〇大正8年全生庵発行。これは昭和38年に復刻されたものです。大正8年当時には山岡にかかわった人たちも多数存命の時期で貴重な文献です。

 

〇現代口語文に近い形になおしました。

〇鉄舟本の多くが引用している部分がありますがそのまま載

せます。

 

●居士は人が揮毫の謝礼を呈すると有難うといって快く受けそのままそれを本箱の中に突っ込まれた。しかして、困窮者が来て、救助を請うと居士は自ら玄関へ出てそり実況を察しかの本箱の包みを解いてそれ相当に恵与された。

 

●千葉立造氏はこの様子を見受けたから、先生御揮毫の祝儀はみな人に遣わすのですかと聞くと、居士は予は一体字を書いて礼を取る気はないが、困ったものにやりたいと思ってくれれば貰っている次第だといわれた。

 

●居士は書を以て済世の方便としておられた。されば、一枚ごとに「衆生無辺請願度」の句を唱えつつ揮毫された。しかして、その終生の揮毫は社会の公益、教育事業、災厄救助、各宗教の慈善授業、各宗教の寺院荒廃等のためであったと。

 

〇鉄舟の書は草書が多く、一気に運筆していくので、門弟の中に墨をする係を決めて、できると別の門弟が印を押していました。揮毫は修行の一分でした。