ヨーガスートラといえば、ヨーガの基本文献だと言われていますが、これはラージャ・ヨーガの教科書です。中村元先生によれば、カタ・ウパニシャッドを編纂したのとほぼ同じグループの作品だとされています。それ故、ヨーガの技術面でもこの両書は共通点が多くあります。

 

 ただ、ウパニシャッドが奥義書といわれるように、カタ・ウパニシャッドの技術的な範囲はヨーガスートラよりもずっと広く、その目指すところもはるかに高いものです。それはヨーガスートラが、初心者を対象とした独習本として書かれたからです。


 ヨーガスートラは、心の作用の止滅、純粋観照者の出現を経て、真我独存を目指します。カタ・ウパニシャッドは、真我を独存させてから、それを動かして本来のサマディに至る方法を説いています。ですからヨーガスートラはカタ・ウパニシャッドの準備段階にあたる文献なのです。


 ヨーガスートラを開きますと、抽象的で難解そうな文章が並んでいます。そのせいか最後まで読まない人が少なくないのですが、理解に役立つ文献が手元にあれば、それほど難しくはありません。それはラーマナ・マハーリシの「あるがままに」、クリシュナムルティの「クリシュナムルティの瞑想録」そして道元の「正法眼蔵」の3冊です。この3冊はカタ・ウパニシャッドを理解する上でも大変参考になります。