○「海軍反省会3」PHP研究所 2012年刊

○当時ドイツ武官の小島秀雄(海兵44期)1896-1982が日ソ中立条約に関連する証言をしています。

 

●よくドイツが日本と防共協定を結びながら、いつのソ連と不可侵条約を結ぶ。今度は不可侵条約を結んでいるときに、飛び込んで戦になる。(大東亜戦争のことであろう)そういうような、ある意味で不信行為を平気でやる。

 

●私は戦争中にドイツでしきりにいわれたことは、日本とドイツは同盟国なのに、ドイツがソ連を攻めた時に、なぜ日本はソ連に向けて戦をしなかったんだといわれるんです。それで僕はそんなことだれが考えているんだ。

 

●お前の所(ドイツ)は、防共協定を作っておいて、そして独ソ不可侵協定を作る。今度は独ソ不可侵協定を作っておいて攻め込んでいく。日本と違える事ばかりやるから、日本は面食らっている。お前の方が日本を裏切っている事が多いよ、と私はいうのです。

 

●ドイツ人はなぜそういうことを言うのかというと、どうもね、大島(大島浩大使)さんがいったか知らないが、ドイツがソ連を叩けば日本もソ連を叩くよ、というようなことをよくいっていたらしい。それでドイツにはソ連を叩かせる、そういう腹があったらしいですね。

 

●それがドイツ人にドイツの党人や陸軍人にはそう映った。そういうこと言うんですよ。私らはリッペントロップ(ドイツ外相)の所へ行ってドイツはなぜソ連と戦をしたんですかと聞いたんです。ソ連と戦をしたから、一人になった。リッペン曰く、ソ連というやつが、ドイツが苦しいときに立ち上がってくる。我々としては苦しくないときにチョットフランスを片付けて、陸軍が余っている時ならソ連と戦えると思ったんだ。

 

●もう一つはソ連がバルチック海でドイツの島を欲しいといった。そういっていました。またバルカンでドイツの勢力範囲に、ソ連が色々なことに文句をつける。ソ連というやつは戦をやるんだといわんばかりでね。あんな難しい戦になるとは予期しなかったのは事実でしょう。

 

●あんなひどい冬が来るとは思わなかった。ドイツの装備が不十分だ、それははっきりといった。ドイツ兵に防寒の設備が十分でなかったという事をいった。それで戦争は思った通りには行かなかった。しかし、早くモスコウの周囲は囲んでおるんですね。スターリングラードだってかなりの軍を出しているのに負けました。

 

●私が(ドイツへ)いってから、日本におったマスキーという陸軍武官でおった人が、軍団長というんですかね、一個師団の軍団長。東部戦線にいっておって帰ってくるとよく私の所へ来てね。彼は訴えに来るんですよ。東部戦線というのは実に嫌な宣戦だということをいうんですよ。

 

●なぜかというと、ドイツの撃った弾はソ連の戦車に当たっても貫かない。非鉄金属がなくなった(このために特殊鋼が不足している)ソ連の撃つ弾が、ドイツの戦車を貫くんだ。それはアメリか辺りからソ連に対して十分な材料が入るから、ソ連の方は強化されて、ドイツは非鉄金属がなくなっちゃって、撃った弾が貫かなくなったと嘆いていました。

 

○アリューシャン列島からダッチハーバー経由でソ連はアメリカから軍事物資の支援を受けています。日本はそれを承知しているのですが、日ソ不可侵条約のために攻撃することができませんでした。

 

●それだけにドイツの士気が落ちて東部戦線で非常に苦戦したこれが実情なんです。ドイツとしてはソ連と戦をすることは、結局は重荷になって、しかもレニングラード辺りが退却したいというのに、退却しちゃいけないという電報を打っている。そういう電報を打ったからドイツ軍は降伏したわけです。

 

●ドイツ陸軍のヒットラーに対する反感というのがだんだん大きくなって、フランス戦線でもフランスの占領軍には、ヒットラーの反対運動が起こった。最後にはヒットラーは自分の党員も信用できなくなった。党員のうちでゲッペルスだけが信用できる。陸軍がもちろん将軍連中が、暗殺事件でああいうことで、陸軍でヒットラーを殺そうとした。陸軍は信頼できない。それでとどのつまり、海軍だけを信用した。そうなってしまった。

 

○ビスマルク以来のドイツ陸軍は精強で知られています。しばしば陸軍の不満が現れますが、ヒットラーが独裁にまかせて神がかり的な命令を出して現場を混乱させます。ドイツ陸軍の首脳にとっては軍事的に素人の「ボヘミアの伍長」は目障りになったのでしょう敗戦が続けば、自分たちのかわいい部下を殺してしまうことになるからです。

 

●デーニッツという人は潜水艦屋で、立派な男です。そして自分は潜水艦戦をもっとやりたいと思うのに、潜水艦の建造が遅れて、彼の思い通りにはいかなかったんでしょう。最後にはヒットラーはデーニッツだけを信用した。

 

●デーニッツは信用されて迷惑したと自分では言っていた。東部戦線は敗北し、最後の総統になったデーニッツは、外地から200万人の人間(兵員)を運んだ。それは、ドイツで感謝されている。

 

○カール デーニッツ 1891-1980 海軍元帥。ヒットラーの死後総統となり、連合国との和平交渉をした。

 

●5月1日にヒットラーが死んで、5月6日には降伏している。ただ、ヒットラーの遺言というのを、後でデーニッツが手紙を見たので、それを見ると、あくまで戦えとあったらしいんです。

 

●デーニッツは、手紙を見ないで、ヒットラーにお前にまかすといわれたから、自分で処置をして後で手紙を見て驚いたと言っておりました。いずれにしてもヒットラーというのは、私に言わせれば半分ノイローゼようになっていたんです。

 

○ソ連との日独の交渉から、敗戦までを小島さんが、分かりやすく説明しています。

 

○この海軍反省会は戦後の1960年後半から、旧海軍の佐官クラスを中心に開かれた座談会の記録です。自分たちで作ったグループなので、雑誌に書かれた回想などが、海軍の立場をまもるために東京裁判での資料に制限されることが多いのですが、ここでは制限なく話されているようです。

 

○20年位前にNHKで特集番組で紹介されています。私は部分的に扱った本は読みましたが、全記録が発刊されていることは知りませんでした。この時点で証言者は物故していたと思います。

・( )は筆者注です。

 

○先日地元のブックオフでこれを見つけました。4冊出ていて9千円位でした。驚いてすぐ買いました。ブックオフでもこんなことがあるんだと感じました。ネットで調べると11冊出ているそうです。少しずつ読み進めたいと思います。

 

★昨日ヤクルトスワローズが、日本シリーズを制しました。6試合とも引き締まった好試合でした。リーグの覇者にふさわしい試合です。弱かったオリックスバッファローズは新潟では試合をあまり見ることができませんので、一人一人は個性的な選手で少しビックリしました。

 

★阪神タイガースの選手はまだまだこれに比べたら、中学生のようにしか感じられません。結局は監督・コーチの指導の違いでしょうか。もっとも球団社長にとってはクラスマックスにチョット出て、小銭を稼ぐぐらいが理想的なのかも知れません。

 

★スワレス、サンズは移籍のようです。外国人選手を整理して、有望な外国人選手を発掘して欲しいです。一番の望みは矢野さんの退任です。これだけやっていて、毎年リーグ最多の失策を重ねているのはどうしてなのか、訳が分かりません。終盤で見せたチームの内紛の雰囲気、これだけでダメだと私は失望してしまいました。