人参について

 

漢方医学では、人が健康に生きるためには、気・血・水がスムーズに流れることが大切であると考えています。

 

そのうちの気を補う代表的な生薬が「人参」です。御種人参・高麗人参・朝鮮人参などとも呼ばれていて、ウコギ科オタネニンジン属に属しています。
ちなみに野菜として食べられているニンジンはセリ科のもので、まったく別物です。

 

中国で2000年以上昔から伝わる本草書「神農本草経」に、代表的な上薬として収載されています。上薬とは命を補う薬という意味で、毒が無く長く服用することができ、不老長寿の作用があると言い伝えられてきました。

 

日本には奈良時代には伝わり、当時のものが正倉院に収蔵されているそうです。

非常に高価な薬草であった人参は、一部の人しか服用することができなかったのですが、江戸時代に徳川吉宗から命じられた田村藍水が国内栽培を成功させ、その種子が、各藩に栽培推奨のため分配されたことで、オタネニンジン(御種人参)の名で広まったと言われています。
それほど人参は、病気の治療や体力の回復に役だってきた生薬です。
今でも、多くの漢方薬に配合されています。

 

人参の作用

○大補元気-体に気(エネルギー・代謝)を強力に補い、疲労回復や病気を治す免疫力を高める

代表処方-独参湯、補中益気湯、麦味参顆粒(生脈散)

 

○安神益智-脳神経の働きを向上させ、分析能力、作業能力、認知能力を高める

代表処方-帰脾湯

 

○健脾益気-胃腸の働きを高め、消化吸収力を向上させる

代表処方-香砂六君子湯、六君子湯、四君子湯

 

○生津-体に潤いを与える(人参は熱性であるので、ほてりやのぼせが強い場合は使用を控える)

代表処方-麦味参顆粒(生脈散)

 

注意-人参は、元気を補う働きが強く、また体を温める働きがあるので、体が元気で、のぼせや顔が赤い、高血圧の人には向きません。(火に油をそそぐような状況になりやすいです)