○坊城俊良著 宮中五十年 明徳出版 昭和35年刊

○坊城俊良1893-1966 幼少にして侍従職出仕以来、宮内官として皇室に奉仕した。旧伯爵。

○明治天皇1852-1912

 

●私が十五の時、はじめて馬に乗れといわれた。このことあるを予期して多少の心得は用意していたので、どんな馬を与えられるかと思ったら、一番おとなしい、あまり動かない、安全第一の「鬼石」という馬に乗れといわれた。

 

●名は強そうな「鬼石」だが、おとなしすぎて面白くない馬だ。この馬に半年ばかり乗せられた。子供だから安全第一という思し召しであったらしい。その後にようやく、も少し鋭敏な馬に乗せられた。

 

●初めて乗馬をお言い付けになったとき、ネルのシャツの下着をお出しになって、これを直して着よと下げ渡しになった。別段、乗馬ズボンというものではなく、普通のシャツであったが、大きかったので直して着られるというお考えであった。

 

●私は、有り難くいただいて、縫い直して、ズッと乗馬の時着用した。(乗馬といえばハイカラな服装をする貴族趣味とおもわれがちだが、明治天皇の場合は全く違っていたのである。)

 

○明治天皇は着衣をしばしば下賜されています。シャツや足袋の写真を見たことがあります。不確かですが明治天皇の褌は宮城内で焼却したと読んだことがあります。