「1000日間の葛藤」尾身茂(日経BP) | 乱読家ぽちんの独り言

乱読家ぽちんの独り言

乱読とまち歩き、青山繁晴さんが好きなおじさんです。
コメント、フォロー、リブログはご自由に。
ただし、議論目的のコメント、意見の違いを尊重されないコメントは公開しません。






【『プロローグ』より引用】

2020年2月2日日曜日、令和最初の天皇誕生日は日差しの暖かな日だった。午後1時から新型コロナウイルス感染症対策専門家会議のメンバー10人ほどが急きょ「勉強会」を開いた。場所は、東京・白金台にある東京大学医科学研究所の会議室であった。

《中略》

「ルビコン川を渡りますか」。私はメンバー全員に聞いた。

皆の気持ちは固かった。作業を終えて会議室を出たときには、外は真の暗闇で暴風が吹き始めていた。

この日がその後も続く、専門家たちの葛藤の始まりだった。

【引用終わり】



「ルビゴン川を渡る」とは、「専門家は政府から聞かれた個別の課題に答える」という暗黙の境界線を越えること。

新型コロナ対策で、政府がなかなか見解を示さない中で、専門家として独自の見解を出し続けた尾身茂さんはじめ、専門家の皆さんの葛藤の記録です。


尾身さんは、「情報の不足」「専門家の役割、政府との関係が不明瞭」「専門家の仕事が属人的」「専門家の提言の意図が伝わらない」等の壁に直面しながら、現在の状況よりも半歩進んだ100を越える提言を出され、本来なら政治家が立たないといけない矢面に、専門家として立ち続けられました。


コロナ禍の3年間を振り返り、必ずやってくる次のパンデミックに国家として備えるために、政治を志す者にぜひ読んでいただきたい本です。


「1000日間の葛藤」尾身茂(日経BP)

【3月21日読了】

【オススメ度★★★★】