○坊城俊良著 宮中五十年 明徳出版 昭和35年刊

○坊城俊良1893-1966 幼少にして侍従職出仕以来、宮内官として皇室に奉仕した。旧伯爵。

○明治天皇1852-1912

○英照皇太后1835-1897(孝明天皇女御 のち皇太后に冊立)

○昭憲皇后1849-1914(明治天皇皇后)

○貞明皇后1884-1951(大正天皇皇后)

 

●やさしい皇后様と少年達

 

●昭憲皇太后は、ご承知のように、おからだはあまりお強くなかったので、寒いときには

葉山御用邸または沼津御用邸に、避寒滞在されることになっていた。その滞在地優に一度は必ず御機嫌伺いに参上したものであった。

 

●その頃、子供のこととて、御用邸の皇后様のところへ御機嫌伺いに行くことは大変な楽しみで、その前夜などはうれしくて気が浮き立って、眠られないほどであった。

 

●修学旅行の前夜ぐらいではなかった。その当時の気持ちを考えてみると御用邸に行くことのもの珍しさ子供心にあったと思うが、やはりお優しく、お慕わしい皇后様にお目にかかれることが、素直にうれしかったのである。

 

●御用邸に着くと、すぐ奥へ行って、子供ながらに携えたお土産を献上した。お土産はたいがい人形とか、投扇、またはそのときどきの珍しい品物を選んで持参し献上した。皇后様は、このような子供達の献上品を大変喜んでおうけになられた。

 

〇明治期の雑誌や本では皇室関係を必要以上に美化して伝えるものが多いのです。坊城さんの本は昭和35年ですから、明治期のものよりも実際に近いものだとすることができます。両陛下のお人柄は素直で明るい方であったという印象です。