジョンに同感よ。最高だと思うわ」と発言し、気まずさに追い打ちをかけた。

 

険悪な話だらけの「ホワイトアルバム」のレコーディングの中で、唯一心温まるエピソードは「オブラディオブラダ」(ポール作)の話ですかね。ジョン・レノンは「オブラディオブラダ」を毛嫌いして「クソみたいな曲(ジョンの口癖)」と言い放っていましたが・・・。

 

「そしてこのクソったれな曲は」と彼は歯をむいて付け加えた。「こうしてやればいいんだ」

怪しげな足取りで階段を下り、ピアノに向かったジョンは、力まかせに鍵盤を叩き、この曲のイントロになる有名なオープニングのコードを、むちゃくちゃなテンポで激しく叩いた。

と、ひどく興奮した顔つきのポールが、ジョンの前に立ちはだかる。僕は一瞬、殴り合いになるのを覚悟した。

「わかったよ、ジョン」彼は狂乱状態にあるバンド仲間の目をまっすぐ見据えながら、きっぱりと言い切った。「きみのやり方でやってみよう」

たしかにポールは怒っていたのだろう。だが、心の奥底では、長年のパートナーが自分の曲のためにアイデアを出してくれたことを、うれしく思っていたのではないか。

 

結局ジェフ・エメリックはこの空気に耐えられず、レコーディングの途中で降板してしまいます。このエメリック本は、ポールびいきとか色々な意見はあるんですが、当時のビートルズの創作過程や人間関係が生々しく伝わってきて、最高に面白い本でした。600ページ以上あるのを数日で読んじゃったぐらいです。

 

 

そのジェフ・エメリックが先月、2018年10月2日に逝去されました。「リボルバー」や「サージェントペパーズ」の奇跡的なサウンドは、エメリックの功績が大きいということを知る上でも、「ザ・ビートルズ・サウンド・最後の真実」はファン必読の書であると思います。


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