○坊城俊良著 宮中五十年 明徳出版 昭和35年刊

○坊城俊良1893-1966 幼少にして侍従職出仕以来、宮内官として皇室に奉仕した。旧伯爵。

○明治天皇1852-1912

 

●明治天皇は乗馬が非常にお好きであった。私がお側に上がった頃は、御自身でお乗りになることはなかったが、乗馬は三、四十頭もいた。それ以前はよほど御熱心であったと見えてその名前も全部ご存じであったし、またそれぞれの馬の能力や性格までも知っておられた。

 

●ときどき、侍従や主馬寮の技師達へ、今日は乗馬をやれ、とおいいつけになったが、その時は、ちやんと誰はとの馬にとご指定になった。乗り手と乗馬の適性を御記憶によって組み合わせておられたわけである。乗馬がお好きであっただけに、馬を愛され大切にされたことはもちろんで、これらの馬の中で病気にかかったものあると、すぐお届けしなければならなかった。

 

○明治天皇の乗馬は、明治初年薩摩系の侍従や山岡鉄太郎によって手ほどきされたのではないかと想像されます。西郷隆盛は習志野での陸軍演習に陛下に扈従し、風雨の中テントで一夜を過ごされたとあります。維新まで御所の中で過ごされ、女性化した陛下に質実剛健の気風をお育てすることに力を入れました。