「NHK100分de名著 中江兆民 三酔人経綸問答」平田オリザ(NHK出版) | 乱読家ぽちんの独り言

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中江兆民が明治の半ばに書いた「三酔人経綸問答」。

立場の異なる三人の酔っ払いが、問答形式で政治議論をする読みやすい思想書です。


登場する三人の酔っ払いは、民主主義を讃える理想主義者(非武装中立論)の「洋学紳士」、軍備増強を主張する覇権主義者の「豪傑君」、二人の議論に耳を傾け現実的に調停しようとする「南海先生」。


全く思想の違う三人ですが、互いに理解しようとする対話の姿勢、共感の姿勢をもっての論議になっています。


一番、中江兆民の考えを投影していると考えられる現実主義者の南海先生は「頭の中だけで考えていると先鋭化する。概念の中に閉じこもって過度に先鋭化しないためには、現実を見ることが必要だ」と説きます。

そして現実は一つではなく、一人一人、それぞれに現実は異なります。なので、折衷案ではなく、総合知的な対応が必要なのでしょう。


そして、人々を一番怖がらせているのは事実ではなく、想像力。いわば「風聞」が恐ろしいものに見せていると南海先生は説きます。


そして、「性急な改革ではうまくいかず、社会は徐々に変えていくしかない。政治には一発逆転のイノベーションは無い」とも説きます。



前々回に読んだ「訂正する力」でも書かれていましたが、政治の話になると「自分の考えが絶対に正しい」スタンスの方々が政治家を含めて一般人でも多く、そのことが日本がいい方向に変わっていけない原因になっていますね。


「訂正する力」とは少し違うかもしれませんが、お互いの考えや価値観を理解し認め合って、一致するところを見つけて、現実的に一歩づつ前に進んでいくことが、日本の政治に求められていると考えます。


「訂正する力」と合わせて本書もおすすめします。



ですが、、、、

本書の著者、平田オリザさんは、大好きな方の一人ですが、彼はほんまもんのリベラルであり、僕とは国家観、歴史観がかなり違うなぁと感じました。




「NHK100分de名著 中江兆民 三酔人経綸問答」平田オリザ(NHK出版)

【4月7日読了】

【オススメ度★★★★】