「100分de名著 ヘーゲル 精神現象学」斎藤幸平(NHKテキスト) | 乱読家ぽちんの独り言

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【『はじめに』より引用】

壮大にして奔放、難解にして破格。しかし、『精神現象学』は間違いなく今こそ読まれるべき一冊です。なぜならば、分断が進む現 代社会において、意見や価値観の違う他者と共に生き、自由を実現するための手がかりが、『精神現象学』には書かれているからです。 ヘーゲルの時代のドイツは分裂状態にあり、さらには、フランス革命や産業革命の影響で社会が激変し、 さまざまな対立や分裂が生み出された時代でした。厳しい現実を前に、ヘーゲルは気がつきます。みなが完全に同意して調和を生み出すような価値観や判断は存在せず、意見のすれ違い、ぶつかり合いは、この世から決してなくならない、と。

それでも、私たちは一人で生きていくことはできません。だから、 ヘーゲルはこう問います。完全にはわかり合えない他者と、共に生きていくためには何が必要か。どうすれば分断を乗り越えて、自分や相手の自由や価値観を押しつぶすことなく、社会の共同性や普遍 的な知やルールを構築することが可能なのか――そういった重要なテーマが「承認論」として論じられているのが『精神現象学』なのです。

【引用終わり】


⚫︎人類は「自由」を得ると同時に、意見や価値観の「対立」も強くなった。ヘーゲルの哲学的な出発点は、対立と分断を乗り越えて調和を生み出すにはどうすればいいのかにある。


⚫︎ヘーゲルは矛盾や対立こそが真理だと考えた。


⚫︎共有可能な「正しさ」をつくっていく過程は、傷つきながら学び成長する過程であり、「今の自分を否定して、今の自分でないものになる」こと。


⚫︎ヘーゲルの提唱した「弁証法」は、二つの矛盾する主張を統合する、新たな知に至るための方法論。自分の知が否定される矛盾に耐えて考え抜き、悪いところは棄て、良いところを残しつつ、より高次の知を生み出していく(アウフヘーベン)。


⚫︎アウフヘーベンの為の「承認」とは、「関係が対称的であること」「相手の自立性も一定程度は否定する」「自分もみずからの自立性を自己否定する」。


⚫︎つねに人間は他者と共にあり、その関わりの中で生きている。「私」と「私たち」は切り離せない。この事実をヘーゲルは「精神」という言葉で表そうとした。


⚫︎論破を試みる人の基本は懐疑主義にある。見方を次々と変えていき、論破のための主張を延々と繰り返す。論破を目的とした議論は何も生まない。


⚫︎ 人々は宗教という歴史的・文化的な実践を通じて「人間とは何か」「人生の意味は何か」といった問いと向き合い、自己理解を深めてきた。これは人間の営みにとって極めて本質的なこと。人類の歴史を考えるときに、宗教は単なる妄想であったと切り捨ててしまえば、歴史上の出来事の多くは意味のないものになってしまい、理解できなくなってしまう。


⚫︎すべてを「物質」で説明しようとする科学主義が、科学で説明出来ない次元を非真理として切り捨ててしまうなら、それ自体が「信仰」である。


⚫︎エビデンスは信頼関係があってこそ意味を持つ。分断という問題の本質は、エビデンスの正しさとは別のところにあるので、ファクトチェックでは事態は解決しない。





NHK100de名著」の放送を見て、わかったような気になっていたけど、、、、やっぱり分かっていないことが分かりました(笑)。


信頼していない相手との議論は、どちらが勝つか、どちらが正しいかを決める為のものになりがちですよね。

相手を信頼して、互いの考えや立場の違いを承認しあって、自ら傷つくことを恐れずに、自分が変わることを恐れずに、相手との一致点を見出すことが、本当の民主的な議論なのだと思いました。

なかなか出来ないことですが。。。。



100de名著 ヘーゲル 精神現象学」斎藤幸平(NHKテキスト)

81日読了】

【オススメ度★★★★