「サピエンス減少」原俊彦(岩波新書) | 乱読家ぽちんの独り言

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【『序』より引用】

現在の日本が経験している人口減少は歴史的な人口転換の帰結であり、先進国を中心に世界の多くの国々も遅かれ早かれ同じ道を歩むと考えてよい。したがって、この人口減少は 日本だけの特殊な事情によるものではなく、前代未聞の「国難」といった国粋主義的で排他的な捉え方をすべきではない。また政府の失政や誰かの陰謀によるものでもない。出生力の低下についても、晩婚晩産化/非婚無子化などの責任を若い世代に求めるべきではなく、直系家族制の伝統の衰退や、フェミニズムやジェンダーフリー的な社会的傾向など、様々な犯人探しを行ったとしても有効な対策には結びつかない。 基本的には、長年にわたり人類が進歩し豊かになり、平均寿命が延び長寿化する一方、結婚・出産あるいは移動に関わる個人の選択の自由が拡大してきた結果であり、そのこと自体は喜ぶべきことであり、今後も、この流れを止めるべきではないだろう。したがって、最終的には人類社会が個人の自由を最大限に尊重しつつ、社会全体の出生死亡移動などをコントロ ールして人口全体を定常状態に保つようにするしかない。しかし、そこに至るにはまだまだ多くの試行錯誤と時間が必要とされる。このため当面は、人口や出生数の減少を止めることをめざすのではなく、人口減少とともに出現する、「縮減する社会」の様々な課題の解決に向け、前向きに取り組むべきだと思う。それは十分可能であり、世界の他の国々や地域を結ぶグローバルな連帯と協力を通じより良い未来につながると確信している。

【引用終わり】



僕も少子化については、「政府の無策」を責める視点で発言することが多いのですが、本書は個人の選択の自由が拡大してきた結果であるとしていて、、、、僕も全てを国の責任にしてはいけないなぁと思い直しました。

あらゆる生命の本質は「増えること」にあり、その為に進化してきたと言えます。しかし、人間社会の問題である、少子化、人口減少は、「種の保存」よりも「個の尊重」が優先されるようになった結果であり、「生命の進化」という概念で捉えるのも一つの見方なのかもしれません。


人口減少を前提にこれからの社会を考えると、、、、拡大を前提とした資本主義経済の考え方を改めないといけないし、民主主義の意思決定のあり方も変えないといけない。

また、個の尊重は、「対立」「分断」をより深くする方向に動くと考えますので、「議論から対話へ」「差異の強調から一致点を探す」「相互尊重、相互承認」など、「精神性の進化」も同時に実現していかないといけませんね。


哲学者ヘーゲルの方法論(弁証法)や心理学者カール・ロジャーズの手法(パーソンセンタードアプローチ)等、自省を伴った人と人の対話がより求められるようになると考えます。

哲学カフェやエンカウンターグループを、もっと一般人に知ってもらわないといけないのかも、、、、



「サピエンス減少」原俊彦(岩波新書)

83日読了】

【オススメ度★★★