「縄文人と弥生人」坂野徹(中公新書) | 乱読家ぽちんの独り言

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【カバーの内容紹介を引用】

日本人は、在来の縄文人と渡来系弥生人の混血によって生まれた。「日本人の起源」の定説である。しかし、この縄文/弥生人モデルが二〇世紀後半に定着するまで、 人種交替説、固有日本人説、混血説、変形説など、様々な説が唱えられてきた。 研究の進展とともに、見え隠れするのは同時代の社会からの影響だ。近年はゲノム解析 により、縄文/弥生人の図式もゆらぐ。 起源を訪ねた研 究者たちの足跡を辿り、日本人の自画像を描きだす。

【引用終わり】



明治から1990年代までの「日本人起源論」の「歴史」を学ぶ本です。


⚫︎アメリカ人講師エドワード・S・モースの大森貝塚発掘に始まる日本の近代的・考古学研究。当初は、先住民族に日本人の祖先が取って代わったとする「人種交替モデル」で考える学者が多かった。それは、「ヨーロッパでは、先住民族を征服していった結果が民俗学分布になっていること」「古事記、日本書紀では、天皇が九州日向から東方へ移動しつつ先住民族を征服していく記述になっていること」が原因となっている。


⚫︎土器の研究により、「文化の差は人種の差ではない」という、人種の連続性をもった日本人観が広がる。


⚫︎縄文から弥生という時代的変遷は、なかなか認められなかったが、水田稲作を弥生と重ねて考える学者が増えてきた。


⚫︎大東亜戦争直前、日本人はアジアでは「血の一貫性」「集団的同一性」を持つ貴要な人種であるとの考えを持つ学者も登場。皇国史観が影響力を持つように。


⚫︎敗戦後、静岡県登呂遺跡の発掘が日本中古を熱狂させ、日本考古学協会が創設。弥生への関心が高まる。逆に天皇家の影響を感じにくい縄文期の遺跡は注目されず。


⚫︎基層集団の縄文人に、渡来した弥生人の混血によって日本人が成立したという二重構造モデルが広がる。



科学的研究のはずの考古学や文化人類学も、当時の社会的思想や価値観に影響を受けて、発展してきたようです。

あと何十年かしたら、縄文人/弥生人についての科学的認識もガラッと変わるかもしれませんね。



「縄文人と弥生人」坂野徹(中公新書)

【1月31日読了】

【オススメ度★★